2022/08/31 ( 公開日 : 2022/05/17 )

膵臓がん(膵がん・すい臓がん)とは? 症状、検査方法、生存率などについて解説

症状
がん すい臓 検診
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膵臓がん(膵がん)は症状が出にくく、早期発見することが難しいとされるがんです。進行する速度は早く、がんが発見された場合には治療ができないケースも多いがんです。膵臓がんを早期発見するには定期的な検診が必要です。この記事の中では膵臓がんの特徴や、発見するための検査について解説いたします。
目次

膵臓がんについて

膵臓は胃の後ろにある長さ20センチほどの臓器です。

おもな機能としては以下のものがあります。

・食べ物の消化を促す消化酵素を膵管の中に分泌
・血糖値を調節するためのインスリンを血液に分泌

膵臓で発生するがんの約9割が膵管から発生します。
発見される場合には、多くがすでに腫瘤(こぶ、固まりのこと)になっているケースが多いです。

症状がないまま進行する

膵臓がんのおもな症状は以下です。

  • 腹痛
  • 背部痛
  • 黄疸(血液中のビリルビンという色素が増えて皮膚や白目が黄色くなる)
  • 食欲不振
  • 体重減少

しかしながら、膵臓がんは早期には症状が現れないことがよく知られており、どれも症状が進行した後でわかるものです。

たとえば十二指腸に近い膵頭部にがんが発生した場合には、皮膚や白目が黄色くなる現象や、尿の色が褐色になる現象が起こります。
こうした現象が起きるのは、胆汁の流れ道である胆管をがんが圧迫するなどして胆汁の流れが障害されるためです。

反対に膵体尾部にがんが発生した場合には、腹痛や背部痛が起こることがあります。
これはがんが神経節に浸潤するためにおきます。

膵臓がんの原因

膵臓がんの原因として考えられるものは以下です。

  • 肥満
  • 偏った食生活
  • 糖尿病
  • 過度な飲酒(慢性膵炎)
  • 喫煙
  • 遺伝によるもの

さらに注意したいのは、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と呼ばれるものです。
これは嚢胞性腫瘍と呼ばれる病気ですが、がん化することでもよく知られています。

もし検診でIPMNを指摘された場合には、がん化していないか定期的に画像検査で経過観察をしていく必要があります。

早期発見がなぜ必要か?

膵臓がんは自覚症状が現れにくく、症状が現れてからの発見ではすでに進行していることが多いがんです。
「地域がん登録における5年生存率」では、膵臓がんは突出して他の部位のがんよりも生存率が低いです。

膵臓がんのリスクは40代から現れはじめ、年齢を重ねるにしたがって増えていきます。男性の方が女性よりも患者数はやや多い傾向にあります。

がん死亡数の順位でも、2020年では男性で4位、女性で3位となっています。

がん死亡数の順位(2020年) 元データ:人口動態統計がん死亡データ
1位 2位 3位 4位 5位
男女計 大腸 膵臓 肝臓 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位
男性 大腸 膵臓 肝臓 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位
女性 大腸 膵臓 乳房 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸10位

膵臓がんが進行すると、生存率は急激に下がってしまうため、検診で早期に発見することが重要です。

膵臓がん発見のための検査方法

膵臓がんの検査としては、まず血液検査(腫瘍マーカー)や腹部超音波検査(腹部エコー)をおこないます。
これらの検査でスクリーニングをおこない、膵臓がんが疑われる場合には造影CT検査、MR胆管膵管撮影(MRCP)、超音波内視鏡検査(EUS)を行います。

上記の検査で診断されなかった場合には、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行います。

血液検査(腫瘍マーカー)

体内にがんが発生すると、通常ではほぼみられないがん特有の物質が血液や尿のなかに現れます。この物質を腫瘍マーカーといいます。
膵臓がんではCA19-9、SPan-1、DUPAN-2、CEA、CA50などを血液検査で測定します。

腹部超音波検査(腹部エコー)

プローブという端子をお腹にあてて、臓器に反射した超音波を画像化する検査です。
リアルタイムに画像を確認することができるため、小さな病変であっても確認することが可能です。

造影CT検査

CT検査とは、コンピューター断層撮影検査のことです。
放射線を使用し、病変やほかの臓器への浸潤や転移があるかどうかを診断可能です。
造影剤を使うと、血管などの様子をより詳しく確認することができます。

ちなみに造影剤アレルギーの方には、造影剤を使用することはできません。

MR胆管膵管撮影(MRCP)

膵臓がんが発生しやすい膵管と、胆道がんが発生する胆管や胆嚢を同時に撮影する検査です。
造影剤を使用しなくてもいいため、検査リスクは少ないです。
膵臓がんに変化する恐れがある、膵管内乳頭粘液性腫瘍の経過観察にも非常に有効な検査であるといえます。

後述のERCPと同等レベルの画像を得ることができ、患者さんの負担も少ないため、ERCPに代用する検査として行われることが多くなっています。

超音波内視鏡検査(EUS)

口から超音波内視鏡を入れて胃の中に挿入し、胃壁にエコーを押し当てて病変を確認します。
腹部エコーと比較しても、膵臓に近い位置からプローブをあてて観察できるため、診断の精度も高くなります。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)

口から内視鏡を入れて先端を十二指腸まで進め、膵管と胆管の出口に細い管を通して造影祭を注入、膵管や胆管をX線で撮影します。
他の検査で診断が確定しなかった場合に行われる検査ですが、急性膵炎などの合併症が起こることがあるので注意が必要とされています。

定期的な検査で早期発見・早期治療を

膵臓がんは進行した状態で見つかると、他の部位で見つかるがんよりもはるかに高いリスクがあります。
生活が乱れている方は予防としての生活習慣改善が必要ですが、それとともに早期発見のために定期的な検査をすることが重要となります。

記事についてお気づきの点がございましたら、
編集部までご連絡いただけますと幸いです。

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監修医 緒方 文大 (おがた・ふみひろ)
愛和クリニック院長・内科学会認定医

京都府立医科大学卒業後、虎の門病院入職。内科全般を学び、その後がんや慢性疾患を多く扱う消化器内科医に。『健康防衛・健康増進』の重要性を痛感。『患者様の健康増進のために本気で取り組みたい』という強い想いで、愛和クリニック開業。

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