AST・ALT・γ-GTPなどの数値は大丈夫? 肝機能検査で重要な数値について解説!
肝臓は「沈黙の臓器」という異名を持ちます。肝臓で異常が起こっても、軽度の場合には症状がないことも多く、気づいたときには重症化しているケースもあります。肝臓の異常に気づくためには、健康診断などでの血液検査の評価が大切です。この記事の中では肝臓の機能や、血液検査で重要となる指標などを解説いたします。血液検査で何がわかる? 異常値の見方と疑われる病気を一覧で解説
血液検査の検査項目とわかる病気
血液検査は健康診断や人間ドックでも受けられます。
健康診断と比べて人間ドックの方が血液検査の項目が多いです。
血液検査では各項目との関係を見ることで、肝臓や心臓、免疫の異常など、様々な病気を知ることが可能です。
医師に全てを任せるのではなく、自身でも知っておくことで、より自分の身体を把握することができます。
肝臓系検査
検査項目 | 基準値 | 基準値との比較 | 分かる病気 |
---|---|---|---|
AST(GOT) |
10〜40 | 高い | 肝炎、肝硬変、心筋梗塞、脂肪肝など |
ALT(GPT) |
5〜40 | 高い | 肝炎、肝硬変、脂肪肝など |
アルカリフォスファターゼ |
104〜308 | 高い | 閉塞性黄疸、肝がん、慢性肝炎など |
γ-GTP |
男性:79以下 女性:48以下 |
高い | アルコール性肝障害など |
注:表の中では、測定された値が基準値よりも「高い」場合と「低い」場合とがあり、それぞれわかる(疑われる)病気が異なる場合があります。
肝機能については、以下の記事で詳しく解説しています。肝臓の働きも解説しているため、詳細が気になる方はそちらをご覧ください。

腎臓系検査
検査項目 | 基準値 | 基準値との比較 | 分かる病気 |
---|---|---|---|
BUN |
8〜20 | 高い | 腎不全、ネフローゼ症候群、うっ血性心不全など |
低い | 急性肝不全など | ||
血清クレアチニン |
男性:0.65〜1.09 女性:0.46〜0.82 |
高い | 急性腎不全、糸球体腎炎、尿路結石など |
クレアチニン・クリアランス |
82〜183 | 高い | ネフローゼ症候群、初期糖尿病など |
低い | 糸球体腎炎、腎硬化症など | ||
eGFR |
60 | 低い | 腎不全など |
尿酸(UA)
検査項目 | 基準値 | 基準値との比較 | 分かる病気 |
---|---|---|---|
尿酸 |
男性:3.0〜7.0 女性:2.0〜6.0 |
高い | 痛風、高尿酸血症など |
尿酸はプリン体というタンパク質が代謝されたことにより、生じたものです。
尿酸に異常な数値が見られた場合、排泄を行うために働く「腎臓」の異常を疑います。
また、尿酸が増えすぎると血管内に結晶として溜まり、それが関節で溜まることで痛みが現れてしまいます。
尿酸値が高い時のリスクについては、下記の記事で解説しています。詳細が気になる方はそちらをご覧ください。
尿酸値を下げるにはどうすればいいの? 高尿酸血症が持つリスクとは?
「尿酸値が高い=痛風になる」というイメージが強いと思います。これに関しては間違っていませんが、尿酸値の高さは、ほかにもさまざまな病気につながり、さらには低すぎても病気になる可能性があります。この記事を読むことで、尿酸の数値に異常があったとき、どんな病気を起こす可能性があるのかを知ることができます。
脂質系検査
検査項目 | 基準値 | 基準値との比較 | 分かる病気 |
---|---|---|---|
中性脂肪(トリグリセイド:TG) |
30〜149 | 高い | 動脈硬化性疾患 |
低い | 甲状腺機能亢進症など | ||
LDLコレステロール |
70〜139 | 高い | クッシング症候群、 甲状腺機能低下症など |
低い | 慢性肝炎、貧血など | ||
HDLコレステロール |
男性:40〜80 女性:40〜90 |
低い | 肥満、糖尿病、肝硬変など |
総コレステロール |
150〜219 | 高い | 糖尿病、脂質異常症など |
糖代謝系検査
検査項目 | 基準値 | 基準値との比較 | 分かる病気 |
---|---|---|---|
HbA1c |
4.6〜6.2 | 高い | 糖尿病など |
空腹時血糖値 |
正常:110未満 糖尿病の場合:126以上 |
高い | 糖尿病など |
低い | インスリン過剰投与など | ||
食後血糖値 |
正常:140未満 | 高い | 糖尿病など |
血球系検査
検査項目 | 日本語名 | 基準値との比較 | 分かる病気 |
---|---|---|---|
赤血球数 |
男性:4.38〜5.77X100万 女性:3.76〜5.167X100万 |
高い | 多血症など |
低い | 貧血など | ||
ヘマトクリット値 |
男性:40.4〜51.9 女性:34.3〜45.2 |
高い | 多血症など |
低い | 貧血など | ||
ヘモグロビン量 |
男性:13.6〜18.3 女性:11.2〜15.2 |
高い | (喫煙が多いなど) |
低い | 貧血など | ||
白血球数 |
3,900〜9,800 | 高い | 炎症など |
低い | 白血病など ※白血球が異常増加する場合もあります |
感染症系検査
検査項目 | 基準値 | 基準値との比較 | 分かる病気 |
---|---|---|---|
HBs-Ag(B型肝炎ウイルス) |
(-) | + | B型肝炎ウイルスに感染しているか、感染したことがあるか |
HCV-Ab(C型肝炎ウイルス) |
(-) | + | C型肝炎ウイルスに感染しているか、感染したことがあるか |
HIV-Ab(HIVウイルス抗体) |
(-) | + | HIVウイルスに感染しているか |
TPPA(トレポネーマパリダム抗体) |
(-) | + | 梅毒に感染していた場合の抗体量 |
RPR定性(RPRカードテスト) |
(-) | + | 梅毒に感染していた場合の抗体量 |
他に血液検査でわかる病気
血液検査は調べる目的によって多岐に渡ります。
これまでに紹介したものの他に
- ホルモン内分泌検査
- アレルギー検査
- 腫瘍マーカー(いわゆる癌)検査
などの検査もあります。
検査の受け方として
- ① 希望の検査を行っている病院を調べて直接電話などで予約する。
- ② かかりつけ医に相談して紹介してもらう。
の2つの方法があります。
人間ドックなどでの一般検査や血液検査は基本的に自費検査ですが、医師の判断により、治療に必要と認められた場合は、保険適用になるケースがあります。
腫瘍マーカーについては、こちらの記事もご覧ください。
腫瘍マーカー検査とは? 検査方法、特徴、注意点などについて解説!
腫瘍マーカー検査とは、どのような検査なのでしょうか。検査を行う目的、検査の方法、検査の特徴や注意点などを簡単にまとめました。
血液検査を受ける流れと事前準備(費用はどれくらい?)
血液検査を実施する際、事前に食事制限や薬の調整が必要になることがあります。これは、食事や内服の影響によって、検査の値が変わることを避けるためです。検査当日までに医師や看護師から説明があるため、指示はしっかり守りましょう。
また、緊急で医療機関を受診した場合は、症状に応じて医師が血液検査の項目を選定します。問診で、現在の症状や過去の病歴などの聞き取りがあるため、気になることはしっかり伝えましょう。
検査当日の流れは以下の通りです。
流れ | ポイント |
---|---|
受付 |
医療機関、検査機関に到着して受付を行います。マイナンバーカードや保険証、診察券などがあれば持参しましょう。 |
問診 |
体調不良により医療機関を受診した場合、事前に現在の症状に関して問診を行います。定期健診や人間ドックでは過去の病歴や、現在の体調、服薬状況などについて問診が行われます。 |
採血 |
採血室で血液を採取します。アルコール消毒によるアレルギーや、以前にも注射で気分が悪くなったことがある場合は事前に知らせておきましょう。 |
結果報告 |
体調不良により、緊急的に医療機関を受診した際は、早ければ当日に医師が検査結果を説明してくれます。 定期健診や人間ドックの場合、検査機関によっては郵送やWeb上で検査結果を確認できます。検査結果の確認方法については、事前にスタッフへ確認しておきましょう。 |
費用は、検査項目や保険適用の有無によって異なります。一般的には数千円から数万円程度が目安となります。費用に関して心配な場合は、検査前に担当医や受付スタッフに確認しておきましょう。
血液検査結果の見方:基準値と異常値をチェックする方法
健康状態の改善のためには、血液検査の結果を理解することが大切です。
検査結果表にはいくつかの項目があり、それぞれに基準値が設定されています。これらの基準値は、健康な方の統計データから平均的な数値を示しており、自分がこの範囲内にあるかどうかを確認することがポイントです。
血液検査の具体的な項目としては、白血球数、赤血球数、ヘモグロビン濃度、血小板数、総コレステロール、中性脂肪、肝酵素(ALT、AST、γ-GTP)などがあります。それぞれの検査項目で数値が高いのか低いのか、どれくらい基準値と異なるのか確認しておきましょう。
血液検査の基準値については本記事の前半部分をご覧ください。
なお、血液検査は身体の状態を示す1つの目安であり「基準値を外れていたから、何かの病気である」「基準値ではなかったから異常だ」とは限りません。検査結果に、不安がある場合は医師や医療スタッフに相談しましょう。
血液検査で異常が見つかったらどうする?
血液検査で異常が見つかったとしても、落ち着いて対処することが重要です。まずは、基準値から外れてしまった項目についてしっかりと確認しましょう。
異常が見つかった項目は、それぞれ関連する健康リスクが潜んでいる可能性があります。検査結果に不安がある場合は、医師や医療スタッフに相談することが大切です。健康状態や他の検査結果を考慮して、生活習慣の改善の提案や、追加検査を検討してくれるでしょう。
生活習慣の改善については、食生活や運動習慣、睡眠習慣の見直しがポイントです。以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はそちらをご覧ください。
生活習慣病の原因は? すぐに実践できる5つの改善方法を紹介いたします!
日本人の三大死因であるがんや心血管疾患、脳血管疾患の発症には生活習慣病が関係していることが分かっています。生活習慣病対策としては、自分の生活を見直すことが大切。この記事の中では、生活習慣によって引き起こされる病がどんな病気なのか、また予防や改善方法などについて解説します。
また、血液検査の結果によっては、医療機関で経過観察が必要になるケースもあります。定期的に健康状態をチェックすることで、将来的なリスクに備えられるでしょう。
基準値から外れてしまっていても、過度に不安になる必要はありません。早期に対応することで、健康リスクを減少させ、より良い生活習慣を築けるでしょう。
さらに詳しい検査を受けたい場合は、人間ドックを利用するのも良いでしょう。人間ドックについては、以下の記事をご覧ください。
人間ドックとは? 検査内容、発見できる病気、費用の目安と時間などを解説
どんな病気であれ早期発見と早期治療は重要になります。がんなど完治が難しいとされる病気であっても、早期で発見することができれば、完治する確率が格段に高くなります。この記事の中では人間ドックの基本的な検査内容や、発見できる病気、また受ける際の注意点などについて紹介します。
血液検査を様々な病気の予防に役立てよう
血液検査は様々な病気の早期発見につながります。
健康診断や人間ドックを定期的に受け、その中で血液検査も受けておきましょう。
検査を受けて終わりではなく、結果の数値を見て、過去の検査内容との変化がないか確認することが大切です。
単に検査を行うだけでなく、どんな項目の数値に変化が見られるかなどを把握することで、病気のリスクを事前に察知し、予防に役立てることができます。
全ての病気で早期発見と早期治療が大切であるため、血液検査は重要な検査になります。
がん検査については、詳細が気になる方は、こちらのページもご覧ください。
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