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2025/05/09 ( 公開日 : 2025/04/30 )
急な体重減少は要注意? がんと痩せる症状の関係と対策を解説

この記事では、体重減少の定義や、病院を受診した方がよいケースについて解説します。また今回は体重減少の原因の1つである「がん」においては、どのようなメカニズムで体重が減ってしまうのか、がんに関連した体重減少の対策にはどのようなものがあるかについて深堀りします。
心配な体重減少とは?
病的な体重減少は心配すべきです。病的な体重減少とは、はっきりした原因がないにもかかわらず、6カ月の間に体重が5%以上減ることを指します。60kgの人であれば3kg以上の減少が該当します。
ダイエットをしていたり、健康の問題以外の原因(忙しくて食べられないなど)で食事量が普段より減っていたり、何らかの理由で日々の活動量が増加していたりする場合など、はっきりした原因があれば問題ないと考えられます。一方で、普段通りの食事量を維持し、かつ活動量もあまり変わらないのに体重が減少する場合は心配です。
病的な体重減少の原因としては、がんや感染症、甲状腺機能亢進症、糖尿病、うつ病などが知られていますが、そのほかにも様々なものがあります。もしも原因のわからない体重減少がある場合には早めに内科を受診しましょう。
がんと体重減少の関係 | なぜ痩せるのか?
病的な体重減少の原因の1つに「がん」があります。がんになると体重が減少するのは、がん細胞の増殖により身体が多くのエネルギーを消費するためです。また、がんに関連する体重減少として、がんが食道など食べ物の通り道にできた場合に物理的に食べられなることや、がん治療の副作用により食欲が低下することによるものもあります。
がんによる体重減少の主な原因
がんによる体重減少のメカニズムを詳しくみてみましょう。がんにより体重が低下する理由は、食事量の減少だけでなく体内で起こるさまざまな生理的変化が関係しています。
がんによる体重減少の主な原因①:基礎代謝の亢進
がんになると、基礎代謝率(BMR)が高くなる傾向があります。がん細胞は急速に増殖するため、正常な細胞より多くのエネルギーを消費して、基礎代謝の増加を引き起こします。
たとえば消化器系のがんや肺がんでは、がん細胞が分泌するサイトカインと呼ばれる情報伝達物質により、エネルギー消費が高まることが知られています。
がんによる体重減少の主な原因②:食欲不振
がんの症状としての食欲不振や、がん治療の副作用による食欲不振も体重減少を引き起こします。また食道がんなどでは食べ物の通り道にがんが浸潤し、物理的に食べ物が通らないため食事量が低下することがあり、このような場合も体重減少がみられます。
味覚異常は新型コロナウイルス感染症の合併症として話題になりました。実際に味覚障害を発症した方もおられると思いますが、味覚異常は食欲に大きな影響を与えることがしばしばあり、体重減少の原因になります。一部の抗がん剤や放射線治療の照射部位によって味覚を感じる舌の細胞に障害が起き、味覚異常を起こすことが知られています。そのほかにも、がん細胞が分泌するサイトカインが食欲を減少させる原因になるとも言われています。
がんによる体重減少の主な原因③:消化吸収の低下
がんによる消化吸収の低下も体重減少の原因になります。特に胃や小腸、大腸などにできる消化器系のがんでは、がんが消化管に直接影響を与え、消化吸収に障害が出ることがあります。また、がんが腸の通過を妨げると、便秘や腸閉塞が起こり、消化が難しくなることもあります。
がんによる体重減少の主な原因④:悪液質
悪液質(あくえきしつ)とは、がんなどの慢性疾患による栄養失調により、筋肉や脂肪が急速に減少した状態のことです。
がん細胞によって分泌される炎症性物質が代謝を変化させ、エネルギー消費を増加させるため、食欲があっても体重が減少します。特に進行がんで多くみられる合併症ですが、近年ではがんの診断時から初期の悪液質が始まっており、早い段階から栄養状態の改善に向けた対策をすることが、がんの治療に重要であると考えられています。
がんの種類と体重減少のリスク
がんの種類によって体重減少の起こりやすさが違うことが知られています。体重減少が起こりやすいがんについて解説します。ただしこれらのがんであっても必ずしも体重減少が起こるとは限らず、がんのステージによっても体重への影響はさまざまです。
体重減少が起こりやすいがん①:肺がん
肺がんは、体重減少が起こりやすいがんの1つです。がんが進行するにつれて、がん細胞が分泌する炎症性物質により、基礎代謝が亢進してエネルギー消費が増加します。そのため、食欲が低下して食事摂取量が減少することで、体重減少が引き起こされます。
体重減少が起こりやすいがん②:膵臓がん
膵臓がんも体重減少のリスクが高いと言われているがんです。膵臓は消化酵素を分泌する重要な臓器です。がんによって膵臓の機能が低下すると、消化と吸収に障害が起こり、栄養不足や体重減少を引き起こします。また、膵臓がんによる食欲不振や吐き気などの症状も体重減少の原因になります。
体重減少が起こりやすいがん③:胃がん
胃がんも体重減少がみられやすいがんです。胃の腫瘍が食物の消化を阻害し、摂取した食物が十分に吸収されなくなることで栄養不足となり体重が減ります。さらに、胃がんは消化不良を感じやすく、食事摂取量を減少させる傾向があります。
体重減少が起こりやすいがん④:食道がん
食道がんは、腫瘍が物理的に食物の通過を妨げて、食事自体を困難にすることがあります。その場合、食物の形態の工夫や治療による食物の通過経路の確保などをしなければ十分な栄養を摂取できないことから、体重減少の原因となります。
体重減少が起こりやすいがん⑤:大腸がん
大腸がんは、腸の機能に影響を与え、栄養素の吸収を阻害することがあります。また、大腸にできた腫瘍は、腸管を狭めて便秘や腸閉塞を引き起こすことがあります。結果として、食欲を減退させ、体重減少につながります。
がんの治療による体重減少
がん治療によっても体重減少が起こることがあります。
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも障害を与えるます。そのため、一部の抗がん剤により正常な細胞の消化機能が低下し、吐き気による食欲不振や消化吸収といった障害が起こります。そのため、食事量の低下や栄養失調が起こり体重減少を引き起こします。
放射線治療でも、放射線を照射する部位によっては前述したような舌の味覚障害や口腔内やのどの痛みにより食事が困難となり、体重減少を引き起こすことがあります。
がんによる体重減少を防ぐための対策
がん治療においては、栄養を摂取できる状態を維持することは重要なポイントになります。がんに関連する体重減少を少しでも防ぎ、良い栄養状態を少しでも長く維持できれば治療継続も可能になり、生存率も高くなります(*1)。がんによる体重減少の治療は、がん自体の治療が最も重要ですが、そのほかにも運動療法による筋力や体力の維持、食物の形態や栄養摂取経路を工夫するなど、食事療法もあわせて行うことでより高い効果が得られます。食事摂取が可能であれば体調にあわせて栄養バランスを考えた食事を摂取します。もしも食事摂取が難しい場合は、栄養補助食品や経口栄養剤を活用することも、体力を維持することや、治療効果を高めることに役立つでしょう。
*1)参考文献:日本がんサポーティブケア学会 がん悪液質ハンドブック
栄養バランスを考えた食事内容
体重減少を防ぐためには、タンパク質、炭水化物、脂質といった栄養をバランスよく摂取することが大切です。
タンパク質は魚や肉、卵、大豆製品などに多く含まれており、身体の修復や免疫力の維持に役立ちます。こうした食材を意識して食事に取り入れましょう。
エネルギー源となる炭水化物は米やパンや麺から摂取できます。脂質はオリーブオイルやアボカド、ナッツ類など、良質なものを選ぶのがおすすめです。
また、野菜や果物に含まれるビタミンやミネラルは代謝を促進し、免疫力を高めます。加工食品やジャンクフードは控えて、栄養価の高い食品を選ぶように心がけましょう。
栄養補助食品や経口栄養剤の活用
がんによる体重減少を防ぐためには、栄養補助食品や経口栄養剤をうまく取り入れるのも1つの方法です。食事だけで必要な栄養を摂りきれないときは、補助食品が栄養バランスをサポートしてくれます。
食欲がない場合や消化が難しいときには、プロテインバーやドリンク、ビタミン・ミネラルサプリメントなどの経口栄養剤を活用すると、無理なく栄養を摂取できるでしょう。
まとめ:がんによる体重減少には早めの対応が大切
がんによる体重減少は、治療の継続や生存率にも影響することがあるため早めに対策を進めることが大切です。定期的に体重を測定し、体重が減ってきた場合は主治医に相談しましょう。
またがん以外にもさまざまな原因で体重減少は起こります。その中には早く治療する必要のある病気が隠れていることもありますので、原因不明の体重減少を放置せず、異変に気づいた際にはすぐに医療機関を受診しましょう。
これからも健康に関する正しい知識を身につけて、自分や家族の健康を守りましょう。
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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・日本医師会 認定産業医
・日本内科学会 認定内科医
・日本神経学会 神経内科専門医・指導医
2003年奈良県立医科大学卒
名古屋大学大学院で博士号取得
これまでトヨタ記念病院、名古屋大学病院などで臨床、教育、研究に従事。2年半のトロント小児病院でのポスドク後、現在は臨床医として内科診療に携わる一方で複数の企業で産業医として働き盛り世代の病気の予防に力を入れている。また2022年に独立し、創薬支援のための難病患者データベースの構築や若手医療従事者の教育を支援する活動を行っている。
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