認知症とMRI:診断に役立つ画像検査のすべて
年齢を重ねるにつれて「物忘れが増えたかも」「もしかして認知症かな」と不安に駆られてしまう方も多いのではないでしょうか。近年は、MRI(磁気共鳴画像法)を用いた精密検査によって、認知症の兆しを詳しく調べられるようになってきました。認知症の有無を早めに見極めることができれば、早期治療やこれからの備えに役立てることができます。<br /><br /> 本記事は、認知症とMRI検査の関係をやさしく解説しています。読み終えたころには、「MRI検査でどんな情報が得られるのか」「不安を感じたときにどうすれば良いのか」を理解できていることでしょう。大切なのは、違和感を覚えたときに早めに専門医へ相談する行動を取ることです。そのために必要な知識を一緒に確認していきましょう。高次脳機能障害とは? 診断基準、間違えやすい疾患は?(医師監修)
高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害とは、病気や事故などによって脳が部分的に損傷してしまい、言語、思考、記憶、行為、学習、注意などの知的機能に障害が起こった状態のことです。
よくみられる症状としては、「注意力や集中力が低下する」「新しいことを覚えられない」「感情や行動が抑えられない」「周囲にあった適切な行動を選べない」などがあります。
高次脳機能障害の診断基準
⑴ 主要症状
① 脳の器質的病変(※)の原因、例えば事故による受傷や疾病の事実が確認されている。
② 現在、日常生活や社会生活に制約があり、その主な原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。
※:器質的病変とは、血管障害、感染、炎症、変性疾患などにより脳の細胞や組織が損傷を受けた病変のこと
⑵ 検査所見
MRI、CT、脳波などによって、認知機能の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認できる。
⑶ 除外項目
① 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有しているが、上記の「主要症状」の②を欠く場合は除外する。
② 診断にあたって、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
③ 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする場合は除外する。
⑷ 診断
① ⑴〜⑶をすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
② 高次脳機能障害の診断は、脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後で行う。
③ 神経心理学的検査(※)の所見を参考にできる。
※:神経心理学的検査とは、言語、思考、認知、記憶、行為、注意などの高次脳機能障害を数値化して、定量的かつ客観的に評価する検査のことです。
高次脳機能障害の検査は何をする? 知能検査や記憶検査の内容
高次脳機能障害が疑われる場合、MRIやCTなどの画像検査によって脳の状態を確認し、器質的な変化(障害されている部位や程度)を把握します。
また、必要に応じて神経心理学的検査が実施されることがあります。神経心理学的検査とは、脳の損傷や認知症などによって生じた知能、記憶、言語などの障害を客観的に評価する検査です。
以下は、神経心理学的検査の例です。
| 検査 | 概要 |
| 長谷川式認知症スケール(HDS-R) | 記憶や計算などの質問に答える検査で、認知機能を幅広くチェックします。日本で広く使われています。 |
| ミニメンタルステート検査(MMSE) | 時間や場所を答えたり、言葉を覚えたりするなどの簡単な課題を行い、認知機能を評価します。国外において標準的な検査です。 |
| ウェクスラー成人知能検査(WAIS-IV) | 言語や問題解決、記憶などの能力を詳しく調べ、知能指数(IQ)を算出します。心理検査としてよく使われます。 |
| リバーミード行動記憶検査(RBMT) | 日常生活に近い課題に取り組み、どの程度記憶を保てるかを評価します。実生活での困りごとを把握しやすい検査です。 |
| トレイルメイキングテスト(TMT) | 数字や文字を順番につなげる課題を行い、注意力や判断の早さ、切り替えの能力を測ります。短時間で実施できます。 |
高次脳機能障害の検査は、症状や状態に合わせて最適なものが選ばれます。不安がある場合は、医師や医療スタッフに気軽に相談してみましょう。
認知症の検査については以下の記事をご覧ください。
高次脳機能障害と間違えやすい状態は?
高次脳機能障害と間違えやすい疾患として、「せん妄」と「認知症」があります。
⑴ せん妄

せん妄はその方がもともと持っている病気や疾患、もしくは薬などが理由で、一時的に意識障害や認知機能の低下が生じる精神状態のことです。
注意力や思考力の低下、日時や場所が認識できなくなる障害(見当識障害)、覚醒レベルの変動などを特徴としています。
もしせん妄になったとしても、原疾患が完治すれば予後を心配する必要はあまりありません。
⑵ 認知症

認知症は様々な原因により認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる状態のことです。
最も多いのがアルツハイマー型認知症で、次に多いのが血管性認知症です。
初期は加齢による物忘れに見えますが、仕事や家事など普通にできることでミスが増え、日常生活に支障をきたすようになります。
認知症によって高次機能障害が出現することもあますが、一般的な高次機能障害とは区別されます。
認知症について知っておくべきこと
超高齢社会の日本において、多くの人が関心を寄せるテーマの一つが認知症です。家族や身近な人が認知症になったらどうしよう、また自分自身が将来、認知症になってしまうのではないかと不安に思う方もいらっしゃることでしょう。この記事では、認知症の基礎知識や予防法など、認知症に関する理解を深めるための情報をお届けします。この記事を読み終わったとき、認知症に対する正しい知識が身につくことでしょう。どうぞ最後までお付き合いください。
高次脳機能障害の特徴
高次脳機能は精神と心理面での障害が中心であり、大きな特徴としては以下のものがあります。
外見上は障害が目立たない
本人も障害を十分に認識できていない場合がある
障害は診察時や入院している最中よりも日常生活や社会活動において出現するため、一見、気づかれにくい
高次脳機能障害を起こす疾患と症状
高次脳機能障害の原因は、大きくは脳血管障害、頭部外傷、その他に分けられます。
| 原因 | 疾患 |
| 脳血管障害 | 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血 など |
| 頭部外傷 | 硬膜外血腫、硬膜下血腫、脳挫傷、びまん性軸索損傷 など |
| その他 | 脳炎、腫瘍、水頭症、自己免疫疾患、中毒疾患、ビタミン欠乏症など |
割合としては、脳血管障害が全体の8割程度で最も多いです。
高次脳機能障害で起こる主な症状
具体的な症状は以下の通りですが、これらの症状をあわせ持つことが多いです。
| 障害の種類 | 症状の例 |
| 失語症 | ・話が理解できない ・字を読み書きできない ・思うように言葉が出てこない |
| 記憶障害 | ・物の置き場所や約束を忘れる ・物事を覚えられない ・同じことをくり返す |
| 注意障害 | ・すぐに気が散ってミスが多い ・混乱しやすい ・集中力がない |
| 遂行機能障害 | ・計画的に作業できない ・優先順位がつけられない ・段取りができず効率的にできない |
| 行動と感情の障害 | ・興奮しやすい ・意欲が低下する ・暴力を振るう ・思い通りにならないと大声を出す ・自己中心的な行動が目立つ |
上述した通り、本人は障害が起きていることに気づいていないことが多いので、周囲の方の理解が必要になります。
高次脳機能障害者の生活は?
高次脳機能障害になったとしても、身体的な症状は軽度であるため、食事や排泄などの日常生活の基本的な部分は自立して行えることが多いです。
しかしながら、入浴、階段昇降、着替えなどの高次な作業は困難になることも多く、生活介助が必要になってしまうことも少なくありません。

早期発見が重要とされる理由と脳の健康に関する考え方
高次脳機能障害は状況によって、生活に影響を与える恐れがあります。
重要なのは原因となる病気を予防することです。ここからは、高次脳機能障害のきっかけとなる脳卒中(脳梗塞や脳出血)の対策について見ていきましょう。
生活習慣病のコントロール
脳卒中は、高次脳機能障害につながる病気の1つと言われています。大きな原因として動脈硬化が挙げられます。
動脈硬化とは、血管の内側に脂肪がたまり、血管が狭くなったり、硬くなったりする状態です。これにより血流が滞ると脳梗塞を起こす可能性や、血管が脆くなると脳出血につながる可能性があります。
以下は、動脈硬化を進行させる恐れのあるリスク要因です。
- 高血圧:血管に高い圧力がかかり、血管壁を傷つける恐れがある
- 糖尿病:血糖値が高い状態が続くと、血管がボロボロになりやすい
- 脂質異常症:血液中の脂質が血管にたまり、詰まりやすくなる
- 喫煙習慣:血管の収縮により、動脈硬化を早める可能性がある
これらを改善するには、適切な治療や生活習慣の見直しが重要です。
日頃からバランスの良い食事を心がけたり、適度な運動を取り入れたりして、生活習慣を整えることで、結果として高次脳機能障害の予防につながります。

具体的な生活習慣の改善方法については以下の記事をご覧ください。
生活習慣病の原因は? すぐに実践できる5つの改善方法を紹介いたします!
日本人の三大死因であるがんや心血管疾患、脳血管疾患の発症には生活習慣病が関係していることが分かっています。生活習慣病対策としては、自分の生活を見直すことが大切。この記事の中では、生活習慣によって引き起こされる病がどんな病気なのか、また予防や改善方法などについて解説します。
脳ドックで「見えないリスク」をチェックする
生活習慣の改善とあわせて検討したいのが、「脳ドック」の受診です。
高次脳機能障害の原因となる動脈硬化や小さな脳梗塞(隠れ脳梗塞)は、自覚症状がないケースがあり、症状が出るまで気づけないことがあるため注意が必要です。
脳ドックは、MRIやMRAなどの検査により脳の状態を確認し、症状がない隠れた病変を把握する助けになります。
- 脳の萎縮や変性:年齢相応か。隠れた病変がないか
- 動脈硬化の程度:将来的な脳卒中のリスクはどのくらいか
- 脳の血管の状態:動脈瘤(こぶ)や狭窄(せまい部分)がないか
脳の状態を検査し、異常がないことが確認できれば不安の軽減につながるでしょう。生活習慣を見直すきっかけにもなります。
特に40代から50代以降の方や、生活習慣に不安がある方は、医師や専門の医療機関に相談してみましょう。
健康的な生活を送って、高次脳機能障害を予防しよう
高次脳機能障害は、事故や脳卒中によって言語、思考、記憶などに障害が起こった状態です。
症状が出ると生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります。大切なのは、きっかけとなる事故や病気を予防することです。
脳卒中には生活習慣病が関連すると言われているため、不安な症状がある場合は医療機関に相談しましょう。
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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2004年浜松医科大学医学部卒業
脳神経外科学会専門医
脳卒中学会専門医
脳ドック学会認定医