カフェイン中毒の症状とは? 致死量はどのくらい? 錠剤の過剰摂取にも注意!
カフェイン中毒とは
カフェイン中毒とは、カフェインを短時間で過剰に摂取することで脳や心臓、神経系に様々な症状が起こることです。
もともとカフェインには中枢神経を覚醒させることにより、「集中力の向上」や「眠気、倦怠感の抑制」などの効果があります。これは、脳内で眠気を生じさせる物質「アデノシン」の作用をカフェインが遮断することに起因しているとされます。したがって、疲労が回復しているわけではなく、一時的にパフォーマンスが上がったように感じられる状態にすぎません。
カフェイン中毒の症状
短期間に大量にカフェインを摂取することで発症するカフェイン中毒の症状としては、以下のようなものがあります。
精神症状
軽度の場合 : 緊張・知覚過敏・多弁・不安・焦燥感 など
重度の場合 : 精神錯乱・妄想・幻覚・パニック発作・衝動性 など
身体症状
軽度の場合 : 胃痛・胸痛・頭痛・吐き気・心拍数増加・呼吸が早くなる など
重度の場合 : 痙攣・過呼吸・心停止 など
また、日本中毒学会の調べでは、国内でカフェインを多量に含む眠気防止薬やエナジードリンクなどを摂取したことによる急性中毒で、 2011年度から5年間に101人が救急搬送され、7人が心停止し、うち3人の死亡が報告されています。
人によって異なりますが、1~2時間あたり1g以上の摂取で中毒症状を発症し、2~3gの摂取で中毒症状が出て、5g以上で死に至るとされています。
【注意】
これらの症状は、不安障害や心臓の病気など、他の深刻な病気のサインである可能性も考えられます。カフェインの摂取量に心当たりがないにもかかわらずこのような症状が続く場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診してください。
カフェイン離脱とは?
習慣的に多量のカフェインを摂取している人が、急にカフェイン摂取をやめると離脱症状があらわれます。
一般的な症状としては、頭痛、倦怠感、吐き気が挙げられます。
普段のカフェイン摂取量によりますが(1日に何回摂取するかも含む)、通常離脱症状はカフェインの摂取をやめてから12~24時間後に出始め、2~9日間続くことが多いです。 カフェインの摂取をやめる時は、突然ではなく徐々に行うことが推奨されます。
カフェイン離脱の診断基準
A. 長期にわたる毎日のカフェインの摂取
B. カフェイン摂取の突然の中断、または摂取していたカフェインの減量後、24時間以内に以下の症状が3つ以上発現する
(1) 頭痛
(2) 著しい疲労感または眠気
(3) 不快気分、抑うつ気分、怒りやすさ
(4) 集中困難
(5) 感冒様症状(吐き気、嘔吐、または筋肉の痛みや硬直)
C. Bの症状は臨床的な苦痛または社会的、職業的または他の領域の機能障害を引き起こしている
D. 以上は他の疾患や他の物質障害によるものではない
カフェイン濃度について

私たちが日常的に飲む主なカフェイン含有飲料としては、国内で嗜好品として広く飲まれるコーヒーや茶類が挙げられます。
また、清涼飲料水の「エナジードリンク」や眠気覚まし用のドリンクの中には、コーヒーや茶類よりもさらに多くのカフェインが含まれているものもあります。
市販されているエナジードリンクや眠気覚まし用の清涼飲料水の成分表示の多くは、100 ml当たりの濃度で書かれています。
缶や瓶1本当たりにすると、コーヒー約2杯分に相当するカフェインが含まれているものもありますので、 1本の内容量に応じてカフェインの量を計算するようにして、1日に何本も飲まないように注意しましょう。
食品 | カフェイン濃度 | 備考 |
---|---|---|
コーヒー | 60 mg/100 ml | 浸出方法:コーヒー粉末 10 g/熱湯 150 ml |
インスタントコーヒー (顆粒製品) | 57 mg/100 ml | 浸出方法:インスタントコーヒー2g/熱湯 140 ml |
玉露 (緑茶の一種) |
160 mg/100 ml | 浸出方法:茶葉 10 g/60 ℃の湯 60 ml、2.5 分 |
紅茶 | 30 mg/100 ml | 浸出方法:茶 5 g/熱湯 360 ml、1.5~4 分 |
せん茶 | 20 mg/100 ml | 浸出方法:茶 10 g/90 ℃430 ml、1 分 |
ウーロン茶 | 20 mg/100 ml | 浸出方法:茶 15 g/90 ℃の湯 650 ml、0.5 分 |
エナジードリンク又は 眠気覚まし用飲料 (清涼飲料水) | 32~300 mg/100 ml(製品 1 本当たりでは、36~150 mg) | 製品によって、カフェイン濃度及び内容量が異なる |
一般的なカフェインの1日の摂取量目安
カフェインを一生涯摂取し続けたとしても、健康に悪影響が生じないと推定される1日当たりの摂取許容量については、 個人差が大きいことなどから、日本においても、国際的にも定められていません。
ですが、食品からのカフェインの摂取に関しては、国際機関などにおいて注意喚起等がなされています。 健康な成人がカフェインを摂取する際に、最大量の目安としては「1日あたり400mg」と示されています。 他にも各機関から以下の通り目安が定められています。
日頃からコーヒーやエナジードリンクなどを飲んでいる方は参考にしてください。
対象 | 一日当たりの健康に悪影響のない最大摂取量 | 機関名 |
---|---|---|
健康な成人 | 400mg(1回当たり 3mg/kg 体重※1) | 欧州食品安全機関(EFSA) |
400mg | カナダ保健省 | |
健康な子ども及び青少年 | 3mg/kg 体重 | 欧州食品安全機関(EFSA) |
2.5mg/kg 体重 | カナダ保健省 | |
子ども(4~6 歳):45mg | ||
子ども(7~9 歳):62.5mg | ||
子ども(10~12 歳):85mg | ||
13 歳以上の青少年:2.5mg/kg 体重 | ||
妊婦 | 300mg | 世界保健機関(WHO) |
200mg | 欧州食品安全機関(EFSA) | |
300mg | カナダ保健省 | |
200mg※2 | 欧州食品安全機関(EFSA) |
※注1 1回当たり摂取量約 3 mg/kg 体重以下(例:体重 70 kg の成人で約 200 mg 以下)であれば急性毒性の懸念は生じない。
※注2 乳児に健康リスクは生じない。
出典 : 食品安全委員会
妊娠・授乳中や子どもの注意点
妊娠中や授乳中の女性は、カフェイン摂取に関して特に注意が必要です。
カフェインは胎盤を通過し、胎児に影響を与える可能性があります。そのため、妊娠中はカフェインの摂取量を1日最大でも200mgまでに抑えることが推奨されています。
授乳中の女性も同様にカフェインの摂取を控えるべきです。母乳を通じてカフェインが赤ちゃんに伝わるため、赤ちゃんの睡眠や成長に悪影響を及ぼす可能性があります。授乳中のカフェイン摂取はできるだけ避け、摂取するにしても1日200mgまでに留めることが理想です。
さらに、子どもが飲むものにも注意を払う必要があります。子どもはカフェインに対する感受性が高いため、エナジードリンクやコーヒーなど、カフェインが含まれた飲料は健康に悪影響を与えることがあります。子どもの飲み物をしっかりチェックし、カフェイン含有量の少ないものを選ぶことが大切です。特に低年齢ではカフェインの摂取量を最小限にし、4歳以下の子どもには与えないことが望ましいとされています。
カフェインと睡眠・疲労回復の関係
カフェインは眠気を抑える効果があるため、仕事中や勉強中に摂取する人が多いです。しかし、この覚醒効果は一時的なものであり、長期的に見ると睡眠の質を低下させることがあります。
カフェインを摂取した場合、体内には8時間以上にわたって効果が持続するとされています。これが夜間の睡眠に影響を与え、深い眠りに入るのを妨げる原因となる可能性があります。睡眠不足は、疲労回復を難しくし、翌日の日中のパフォーマンス低下につながります。具体的には、一定量を超えるカフェインの摂取は入眠潜時を延長させ、睡眠効率の低下につながります。つまり、寝つきが悪くベッドに入っても眠れない状態となるおそれがあります。また、カフェインの覚醒効果は摂取量や個人によって異なりますが、一般的には摂取後30分~2時間程度でピークに達するとされています。そのため、就寝前8時間以内の摂取は控えることが望ましいとされています。
例えば、22時に就寝する方は、14時以降のカフェイン摂取を控えることが望ましいです。睡眠の質を向上させ、疲労回復を促進するためには、摂取する時間や量を意識することが大切です。
致死量はどのくらい?
致死量については、個人差が非常に大きく一概には言えませんが、一般的には5,000mg〜10,000mg(5g〜10g)と言われています。
例として、通常1杯のコーヒーに含まれるカフェインは、60mg。おおまかにですが、エナジードリンクには1本80mg、眠気覚まし用飲料1本120mgのカフェインが含まれています。この場合、 重篤な副作用が出る5gを摂取するためには、1日あたりコーヒーは84杯、エナジードリンクは63本、眠気覚ましドリンク剤は42本飲まなくてはならない計算になります
現実的に考えると、1度に摂取することは難しいです。それでも中毒症状が出て死に至るまでのケースがあるのですが、それはカフェインを含んだ錠剤を服用した場合です。
いつでも手軽に飲めてカフェインを摂取でき、エナジードリンクなどの飲料と違って一気に大量服用しやすいため、気をつけないと短期間に過剰に摂取し、中毒症状を引き起こすおそれがあります。
また、中毒死した例では、市販のカフェイン錠を多量に内服していたケースが報告されています。 こうした錠剤と合わせて、コーヒーなどのカフェインを同時に摂取することも危険ですので注意しましょう。

過剰摂取時のセルフチェックと対処法
カフェインは適量の範囲で日常的に用いられることがありますが、過剰摂取は様々な問題を引き起こします。そこで、ここからは過剰摂取時のセルフチェック方法と対処法について詳しく説明します。
まず、以下の症状に気付いた場合はカフェインの過剰摂取の可能性を考慮してください。例えば、異常な興奮、心拍数の急増、手足の震え、吐き気、過度の不安感などです。特に、これらの症状が複数同時にあらわれた場合は、速やかに対応することが重要です。
【緊急性の高い危険なサイン(レッドフラグ)】
けいれん、意識の混濁、呼吸困難、胸の激しい痛みなどがみられる場合は、命に関わる危険な状態です。ためらわずに救急車を呼び、周囲の人に助けを求めてください。
次に、過剰摂取時の対処法についてです。カフェインの過剰摂取が疑われ、なおかつ症状が強い、日常生活に影響が出る場合は医療機関へ速やかに相談してください。カフェイン中毒は命に関わることもあるため、適切な対応が必要です。まずは、かかりつけ医や内科、精神科に相談しましょう。緊急の場合は、救急外来を受診してください。
予防のためには、日頃からカフェインの摂取量を意識し、カフェインを多く含む商品を控えることが大切です。特に市販のエナジードリンクやコーヒーなど、カフェイン含有量が多い飲料の過剰摂取には注意が必要です。適度な摂取を心掛け、健康的な生活を送りましょう。
カフェインとのつき合い方

カフェインを摂取することによって元気が出て、仕事や勉強の能率が上がったように感じることがあるかもしれません。
しかし、これはカフェインが神経に作用して覚醒しているだけです。カフェインが代謝されて身体から抜けると、元気や気分は摂取前よりも低下し、虚脱感を覚えてしまうこともあります。
この虚脱感に対応しようとカフェインを何度も摂取してしまうと体調を崩し、健康生活に支障が出てしまう可能性があります。
そうならないためにも、ご自身の適切なカフェインの摂取量を把握する必要があります。
また、コーヒーが好きだけれどもカフェイン中毒が怖いと思っている方は、 カフェイン含有量が少ないカフェインレスの飲料や食物、あるいはカフェインを取り除いた飲料や食物をとることがおすすめです。カフェインを含まない状態にしたデカフェなども有効活用し、 健康な生活が送れるようにしていきましょう。
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