2025/03/31 ( 公開日 : 2025/03/27 )

前立腺がん検査の方法と重要性について

検査
がん 前立腺
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前立腺がんの早期発見と予防の重要性について解説します。定期的なPSA検査を受け、前立腺がんを早期に発見することが重要です。前立腺がんの検査方法や検査結果の見方の知識を持ち、異常が見つかった場合の対応方法について詳しく紹介します。前立腺がんについての基本情報を把握し、健康を守るための第一歩を踏み出しましょう。
前立腺がん検査について詳しくみる
目次

 

日本で1年に前立腺がんと診断される患者数は約8万7000人で、男性の部位別がん罹患数では1位となっています。なんと2位の大腸がん、3位の肺がんよりも多いのです。(参考文献:国立がん研究センターがん情報サービスHP 前立腺がん)また前立腺がんはほとんどが50歳以上で発症し、加齢とともに増加します。そのため前立腺がん検査は、中高年の男性にとって非常に重要な健康チェック項目の一つと言えるでしょう。前立腺がんは初期段階での自覚症状が少なく、体調に異変を感じる前に進行してしまうことが多いため、適切な検査による早期発見が非常に重要です。今回の記事では前立腺がんの基本的な検査内容や、早期発見の重要性について解説いたします

前立腺がん検査とは?


前立腺がん検査は、前立腺がんを早期に発見し、適切な治療を受けるために行う検査です。前立腺がんは初期段階では自覚症状がほとんどなく、症状が現れた時には進行していることが多いがんです。また、50代以降から罹患率が急速に高まるので、50歳になったら定期的に前立腺がんの検査をすることが推奨されています。
(参考文献:日本泌尿器科学会 前立腺がん検診ガイドライン2018)その一方で、がん検診を受けることには利益だけでなく、たとえば不必要な追加検査を受けることになってしまうケースがあることや過剰診断と言って診断や治療をしなくても余命を全うしていた可能性が高いのに診断されてしまったケースなど、不利益を被ることもあるため、かかりつけ医や泌尿器科医に検査結果について相談することが大切です。

前立腺がん検査にはいくつかの種類があります。主なものはPSA検査、直腸診、各種画像検査と前立腺生検です。異常が見つかった場合には、適切に対応する必要があるため、検査結果の見方や次のステップについての知識も重要です。

主な前立腺がんの検査


前立腺がんの代表的な検査を紹介します。

まず、最も簡単にできて効果的な検査は血液中の前立腺特異抗原(PSA)の値を測定するPSA検査です。PSA値が基準値よりも高い場合、前立腺がんの可能性があるため泌尿器科を受診しましょう。

次に、医師が直腸から前立腺を指で触診し、異常の有無を確認する直腸診です。直腸診は外来などで比較的簡単に実施でき、前立腺の状態や硬さを評価するのに有効です。

さらに、超音波検査やMRI検査などの画像検査も、前立腺の形状や大きさ、腫瘍の存在をより詳しく調べるためによく使われます。

これらの検査の結果をふまえて必要性があると判断されれば、確定診断のために前立腺生検が行われます。前立腺生検では、前立腺から針で直接組織を採取し、その組織を顕微鏡で詳しく調べることで、がんの有無を確定します。

これらの検査を組み合わせることで、前立腺がんを早期に発見し、適切な治療に結びつけることができます。それぞれについて、さらに詳しく解説していきます。

PSA検査

PSA検査とは、前立腺特異抗原(PSA)と呼ばれるタンパク質の血中濃度を測定する検査で、血液サンプルを採取し、血中のPSAレベルを測定します。前立腺がんが進行するにつれてPSA値が上昇するため、前立腺がんの早期発見や進行を評価するために有効な検査です。

PSA検査は、簡便さと精度の高さから、多くの医療機関や健診機関で利用されていますが、PSA値が高いからといって必ずしもがんであるとは限りません。PSA検査は前立腺がんのスクリーニングにおいて大切な役割を果たしますが、前立腺肥大症や前立腺炎など、がん以外の前立腺の病気でも上昇することがあるので、直腸診や前立腺生検、MRI検査などの検査と併用することで、より正確な診断を行います。

直腸診

直腸診は、医師が直腸に指を挿入して前立腺の状態を確認する検査方法です。直腸の壁を通じて前立腺の大きさ、硬さ、形状などを触診することで、異常の有無を評価します。

直腸診のメリットとしては、瞬時に前立腺の異常を医師の経験と感触で確認できます。この検査は特にPSA検査と組み合わせることで診断精度が向上するといわれています。

一方で、直腸診には検査中に不快感や羞恥心を引き起こすデメリットも存在します。また、医師の経験や技術に依存する検査であるため、異常が見逃される可能性もゼロではありません。しかし、科学的な根拠としても、複数の研究によって直腸診の有効性は認められており、適切な検査手法の一つとして広く採用されているため、これらのデメリットを考慮しても、直腸診は前立腺がんの検査において重要な役割を果たします。

各種画像検査

各種画像検査は、がんの広がりや転移などについて正確な情報を得るために使用されます。主に使用される画像検査には、経直腸超音波検査(TRUS)とMRI検査(磁気共鳴画像)があります。

TRUSは、肛門から挿入された超音波機器を使って前立腺の詳細な画像を取得します。TRUSは、一般的に前立腺の形態を評価したり、生検のガイドとして利用されます。

MRI検査は、より解像度が高く、前立腺がんの位置や広がりを詳細に把握するのに役立ちます。さらに前立腺以外の周辺組織の評価にも優れており、がんの進行度や周辺臓器への浸潤状況を確認するのにも適しています。

前立腺生検

前立腺生検は、前立腺から組織サンプルを採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる検査で、前立腺がんの確定診断のために行われます。

通常はPSA検査や直腸診で異常が見つかった場合に検討されます。前立腺生検は経直腸超音波ガイド下生検が一般的で、直腸に挿入した超音波機器から得られる画像を参考にしながら前立腺に針を刺して直接組織を採取します。この検査は安全ですが、肛門から超音波機器を挿入したり、生検する部分に痛み止めの注射をするときなどに痛みを感じる患者さんもいます。また、出血や感染のリスクもあるため、適切なアフターケアが必要です。前立腺生検の結果は、がんの診断だけでなく、がんの進行や悪性度を評価する上でも欠かせません。

前立腺がんはなぜ症状がでにくい?


前立腺がんは、前立腺肥大症と比べて症状がなかなか出てこないことが知られています。それはなぜなのでしょうか。前立腺を輪切りにすると、尿道を取り囲むまん中の中心領域とその周りにある辺縁領域、そしてその中間の移行領域から構成されています。

前立腺肥大症は主に、比較的尿道に近い移行領域が全体的に肥大するため尿道に影響がでやすいのです。そのため早くから頻尿(尿意が近くなる)などの症状が出ます。しかし前立腺がんは尿道から離れた辺縁領域で局所的に発生するため、がんがかなり進行してはじめて症状が出ることが多いのです。

ただし実際には、高齢になると前立腺肥大症になっている人が多いため、前立腺肥大症に前立腺がんを合併しているケースにもしばしば遭遇します。そのため前立腺肥大症の症状である頻尿、尿が出にくいなどの症状がある場合は、年をとるとよくあることと無視せずに一度は泌尿器科を受診することをおすすめします。

PSA検査の結果の見方


健康診断などでPSA検査を受けたあとに適切な対応を行うために、数値の意味や解釈のしかたを知っておく必要があります。

PSA値とその意味

PSA値とは、前立腺特異抗原というタンパク質の血中濃度を示すもので、値が高いほど前立腺の異常が疑われますが、前述のとおりPSA値が高いからといって必ずしもがんがあるわけではなく、前立腺肥大症や前立腺炎など他の病気の可能性もあります。

PSA値の基準値は4.0ng/mLとされていますが、年齢とともに上昇することを考慮して、50~64歳で3.0ng/mL以下、65~69歳で3.5ng/mL以下、70歳以上で4.0ng/mL以下という基準も推奨されています。繰り返しになりますが、PSA値は年齢だけでなく、前立腺肥大症や、前立腺の感染症などによっても上昇します。PSA検査は、前立腺がんの早期発見に有効であることが示されていますが、結果の解釈のしかたが重要です。そのため、個人で判断するのではなく検査結果を適切に評価できる医師に相談をしましょう。

異常が見つかった場合の次のステップ


前立腺がん検査の結果、異常が見つかると不安を感じるかもしれませんが適切な対応をすることで、治療の成功率を高めることができます。まずは、以下のプロセスに沿った対応が一般的です。

PSA検査で異常が見つかった場合、正確な状態を把握するために泌尿器科を受診し、超音波検査やMRI検査などの各種画像検査や直腸診が必要になります。

次に行うのが確定診断のための前立腺生検です。生検の結果が出るまでには数日から1週間ほどかかるため、この期間には十分な休息と心理的なサポートを受けることも必要です。

生検でがんと確定診断された場合、追加の各種画像検査などを用いてがんの進行度や転移の有無を評価します。

前立腺がんの原因は?

前立腺がんになるリスクを高める代表的な要因は、高年齢と前立腺がんの家族歴です。(参考文献:国立がん研究センターがん情報サービスHP 前立腺がん)

まず、年齢は大きなリスク要因で、特に50歳頃からの罹患率が急速に高まります。

また、家族歴つまり父親や兄弟に前立腺がんの診断を受けた人がいる場合、リスクが2、3倍に増加します。

さらに家族歴と関連して、BRCA1やBRCA2という遺伝子の変異がある場合は、前立腺がんのリスクを高めます。乳がん発症にかかわることで知られているBRCA(Breast Cancer Gene )は、DNA修復に関与する腫瘍抑制遺伝子で、この遺伝子に変異があると、DNA損傷の修復能力が低下し、がんの発症リスクが大幅に上昇します。特にBRCA2の変異は、乳がんだけではなく、前立腺がんや膵がんのリスク増加とも関連が深いことが知られています。

食生活や生活習慣も前立腺がんの発症に影響を与える可能性が示唆されており、高脂肪食や赤身肉の過剰摂取はリスクを増加させるとされています。日本人よりも欧米人に前立腺がんが多いのはこのためと考えられています。

また、肥満や運動不足、喫煙なども前立腺がんの発症に関連があるとする研究もありますが、結論は出ていません。

ただし日本人を対象とした研究で、がん全般の予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形の維持、感染予防が有効であることがわかっていますので、これらに注意した生活をすることが重要です。(参考文献:国立がん研究センターがん情報サービスHP 前立腺がん)

前立腺がんのリスク分類

前立腺がんのリスク分類は、がんの広がりと転移の有無、前立腺生検組織の悪性度、PSA値に基づいて行われます。リスク分類には主に「低リスク」「中リスク」「高リスク」の3つのカテゴリーがあります。

低リスクの場合、PSA値が10 ng/mL以下であり、がんの病期がT2aまたはそれ以下であることが条件となります。この段階では、がんが前立腺の外に広がっておらず、比較的進行が遅いとされています。

中リスクでは、PSA値が10から20 ng/mLであり、病期がT2bまたはT2cとされています。がんは前立腺内に限られていますが、進行が速い場合もあるため、治療の検討が必要です。

高リスク群は、PSA値が20 ng/mL以上であるか、病期がT3またはそれ以上の進行度にあります。この段階では、がんが前立腺の外に広がっている可能性が高く、積極的な治療が求められます。

前立腺がんの治療法


前立腺がんには大きく分けて手術治療、放射線治療、薬物治療の3つの治療法があります。それぞれ詳しく見ていきます。

手術治療

手術治療は、がんが前立腺内に限局している場合に効果的です。主な手術法として、前立腺全摘除術(ラディカルプロステクトミー)が挙げられ、この手術は前立腺および周囲の一部の組織を完全に取り除くことで、がんの再発リスクを極力抑えることを目的としています。

前立腺全摘除術は、従来の開腹手術と比べて傷口が小さく、回復が早く体への負担が少ない腹腔鏡手術やロボット支援手術で行うことが増えています。一方で、手術には一定のリスクもあり、術後合併症として尿失禁や勃起障害を起こす場合があります。

放射線治療

放射線治療は、放射線を使用してがん細胞を破壊し、増殖を抑えることを目的としています。外部から放射線を照射する外部照射療法と、体内に放射線源を埋め込む内部照射療法の二つの方法があります。

外部照射療法では、高エネルギーのX線や陽子線を使用し、前立腺に直接放射線を照射します。この療法は数週間の通院により行われることが多いです。一方、内部照射療法は、放射線源を前立腺内部に留置し、近くのがん細胞を集中的に攻撃します。

放射線治療のメリットとしては、身体への負担が少ないため他の持病を抱えている患者や手術が難しい患者に対しても適用でき、不快感が少ない点が挙げられます。一方で、合併症として、血便、血尿、排尿障害などが発生する可能性があります。

薬物治療

薬物治療は、主にホルモン療法と化学療法の2つに大別されます。

ホルモン療法は、前立腺がんの成長を促進する男性ホルモン(アンドロゲン)の働きを抑えることでがんの進行を遅らせる治療法で、主に薬物により体内の男性ホルモンの生成を抑制したり、ホルモンの作用を妨げる効果が期待できます。

一方、化学療法は、抗がん剤を使用してがん細胞の分裂を阻害する治療法で、化学療法は進行がんに対して効果的であり、放射線治療や手術と併用することもあります。

前立腺がんの治療法には、それぞれにメリットとデメリットが存在しますので医師と相談し、自身の健康状態や生活スタイルに合った治療法を選ぶことが大切です。

前立腺がん患者の生存率は高いってほんと?

前立腺癌の5年生存率は約99%と非常に高いことが知られています。ただし、様々な条件にもよりますが、他臓器への転移があると5年生存率は50%台まで低下します。(参考文献:国立がん研究センターがん情報サービスHP 前立腺がん)

前立腺がんの進行は他のがんに比べてゆっくりですが、発見されたときにすでに転移をしているケースもあります。そのため、やはり早期発見と適切な治療選択が重要になります。

近年ではこのような前立腺がんの特徴にあわせて、低リスクと一部の中間リスクの患者さんに対してはすぐに治療を行わず、定期的なPSA検査などで経過をみていく監視療法という方法も選択されています。

前立腺がんの予防


がん全般に言えることですが、前立腺がんの予防にはバランスの取れた食事が推奨されています。特に野菜や果物を豊富に摂取し、脂肪や赤肉の摂取を控えることが効果的です。例えば、トマトやブロッコリーといった抗酸化作用のある食品を摂取することで前立腺がんのリスクを低減するとされています。

次に、定期的な運動(少なくとも週に150分程度)も欠かせません。例えばウォーキングやジョギング、サイクリングなど中程度の運動が推奨されます。

さらに、禁煙と節酒も重要です。タバコの煙には多くの有害物質が含まれており、前立腺がんのリスクを高める可能性があります。また、飲酒は適量に抑え、飲み過ぎないように管理することが大切です。

まとめ:前立腺がんの早期発見のために50歳を過ぎたら定期的なPSA検査を受けましょう


ここまで説明してきたとおり、前立腺がんは早期発見が重要です。早期発見したうえで監視療法を含めた適切な治療を選択することが理想です。また、自覚症状が現れにくいことが特徴である前立腺がんの発見には、健康診断などでの定期的なPSA検査が効果的です。そのため、50歳を過ぎたら定期的にPSA検査を受けましょう。また家族歴のある方は40歳を過ぎたら定期的に検査を受けましょう。そしてもしも定期的なPSA検査で基準値を超えた場合には、専門科である泌尿器科を受診してください。これからも健康に関する正しい知識を身につけて、自分や家族の健康を守りましょう。

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監修医 近藤 直英 (こんどう・なおひで)
JPMDコンサルティング代表取締役
・日本医師会 認定産業医
・日本内科学会 認定内科医
・日本神経学会 神経内科専門医・指導医
2003年奈良県立医科大学卒
名古屋大学大学院で博士号取得
これまでトヨタ記念病院、名古屋大学病院などで臨床、教育、研究に従事。2年半のトロント小児病院でのポスドク後、現在は臨床医として内科診療に携わる一方で複数の企業で産業医として働き盛り世代の病気の予防に力を入れている。また2022年に独立し、創薬支援のための難病患者データベースの構築や若手医療従事者の教育を支援する活動を行っている。

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