2022/04/15 ( 更新日 : 2022/04/19 )
歳をとっても脳の若さを保つには? スーパーエイジャーから学ぶ習慣

脳を若く保つために知っておきたいスーパーエイジャーとは?

今回はシカゴのノースウエスタン大学の研究チームで高齢でも脳の若さを保つスーパーエイジャーについての報告があったので、ご紹介します。
スーパーエイジャーとは、定義で言うと「中年の平均値と同じくらいの一次記憶(短時間記憶にとどめられるがやがて忘れられる記憶のこと)能力を持つ80歳以上の人」を意味する言葉です。
この脳を若い状態に保つことができているスーパーエイジャーの年間の脳萎縮(脳容積の減少)は、一般の人の年間の脳萎縮よりも、少ない傾向がみられています。
研究の具体的な内容としては、「24人のスーパーエイジャーと12人の一般高齢者の大脳皮質の厚さを測定したところ大きな違いがみられた」というものです。
一般の高齢者が年間で約2.24%脳容積を減少するのに対して、スーパーエイジャーは約1.06%の減少でした(*1)。
脳が加齢とともに萎縮することは止められませんが、スーパーエイジャーは萎縮する速度が遅く、年齢を重ねても若々しい脳の状態を保つことができているかもしれない、と考えることができるのです。
脳の老化、アミロイドβについて
脳の老化の要因として、アミロイドβという老廃物の蓄積がよく知られています。
アミロイドβは健康な人の脳にも存在していますが、くっついて異常なアミロイドβになると脳に溜まってしまい、健康な神経細胞にまとわりついて脳を萎縮させる原因となります。
このように脳萎縮が加速していくと記憶障害などが起こり、アルツハイマー型認知症に進展していくのでは、と研究者の中では考えられているのです。
従って脳萎縮が少ないスーパーエイジャーたちはアミロイドβが体に溜まりにくい生活習慣を実践しており、そのことによってアルツハイマー型認知症などを遠ざけていると考えられています。
スーパーエイジャーの研究が進んでいる米国では、彼らの生活の仕方や習慣を知ることが非常に重要である、と考えられ始めています。
スーパーエイジャーに共通する習慣
活動的(アクティブ)な生活
活動的であることは、年齢を重ねていく上でももっとも大切なことです。活動することで体の酸素摂取量も増え、体の機能を最適化することに役立ちます。
定期的な運動は適正体重を保つ上でも重要です。
BMI(ボディマス指数)が30を超えると、「アルツハイマー病にかかるリスクが3倍になる」とも言われていますので、週に2回程度の運動をする習慣をつけることが重要です。
自分自身への挑戦
精神的な活動は、身体的な活動よりも重要であるといえるかもしれません。
自分がまだ知らないことを知ることや、セーフティーゾーンの外に出て未知の体験をすることで、脳を刺激して新しい神経細胞のつながりを増やすこともできます。
人付き合いをよくする
スーパーエイジャーは人付き合いをよくしており、社会と広く関係を持っていることが明らかになっています。
このことから「前向きで暖かく信頼できる人間関係を持つことが、記憶力と認知能力の低下を遅らせる鍵となるのでは?」と研究者のあいだでは考えられています。
実際に心理的幸福の尺度として使用される指標(Ryff PsychologicalWell-BeingScale)を受けてもらったところ、スパーエイジャーは全体的に「心理的幸福を強く感じている」という結果もあるようです。
▽スーパーエイジャーが幸福なときに感じていることは?
- 自立性
- 他者との前向きな関係
- 個人的な成長
- 自己受容(自分自身を認めて受け入れること)
- 環境制御力(複雑な周囲の環境を統制できる有能さの感覚) など
自分ひとりでこれらを感じることはできないため、こうした心の動きが起こるような他者との関係を築くことが大切です。
こうした正の感情は体にもいい影響があり、アルツハイマー型認知症を発症するリスクの低下にも関係しているのでは、と考えられています。
脳の若さを保つことがアルツハイマー予防にもなる?

年齢を重ねると、ついつい新しいことを始めるのが億劫になってしまう方が多いかもしれません。
しかし脳萎縮を進行させないためにも、スーパーエイジャーのようにいつでも心は若く、好奇心を失わないことが重要なのではないでしょうか。
参考:
*1 Amanda H. Cook et al. Rates of Cortical Atrophy in Adults 80 Years and Older With Superior vs Average Episodic Memory.
2017;317(13):1373-1375
気になる方は、即日予約・受診可能です。
30分での脳ドック検査「スマート脳ドック」
こちらの記事もおすすめ

ストレスで脳が萎縮するって本当? そのメカニズムと幸せホルモン「セロトニン」について解説
ストレスは心だけでなく体にもさまざまな影響をもたらします。ストレスで胃やお腹が痛くなってしまうことはよく知られていますが、実は脳が萎縮することもわかっているのです。では、脳が萎縮すると具体的にどのような影響があるのでしょうか。今回はストレスが脳に与える影響や幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを増やす方法などを紹介します。
記憶力をアップさせる食べ物は? 生活習慣を整えることや、幸福感を上げるのも効果的!
生まれ持った能力だと思われがちな記憶力。物忘れが多かったり覚えが悪かったりすると、どうしても気になってしまうものです。実は日常生活のなかで少し気をつけるだけでも記憶力は改善できます。では、具体的にどのようなことをすれば記憶力を上げられるのでしょうか。ここでは食事と生活の2つの観点から記憶力を高める方法を紹介します。
ストレスが原因で脳卒中になる? リスクを増やさないためにできること
結論からいうと、間接的ではあるもののストレスは脳卒中の一因になります。なぜなら脳卒中の原因として知られる高血圧が、ストレスにより引き起こされているケースがあるからです。この記事では、そもそもストレスとは何かを確認し、ストレスを受けた時の体の反応からストレスと向き合う時のコツまでを紹介していきます。