急性虫垂炎(盲腸)とは? 初期症状・がまんできる痛みの見分け方・治療法を解説

2025/08/14
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大腸の入り口には虫垂(ちゅうすい)という5-10cm程度の突起物があり、この虫垂が炎症を起こすと急性虫垂炎という病気になります。「盲腸」という呼び名で広く知られている病気です。頻度の高い病気ですが、治療が遅れると命にも関わります。今回の記事では急性虫垂炎について解説します。
目次

急性虫垂炎(盲腸)とは?

急性虫垂炎(盲腸)とは?

急性虫垂炎とは、腸の中でも盲腸という部分から垂れ下がっている、虫垂と呼ばれる部分に炎症が起きている状態です。
幼児から高齢者まで男女問わずどの世代にも見られますが、10〜20代の若い世代の発症が多いと言われています。

急性虫垂炎。盲腸と虫垂の場所

原因

急性虫垂炎の原因はすべてが解明されているわけではありませんが、虫垂の中に便(糞石)や植物の種などの異物が入り込むことによって細菌感染が引き起こされ、発症すると言われています。また、便秘、乱れた食生活、過度なストレス、過労といった日常生活の不摂生によっても誘発されると考えられています。

症状

当初はみぞおちあたりの痛み、むかつきを感じる程度ですが、次第に(おおよそ24時間以内)右下腹部に痛みを感じるようになります。
この状況ですでに炎症が起きていますが、ここで放っておくとさらに炎症が進んでしまい、高熱が出たり、お腹が突っ張ったような感じとなり歩行が困難となったり、下腹部の痛みに耐えられない状態になります。また、炎症によって腸の動きが麻痺し、便秘になることもあります。

さらに症状が進行して虫垂が破れてしまった場合には、膿がお腹に広がって腹部全体に強い痛みがあらわれます。
この状態になると命に関わることもあるため、急性虫垂炎を放置するのは危険なのです。

他の病気との違い:盲腸の腹痛はここがポイント


急性虫垂炎で起こる腹痛には、いくつかの特徴が見られます。初期には、みぞおちやへその周辺に痛みを感じ、やがて右下腹部へと痛みが移動するのが典型的なパターンです。この「痛みの移動」が虫垂炎を見分けるためのポイントになることがあります。

痛みの種類には、「持続的に刺すような痛み」や「波のように繰り返す、差し込むような痛み」などがあります。嘔吐することもありますが、痛みの方が先行しやすいのも1つの特徴です。

また、右下腹部を指で押して急に離した時に、痛みが増強することがあります。これは「反跳痛(はんちょうつう)」と呼ばれ、虫垂炎に見られる兆候です。虫垂の炎症によって発熱することもあります。

虫垂炎を見分けるためには、このように「どのような痛みを感じるか」「他に症状はないか」にも注意しましょう。

ただし、こうした症状はあくまで典型的なもので、必ずしもすべての人に当てはまるわけではありません。急性虫垂炎に似た症状があらわれる病気は他にも多くあります。自己判断は避け、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

盲腸の腹痛はここがポイント

検査方法

急性虫垂炎は放置してはいけません。場合によっては命にも関わります。
症状が出始め、特に痛みが右下腹部に移動するような感覚があった場合には、できるだけ早期に病院を受診する必要があります。

夜にこのような状態になった場合には、眠ってしまうのではなく、夜間救急を利用したり、救急車を呼んだりすることが必要です。

検査方法としては、以下のようなものがあります。

  • 問診、触診
  • 血液検査
  • 腹部CT検査
  • 腹部超音波検査

治療方法

急性虫垂炎の治療はなるべく早い方が、身体への負担も軽減できます。
以前は外科的治療(切除)が基本でしたが、近年は抗菌薬や画像診断の進歩に伴い、外科的切除後の術後合併症を回避する目的で、内科的治療(抗菌薬投与)を行うことも多くなっています。

内科的治療を行うか、外科的治療を行うかはケースごとに選ばれるようになってきています。
多くのケースでは(8割以上)内科的治療で症状が改善しますが、実際に治療を行う担当医から、それぞれの治療法の説明を十分に受けた上で治療法を選択するようにしてください。

内科的治療

炎症が軽い場合には、入院で安静を保ちながら抗菌薬点滴を行います。
炎症と痛みの軽減が見られれば、内科的治療を継続します。

内科的治療開始から2日経っても、症状や炎症の改善が認められない場合は、手術を検討することが望ましいと報告されています。
内科的治療を選択した場合、5年以内に再手術となったケースが30-40%あると報告されており、治療後も注意が必要です(*1)。

外科的治療

虫垂の周囲に膿が溜まっている時、または虫垂が破れてしまっている時には、基本的には緊急で手術が行われます。
また、そこまでの状態には至っていなくても、炎症の所見が強く見られる場合には、外科手術が行われることが多いです。

外科的治療には、開腹手術と腹腔鏡手術があります。

盲腸の痛みをがまんするとどうなる?

急性虫垂炎による腹痛をがまんするのは非常に危険です。初期段階の痛みを放置してしまうと炎症が悪化し、虫垂が破裂するリスクが高まります。虫垂が破裂すると、腹膜炎を引き起こし、強い腹痛や高熱、全身への感染拡大といった重篤な症状を招く恐れがあります。

治療が遅れると、「腸閉塞」や「腹腔内膿瘍(のうよう)」といった合併症が起こることもあり、手術が必要になるケースもあります。回復が遅れる可能性があるため、早めの対応が重要です。

また、痛みをがまんして医療機関の受診が遅れると、他の内科的疾患との区別がつきにくくなることがあります。このようなリスクを避けるためにも、虫垂炎の疑いがある場合は痛みをがまんせず、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

盲腸かな? セルフチェックと受診の目安


急性虫垂炎の初期段階は、自己診断が難しいことがあります。ここでは、自分でできるセルフチェックの方法と受診の目安を紹介します。

まず注目したいのは、腹部の痛みです。急性虫垂炎は、痛みがみぞおちやへその周囲から始まり、数時間以内に右下腹部へ移動するのが特徴です。このような症状があれば虫垂炎の恐れがあるため注意しましょう。

さらに、「発熱や嘔吐がある」もしくは「嘔吐よりも腹痛が先行している」といった症状がある場合は、急性虫垂炎の可能性が高まります。また、歩行時の振動で右下腹部に痛みを感じたり、右下腹部の痛みが身体を曲げた際に増強したりする場合は、症状が進行しているかもしれません。

虫垂炎は放置すると重症化する恐れがあります。右下腹部に痛みが集中する場合や、痛みが強くなっている場合、発熱や嘔吐が継続している場合などは早急に医療機関を受診しましょう。

自己判断に頼りすぎると、症状の進行を見逃すおそれがあります。早期に専門医の診察を受けることが、迅速な治療と回復につながります。

自分でできる盲腸のセルフチェック

急性虫垂炎(盲腸)は早期受診が大切!

急性虫垂炎(盲腸)は早期受診が大切!

時間経過とともに、身体に大きな負担がかかってくる急性虫垂炎は、早期受診がとても大切です。
痛みが必ずしも強くなく、病院に行っても腹痛の原因が明確ではないというケースも多々あります。
しかし症状が治らなかったり、悪くなったりする一方であれば、休日や夜間でもなるべくすぐにもう一度病院に行くように心がけましょう。

痛みを放置しないように、日頃から気をつけることをおすすめします。

記事についてお気づきの点がございましたら、
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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監修医 緒方 文大 (おがた・ふみひろ)
愛和クリニック院長・内科学会認定医

京都府立医科大学卒業後、虎の門病院入職。内科全般を学び、その後がんや慢性疾患を多く扱う消化器内科医に。『健康防衛・健康増進』の重要性を痛感。『患者様の健康増進のために本気で取り組みたい』という強い想いで、愛和クリニック開業。

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