膵臓がんの検査方法は? 費用や流れ、受けるべき検査をわかりやすく紹介
膵臓がんは、ほかのがんに比べて進行が早く、初期に症状が出ないことが多い病気です。
治療を始める時期によって病気の経過や見通しが変わるため、異常の早期発見が大切です。
本記事では、「膵臓がんの主な検査方法」や「検査の選び方」「受診のタイミング」などを解説します。検査の特徴や注意点を理解しておくと、自分に合った検査を選びやすくなるでしょう。
膵臓がん検査の基本と早期発見の重要性
膵臓がんは、進行が早く、初期に自覚症状が少ないのが特徴です。気づいたときには病気が進んでいるケースも多く、診断や治療を難しくする大きな要因となっています。
そのため、膵臓がんの検査は「いかに早くがんを見つけられるか」が重要です。早い段階で病気を発見できれば、治療の選択肢が広がり、経過の見通しも変わってくるかもしれません。
主な検査方法には、血液中の腫瘍マーカーを調べる「血液検査」や、身体を画像で確認できる「画像検査」などがあります。これらは身体への負担が少なく、膵臓に異常がないかを調べるときに役立ちます。
異常が見つかった場合や、がんが疑われる場合には、内視鏡による検査や、採取した細胞を調べる「病理検査」などが必要になります。こうした検査は、リスクを伴うケースもあるため、医師と相談しながら進めていくことが大切です。
膵臓がんの早期発見のためには、定期的な健康診断が欠かせません。特に「家族に膵臓がんの既往歴がある方」や「糖尿病を指摘されたことがある方」は注意が必要です。
一度、医師に相談して、自分に合った検査方法やタイミングを確認しておきましょう。症状がなくても「気になったときに相談すること」が、将来の健康を守る第一歩となります。
膵臓がんの主な検査方法
膵臓がんの主な検査方法には、血液検査、画像検査、内視鏡検査、病理検査などがあります。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
血液検査(膵酵素、腫瘍マーカー)
血液検査は、膵臓がんの基本的な検査です。膵臓の働きを調べるために「膵酵素」や「腫瘍マーカー」といった特定の物質の数値を測定します。
膵酵素にはアミラーゼやリパーゼがあり、これらの数値が高い場合、膵臓に異常が起きている可能性があります。
腫瘍マーカーとは、がん細胞によって産生される物質です。なかでも、「CA19-9」や「CEA」は膵臓がんの有無を確認する重要な指標とされています。特に、CA19-9は、膵臓がんにより上昇することが多く、がんの進行や治療経過の確認に用いられています。
ただし、腫瘍マーカーの値が高い場合でも、がんがあるとは断言できません。例えば、胆管炎や慢性膵炎などでも数値が上昇することがあるのです。なかには、CA19-9が上がりにくい体質の方もいます。
血液検査は身体への負担が少ないため検査としては手軽ですが、数値だけで病気の判断はできません。画像検査や医師の診察結果とあわせて総合的に判断しましょう。
画像検査(超音波、CT、MRI、PET)
血液検査や症状から膵臓がんが疑われる場合は、医師の判断により画像検査が行われます。
画像検査は膵臓がんの存在や広がり、他の臓器への転移の有無などを視覚的に確認できる検査です。それぞれの検査の特徴は以下の通りです。
検査 | 特徴 |
超音波(エコー)検査 |
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CT検査 |
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MRI検査 |
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PET検査 |
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画像検査は、治療方針を決めるうえで欠かせない検査です。組み合わせて行うことで、より正確な診断につながります。
内視鏡検査(EUS、ERCP)
内視鏡検査は、膵臓およびその周囲を観察するための検査です。膵臓がんの内視鏡検査には、主に2つの方法があります。
- 超音波内視鏡(EUS)
- 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
超音波内視鏡(EUS)は、内視鏡を口から挿入して、超音波により身体の内部を詳しく調べる検査です。がんの有無や大きさ、広がりをより精密に確認できます。必要に応じて、細い針で細胞を採取することも可能です。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は、膵管、胆管に造影剤を注入し、X線で身体を詳しく調べる検査です。診断に加えて、がんによる内臓の閉塞に対してステントを入れるなど、治療に用いられることもあります。ただし、検査後に膵炎をはじめとした合併症のリスクがあるため、実施にあたっては医師の慎重な判断が必要です。
病理検査(細胞診、組織診)
病理検査は、膵臓がんの診断に欠かせない重要な検査です。腫瘍から細胞や組織を採取し、がんかどうかを詳しく調べます。病理検査には、主に以下の2種類があります。
- 細胞診検査
- 組織診検査
細胞診検査は、採取した細胞を顕微鏡で観察することでがんの有無を確認する検査です。皮膚から針を刺して吸引したり、痰や尿などの液体中に浮遊している細胞を採取したりする方法があります。
組織診検査は、病変の一部から組織のかけらを取り出し、細胞の構造や異常を確認する検査です。細胞診検査よりも精度が高く、より正確な診断につながります。
これらの検査は、膵臓がんかどうかをより正確に調べる方法であり、今後の治療方針を決めるうえでも重要です。ただし、針を刺すなどの処置が必要になるため、身体に負担がかかることもあります。必要かどうかは、医師が他の検査の結果や症状を踏まえて判断します。
検査費用、流れ、注意点
膵臓がんの検査を受けるにあたって、費用の目安や検査の流れ、注意すべき点をあらかじめ知っておくことは大切です。
検査費用の目安と保険適用
膵臓がんの検査費用は、検査の種類によって異なります。
例えば、血液検査は数千円で済むことが多いですが、CT検査やMRI検査などの画像検査、内視鏡検査になると数万円かかることがあります。
ただし、ほとんどの検査は健康保険の対象となっており、医師の診察を受けて「必要」と判断された場合、公的保険が適用されます。この場合、自己負担は1〜3割程度です。
費用面が不安な方は、事前に受付のスタッフや医師に費用の見積もりについて相談しておくと安心です。医療機関によっては詳細な説明をしてくれます。
検査前の準備と当日の流れ
膵臓がんの検査の種類によっては、事前準備が必要です。例えば、以下のような注意点が挙げられます。
検査 | 注意点(例) |
血液検査 |
|
内視鏡検査 |
|
画像検査 |
|
これらの事前準備は、検査内容によって異なります。医療機関のスタッフや医師から詳しい説明があるため、必ずその指示に従いましょう。
検査当日は、受付を済ませて問診票を記入します。その後、スタッフの案内に従って検査が行われます。事前に流れを理解しておくことで、当日も落ち着いて検査を受けられるでしょう。
検査の選び方と受診のタイミング
膵臓がんを早期に発見するためには、症状やリスクに応じて、タイミングを逃さず受診することが重要です。膵臓がんは進行するまで症状が表れにくいため、気になるサインがあれば早めに受診することが大切です。
膵臓がんのリスクや、症状別に受診すべきタイミングを見ていきましょう。
リスク別に見る検査の選択肢
膵臓がんのリスクが高いとされる方は、より詳しい検査が必要になることもあります。以下の条件に当てはまる方は、医師に相談して検査を検討しましょう。
- 肥満がある
- 糖尿病がある
- 喫煙習慣がある
- 過度な飲酒習慣がある
- 慢性膵炎を繰り返している
- 家族に膵臓がんの既往がある
これらは、膵臓がんのリスクとなる要因で、当てはまる方は注意が必要です。例えば、家族内に膵臓がんの既往歴がある場合、そうでない場合に比べてリスクが1.5〜1.7倍になるという報告もあります。
リスクがある場合には、一般的な血液検査や腫瘍マーカーの確認に加えて、必要に応じて膵酵素のチェック、画像検査、内視鏡検査などが行われます。
検査の方法や内容は、症状やリスクとなる要因を踏まえて医師が判断します。そのため、問診票には普段の生活習慣を正確に記入し、診察時には医師に隠さずに伝えることが大切です。
どんな症状がある場合に検査を受けるべきか
膵臓がんは初期症状が乏しく、病気に気づきにくいケースがあります。以下のような変化がある場合は注意しましょう。
- 消化不良が続く
- 濃い色の尿が出る
- 白っぽい便が出る
- お腹や背中の痛みが続く
- 理由がわからないが、体重減少や食欲不振がある
- 原因がはっきりしないが、糖尿病が悪化した
- 黄疸(皮膚や白目部分が黄色くなる)がある
これらの症状は膵臓の異常が関係しているかもしれません。症状が明らかな場合は早急な受診が必要です。
また、慢性的な膵炎や原因不明の消化器異常の症状がある方も、一度膵臓の検査を受けておくと安心です。違和感が続くようであれば、自己判断せずにできるだけ早く医療機関に相談しましょう。
まとめ:膵臓がんの早期発見は検査選びから
膵臓がんは初期に症状が出にくく、進行も早い病気です。いかに早く異変に気づき、適切な検査につなげられるかが重要になります。
特に、家族に膵臓がんの既往がある方、糖尿病などのリスク要因がある方は、日頃から意識しておくことが大切です。定期的な健診や人間ドックを活用し、医師との相談を欠かさず行うようにしましょう。
膵臓がんと向き合ううえで大切なのは、「気づいたときにすぐに行動すること」です。自分自身の健康を守るためにも、正しい情報をもとに検査を受けることが、治療の可能性を広げる一歩となります。
なお、症状がない場合でも、膵臓がんの検査は人間ドックで受けられます。膵臓がんについて気になる方は以下から詳細をご覧ください。
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