CTとMRIの違いとは? それぞれの特徴と発見できる疾患についても解説
画像検査には多くの方になじみが深いレントゲン検査があります。レントゲンの他にも体内の状態をみることができる画像検査では、超音波検査、CT、MRI、核医学検査などがあり、それぞれ特性が異なります。この記事の中ではCT検査とMRI検査に焦点をあてて、それぞれの特徴をみていきます。認知症の検査ってどんなもの? 検査の種類や流れを徹底解説
認知症の有無は、検査や問診をもとに医師が総合的に判断します。認知症の診断は、似た症状を持つ他の病気との見極めが重要であり、一般の方が自己判断するのは困難です。
そこで、本記事は「認知症の検査の内容や流れ」や「認知症と診断された場合の対応と予防策」などを解説します。検査を受けるか迷っているときに、落ち着いて判断するためのヒントが得られる内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。
認知症の検査が重要な理由
一般的に言う「認知症の検査」とは、記憶力や判断力などの認知機能の低下を調べるための検査を指します。検査により認知機能を評価するメリットは以下の通りです。
- 認知症の兆候を早い段階で発見できる
- 今後の生活や治療方針を立てる手がかりになる
- 認知機能低下の程度や影響を具体的に把握できる
- 症状の進行を遅らせるための対策がとりやすくなる
- 家族や介護者が必要なサポートを検討しやすくなる
認知症の兆候を見つけることで、進行を遅らせる治療や生活習慣の見直しを早い段階で始めることができます。症状が軽いうちに対策することで、本人の自立した生活を保てる可能性が高まります。
認知機能の評価により「認知機能がどれくらい低下しているか」「日常生活にどれくらい影響しているか」など、詳しく把握できるのは大きなメリットです。これにより、家族や介護者が必要なサポートを考えやすくなり、本人に適した環境を整えやすくなります。
認知症はゆっくりと進行する病気ですが、早期発見による治療やリハビリ、生活改善でこれまで通りの生活を継続できるケースも多くあります。認知機能の評価によって得られる情報は、生活設計やサポート体制を整えるうえで、大きな手がかりとなります。
認知症検査の方法と内容
認知機能の評価には様々な検査が用いられており、それぞれ認知症の進行状況や、認知機能を評価するために欠かせません。
今回は数ある検査のうち、「神経心理学的検査」「画像検査」について見ていきます。
神経心理学的検査
神経心理学的検査は、脳の認知機能を評価するために行われる検査です。代表的な検査である「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」「ミニメンタルステート検査(MMSE)」の2つを解説します。
1.長谷川式認知症スケール(HDS-R)
長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、認知機能の低下を判断する方法として広く用いられている検査です。いくつかの質問を通して「現状をどれくらい認識しているか」「どれくらいの情報を処理できるか」「どれくらい短期的な記憶力があるか」などを確認します。
確認内容と質問例は以下の通りです。
確認する内容 | 質問の例 |
---|---|
現状を把握する能力 |
|
短期的な記憶力 | これから伝える3つの言葉を言ってみてください(「桜」「猫」「電車」などの3語を復唱してもらう) |
情報の処理能力 |
|
数分前の短期的な記憶力 |
|
言葉が流暢に出るか |
|
質問はこのような内容を含めて9項目あります。こうしたやり取りを通して、現在の認知機能を総合的に評価します。
2.ミニメンタルステート検査
ミニメンタルステート検査(MMSE)は認知機能を全体的に評価するために行う検査です。検査内容には「現状を把握する能力」「言葉を理解する能力」の確認などがあります。
確認する内容 | 質問の例 |
---|---|
現状を把握する能力 |
|
短期的な記憶力 | これから伝える言葉を覚えて言ってみてください(「桜」「猫」「電車」などの3語を復唱してもらう) |
短期的な記憶力、言葉を理解する能力 | 今から私が言う文を覚えて、繰り返し言ってください。「みんなで力をあわせて綱を引きます(復唱してもらう)」 |
言葉を理解して、行動する能力 | 実際に紙を渡して、以下を実行してもらう
|
視覚情報を処理する能力 | この図形を正確にそのまま書き写してください (決められた図形を見せて書き写してもらう) |
このような内容を含めて、検査は11項目です。点数に応じて「認知機能に異常なし」「軽度認知機能低下の疑いがある」「認知症の疑いがある」の3つに分類されます。
画像検査
画像検査は、脳の構造や機能を視覚的に評価するために不可欠な検査です。以下で、代表的な画像検査とその内容や目的について解説します。
なお、画像検査については以下の記事でも解説していますので、詳細が気になる方はそちらの記事も参考にしてください。

1.頭部MRI(磁気共鳴画像法)
頭部MRI検査は、磁場と電波を利用して高解像度の脳画像を作成する検査です。脳梗塞や脳腫瘍などの脳疾患に加えて、脳の構造上の異常や萎縮状態を詳しく確認することができます。例えば、アルツハイマー型認知症は記憶に関わる「海馬」という部位が萎縮することが多く、そうした特徴を捉えることができます。
2.頭部CT(コンピュータ断層撮影)
頭部CT検査は、X線を使って脳の断面画像を取得する検査です。MRI検査に比べて、検査時間が短いため、脳出血や頭部外傷による異常などを素早く確認できます。特に、急な意識障害や症状の変化がある場合、救急外来において異常の有無を速やかに調べるために使われます。
3.脳血流SPECT(単一光子放射断層撮影)
脳血流SPECT検査は、脳の血流を確認するための検査です。前頭葉や側頭葉など、特定部位の血流低下を確認することで、認知症の有無や種類を鑑別する手がかりになります。
4. PET検査(陽電子放出断層撮影)
PET検査では、脳にたまった異常なたんぱく質(アミロイドやタウ)を画像で確認することができます。アミロイドPETは、アルツハイマー型認知症の診断や、抗アミロイドβ抗体薬といった新しい治療薬の適応判断に役立ちます。タウPETは、病気の進み具合や他の認知症との見分けに使われます。これらの検査により、より正確な診断と治療が可能になります。
これらの画像検査を組み合わせることで、より正確な認知症の診断と治療適応の判断が可能になります。それぞれの検査には特定の目的があり、総合的な評価に役立っています。
認知症の検査の流れと費用
認知症に関連した検査を受けるための費用や、検査の流れについても気になっているのではないでしょうか。ここからは、一般的な検査の流れと費用の目安について解説します。それぞれ見ていきましょう。
検査の一般的な流れ
認知症の有無を調べる検査の流れは、以下の通りです。なお、順番はあくまでも一般的なもので、医師の判断により前後する場合もあります。
1.初回相談
まずは、家族や本人が気になる症状について医療機関に相談します。かかりつけ医や専門医に相談することで、必要な検査の方向性が決まります。かかりつけ医がいない方は、脳神経内科、脳神経外科、精神科、心療内科、または「もの忘れ外来」がある医療機関を受診しましょう。
2.問診
問診では、医師が本人やご家族から詳しく話を聞きます。認知機能の低下や、日常生活を送る上での支障の有無を確認するため「いつ頃から症状が出たか」「どんな場面で困っているのか」などを丁寧に聞き取ります。
3. 簡易認知症検査
次は、簡単な質問や作業による記憶力や判断力のチェックです。よく使われるのは、「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」です。
4.画像検査、血液検査
これまでの過程で認知症が疑われる場合、画像検査や血液検査などを行い、脳の異常や身体的な変化を確認します。これらの検査結果により医師が総合的に認知症の有無を判断します。
検査にかかる費用と保険適用
認知機能を評価するための検査にかかる費用は、種類によって様々です。一般的な費用の目安は、以下の表の通りです。
検査の種類 | 1割負担 | 3割負担 | 10割負担 |
---|---|---|---|
認知機能検査 (長谷川式スケール、ミニメンタルステート検査) |
80円 | 240円 | 800円 |
MRI検査 | 2,200円〜3,200円 | 6,600円〜9,600円 | 22,000円~32,000円 |
CT検査 | 1,400円〜2,000円 | 4,200円〜6,000円 | 14,000円〜20,000円 |
保険診療の場合は、自己負担額は1〜3割となります。なお、保険適応になるのは医師が医学的に「検査が必要」と判断した場合のみです。予防や健康管理の目的で行われる「脳ドック」は基本的に保険対象外となるため注意しましょう。
脳ドックの費用については、以下の記事でも詳しく解説しています。気になる方はそちらもチェックしてみてください。
脳ドックにかかる費用は? 保険適用できる? 自由診療と保険診療の違いも解説
脳ドックを受けたことがありますか? 40歳を越えると脳卒中のリスクが徐々に上がるため、40代の方でまだ脳ドックを受けたことが無い人は注意が必要です。特に高血圧や喫煙習慣、飲酒習慣、生活習慣に心配のある人はリスクがさらに高いため、一度脳ドックを受けることをオススメします。この記事では、脳ドックの費用の目安と保険適用されるかどうかについて解説していきます。
家族の対応と認知症の検査を受ける際の心構え
認知症を調べるための検査を受けることを本人が嫌がる場合は、家族としてどのように接するべきか悩むかもしれません。そのような時の具体的な対応について見ていきましょう。
本人が検査を拒否する場合の対応方法
認知症に関する検査を拒否する理由の多くは、「もし認知症だとわかったら怖い」という不安からくるものです。本人は「年のせい」「疲れているだけ」と自分に言い聞かせて、問題を直視したくないのかもしれません。
そのような時は、以下のように検査のことを伝えてみましょう。
- 家族が一緒に医療機関へ付き添う
- 検査を受けるメリットを説明する
- 健康チェックの一環であることを伝える
医療機関に1人で行くこと自体に不安を感じる方も多いです。家族がそばにいるだけで、気持ちが落ち着き、検査への抵抗感も和らぐかもしれません。
検査を受けるメリットを説明するのもおすすめです。前向きな意味があることを伝えてあげましょう。
いきなり「認知症の検査を受けて」と伝えると、本人も「私、おかしいと思われているのかな」と不安を感じます。
医療機関の受診を促すときは「最近ちょっともの忘れが気になるから、一度健康診断もかねて病院に行ってみようか」とやさしく声をかけてみてください。定期健診の一部として検査するという伝え方なら、本人にとっても受け入れやすいでしょう。
家族ができるサポートと準備
認知症に関連する検査をスムーズに進めるには、家族のちょっとした準備や気づかいが重要です。以下を心がけてください。
- 症状や気になることをメモしておく
- 家族も検査の内容を把握しておく
- 検査後の準備もしておく
認知症の症状は、本人から説明できないこともあります。「最近こんなことが増えた」「こういう場面で困っている」などを事前にメモし、診察時に医師に伝えることで、診断がスムーズになります。
家族が検査の流れを理解しておくことも大切です。家族から本人にやさしく説明してあげることで、不安が和らぐこともあるでしょう。
もし認知症と診断された場合でも、必要なサポートやサービスを利用することで、これまでの暮らしを続けることは可能です。どこに相談できるか、どのような支援があるかを家族で調べておくと今後の安心につながります。
認知症と診断された場合の対応と予防策
もし認知症と診断されたとしても、落ち込む必要はありません。
早い段階で適切なサポートを受け、生活を工夫することで、これまで通りの暮らしを続けることは可能です。ここからは、診断後にできることや支援制度の活用法を見ていきましょう。
診断後の生活設計と支援制度の活用
認知症と診断されたあとで、大切なのは「これからどう暮らしていくか」を考えることです。自分らしい生活を続けるためも、以下のようなサービスの利用を検討してみましょう。
- 介護保険制度
- 地域包括支援センター
- その他の公的支援制度
介護保険制度を利用することで、訪問介護やショートステイなど、様々な介護サービスを使うことができます。介護保険制度を利用するためには「介護が必要な状態になっている」と、自治体に認められる必要があります。まずは、お住まいの地域にある「介護保険課」や、後述する「地域包括支援センター」に相談してみましょう。
地域包括支援センターでは、介護や生活の相談や、介護サービスの調整、情報提供などを行っています。「何から始めれば良いかわからない」といった相談にも親身に対応してくれるでしょう。
場合によっては、生活保護や障害者手帳の申請が必要になることもあります。これらは経済的、生活的な負担を軽くするための制度で、自治体の窓口で相談することができます。
認知症の進行を遅らせるための生活習慣
認知症の進行を遅らせるためには、日々の生活習慣が大切です。生活上の注意点を具体的にご紹介します。
食事
食事は、魚や野菜を中心にバランス良く食べることを心がけましょう。オリーブオイル、果物、豆類、全粒粉のパンやご飯など、自然に近い食品を取り入れるのがおすすめです。
特に、抗酸化作用のある野菜や果物は、脳の老化を防ぐ働きがあるとされています。加工食品や脂が多い肉料理は控えめにして、身体にも脳にもやさしい食生活を意識しましょう。
運動
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、脳の血流を改善して記憶力や集中力を支える働きがあると言われています。
ウォーキングなら1回30分〜40分、週3日以上を半年継続するのが目安です。運動習慣がない方は、外出や家事のなかで「よく歩くこと」を意識するのも良いでしょう。
脳トレ
読書やパズル、計算ゲームなど、脳を活性化させる活動を取り入れるのもおすすめです。新しい趣味を始めたり、学習活動に参加したりすることで脳が鍛えられます。
特に「新しいことに挑戦する活動」は、認知機能の維持に良い影響を与えると言われています。
社会活動
社会活動への参加は積極的に行いましょう。人とのつながりを大切にするため、地域のサークルやボランティア活動に参加するのも効果的です。
人と関わる機会が増えると、会話や感情のやりとりによって、孤立や抑うつの予防にもつながると言われています。身近な人との会話を意識的に増やすことも重要です。
これらの習慣を取り入れることで、認知症の進行を遅らせることが期待できます。定期的に医療機関で健診を受け、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら生活を整えていきましょう。
まとめ:不安を解消するためにも、まずは認知症の検査を
この記事では「認知症の検査の種類や検査の流れ」や「認知症と診断された場合の対応と予防策」などをご紹介しました。
認知症に関する検査には、神経心理学的検査や画像検査など様々な方法があり、早期発見や適切な対応に役立ちます。
こうした検査を受けることで、今後の生活設計や支援制度の利用がしやすくなり、本人や家族の不安を軽減することにつなげられます。認知症は早い段階で気づくことが大切です。もし気になる症状があれば、迷わず医療機関に相談してみてください。
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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・日本救急医学会専門医
・日本脳神経外科学会専門医・指導医
・日本脳神経外傷学会専門医・指導医
・日本脳卒中学会専門医・指導医
・日本認知症学会専門医・指導医
・日本脳ドック学会認定医
・日本がん治療認定医機構がん治療認定医
・日本医師会認定産業医
・臨床研修指導医
2007年 東北大学医学部医学科卒業
横浜市立大学大学院医学研究科で博士号取得
救急医療、脳神経外傷、認知症を専門とし、脳卒中・頭部外傷の急性期治療から慢性期の認知機能評価まで幅広く対応しています。ドイツ(チュービンゲン大学 統合神経科学センター)・米国(サウスカロライナ医科大学)での研究経験を活かし、臨床・教育・研究のバランスを重視した医療の実践に努めています。