認知症の中核症状とBPSDの違いとは?家族が知っておきたい対応ポイント

2026/03/02
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「最近、母の様子がおかしい」「物忘れが多いけどこれって認知症?」。 高齢者を介護するご家庭で、このように悩んでいる方は多いのではないでしょうか。 認知症による記憶障害や見当識障害は「中核症状」と呼ばれています。

本記事は、中核症状の種類やそれに伴ってあらわれる「行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」への対策などについて解説します。 状況に応じた対応や介護のヒントが得られる内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次

認知症の中核症状とは

 

認知症の症状は、「中核症状」と「BPSD」に大きく分けられます。

中核症状は、加齢変化や病気による脳の変化(神経細胞の変性・脱落など)によって起こる症状とされています。

一方、BPSDは中核症状に伴って引き起こされる二次的な症状とされています。

中核症状とBPSDの違い

記憶障害や見当識障害 resilience 中核症状は、脳の神経細胞の障害によってあらわれると言われています。

一方のBPSDは、中核症状に本人の性格や心理状況、環境などの要因が影響して起こる症状です。

出典:認知症を理解する|厚生労働省

中核症状とBPSDの違いは以下のとおりです。

  中核症状 BPSD(行動・心理症状)
原因 脳の障害そのものによって起こる 中核症状に、環境やストレス、本人の性格など複数の要因が関与する
現れ方 脳の障害部位によって症状が異なる 周囲の環境や対応などによって症状が異なる
対処法 内服薬で症状の進行を抑える 環境の調整や対応によって症状が改善する可能性がある

BPSDは、環境の調整や介護者の対応によって症状が落ち着くケースがあります。

こうした違いを知っておくことで、適切なケアや対応がしやすくなり、家族の不安の軽減につながるでしょう。

認知症の原因については、以下の記事をご覧ください。

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中核症状の種類と特徴

 

ここからは、代表的な中核症状について解説します。

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 理解力や判断力の低下
  • 実行機能障害
  • 言語や動作の障害(失語・失行・失認)

 

それぞれ、見ていきましょう。

記憶障害

認知症による記憶障害は、初期から短期記憶の低下が目立つと言われています。

最近の出来事や会話を忘れてしまい、何度も同じ話を聞いたり、質問したりすることがあります。症状の例は以下の通りです。

  • 食事をとったことを忘れてしまう
  • 直近で話した内容を繰り返し尋ねる
  • 身近なものの置き場所を思い出せずに探し回る

 

このような症状は、本人の混乱だけでなく、家族や介護者の負担になることもあります。

対応には、「ただの年齢による物忘れなのか」「認知症による記憶障害なのか」の見極めも大切です。

そちらは、以下の記事で詳しく解説しています。

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見当識障害

見当識障害は、時間や場所、人に関する認識能力が低下する状態です。

一般的に、時間の認識が難しくなることからはじまり、場所の感覚が薄れていくとされています。

最終的に人物の認識に影響が出て、身近な家族の名前や顔がわからなくなります。症状の例は以下の通りです。

  • トイレの場所がわからない
  • 外出先で帰り道がわからない
  • カレンダーの日付や曜日がわからない
  • 行き先や目的をすぐに忘れてしまい混乱することがある
  • 家族の名前がわからずごまかすように会話している

 

こうした症状があっても、周囲の環境や声かけの工夫により、安心して生活を続けられる場合があります。

対応については、こちらの記事もご覧ください。

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理解力や判断力の低下

認知症による理解力や判断力の低下とは、周囲の出来事や説明が正しく伝わりにくくなり、簡単な選択や意思決定に困難が生じる状態とされています。

症状の例は以下の通りです。

  • 長い説明が理解できなくなった
  • 2つ以上の出来事の優先順位が判断できない
  • 簡単な手続きや貯金の出し入れができなくなった

 

このようなケースは、家族や周囲の方がしっかり見守り、不安や混乱を和らげる配慮が重要です。

実行機能障害

実行機能障害とは、手順を立てて物事を進める力が低下した状態です。

頭の中で計画を立てて順番に作業することが難しくなり、複数のステップが必要な行動に支障が出ます。症状の例は以下の通りです。

  • 掃除の段取りが組めなくなった
  • 食材は揃っているのに火を使う手順がわからない
  • 外出の準備ができずに服装や持ち物が不十分になった

 

家族や介護者は、こうした困りごとに気づき、一つひとつ確認しながら進める工夫が大切です。

言語や動作の障害(失語・失行・失認)

言語や動作に関わる中核症状には、失語、失行、失認があります。

失語は言葉が出てこなくなる症状で、話しかけても適切な言葉で返答できなくなることがあります。

失行は、パターンや順序を覚える必要がある作業を行う能力が失われる状態です。例えば、はさみの使い方を忘れたり、歯みがきができなくなったりします。

失認は、物の名前や用途、人の顔、音などを正しく認識できない状態です。

電話やテレビの操作方法がわからなくなったり、洗濯物のたたみ方がわからなくなったりする症状がみられることがあります。

こうした生活への支障によって、本人が自信を損なうことがあります。家族や介護者は、優しい声かけと根気強いサポートが重要です。

認知症による失語については、こちらの記事でも解説しています。

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中核症状が生活・介護へ及ぼす影響

 

中核症状が進ると、日常生活の中で様々な困難が生じます。

本人は身の回りのことがうまくできなくなり、不安や混乱からストレスを感じることも増えるでしょう。

家族は、食事や排泄の介助、金銭管理のトラブル対応など、日々の世話で負担や心労を感じる場面が多くなります。声かけやコミュニケーションが難しくなり、対応に迷うケースも出てくるでしょう。

こうした負担を軽減するためには、周囲の支援を受けたり、介護サービスを利用したりするなど、無理のないケア体制をつくることが重要です。

中核症状への具体的な対策と接し方

 

認知症の症状による生活の困りごとは、日常の接し方や環境の工夫により緩和できる可能性があります. 具体例は以下のとおりです。

症状 対応例
日付や時間がわからない

・わかりやすい場所に大きな時計を設置する

・予定を大きく書いたカレンダーを設置する

場所がわからない

・部屋に目印を設置する

・トイレにわかりやすい貼り紙を貼っておく

・迷ったときに備えてGPS機能付きのスマートフォンやキーホルダー型見守り端末を持たせる

人がわからない

・本人が思う人物になり切って接する

・最初に「〇〇だよ」と名乗って接する

最近の出来事を覚えられない

・不安な気持ちを理解して、失敗しても怒らない

・本人ができることを見極めて、できない部分はさりげなく支える

 

接するときは、本人のペースを尊重しながらゆっくり話して、何度も安心できるように声をかけましょう。また、困ったときは1人で抱え込まず、医療機関や介護サービスを活用することも大切です。

認知症の対応や予防については、こちらの記事をご覧ください。

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BPSDとの向き合い方──安心をつくるケアが何よりの支えに

 

BPSDは、認知症による中核症状に、本人の性格や素質、周囲の環境や心理状況などが影響してあらわれる症状です。例えば、以下が挙げられます。

  • 怒り
  • 徘徊
  • 被害妄想
  • 暴言や暴力
  • 不安の訴え

 

これらの症状は、否定したり訂正したりして、むやみに押さえ込むのではなく、本人に共感して安心感を与えるように関わることが大切です。

また、環境を調整するなど、本人が安心して生活できるような工夫も重要です。

具体的には、「電球は暖色の温かみのある光にする」「刺激となる音は避ける」「使い慣れた家具を配置して安心できる空間にする」などが挙げられます。危険がなければ本人の思いや行動の背景にできるだけ寄り添い、見守りましょう。

家族だけで抱え込まず、公共のサービスや周囲の協力を上手に活用するのもポイントです。

家族や介護者が取るべき対応と相談先

 

認知症の症状に気づいたら、まずは専門の医療機関を受診することが大切です。

その際、具体的な症状や日々の変化、困りごとをメモに残しておくと、医師への相談がスムーズになります。

以下は、専門の医療機関を含めた認知症の相談窓口です。

窓口 概要
地域包括支援センター 市町村に設置されており、専門家による介護の相談窓口となる機関です。
物忘れ外来/認知症外来 加齢による物忘れなのか、認知症など病気による物忘れなのかを診断し、早期発見、早期治療につなげるための専門外来です。
民生委員 厚生労働大臣から委嘱されて活動している地域の相談役です。地域住民の立場に立ち、生活上の困りごとに対応しながら福祉の向上に努めています。

「これって認知症?」「どうしたらいいのかわからない」など、判断に困った時はこれらの相談窓口を利用しましょう。

まとめ:認知症の中核症状に対する理解と適切な対応

 

認知症の症状を知ることは、本人や家族の心理的な不安や、介護の負担軽減につながります。

認知症の方を介護するにあたっては、公的な支援を活用することが重要です。必要に応じて専門の医療機関や介護保険など制度を頼りながら、安心できる環境づくりを行いましょう。

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編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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監修医 大竹 誠 (おおたけ・まこと)
横浜市立大学 脳神経外科 医局長、救急科 助教
・日本救急医学会専門医
・日本脳神経外科学会専門医・指導医
・日本脳神経外傷学会専門医・指導医
・日本脳卒中学会専門医・指導医
・日本認知症学会専門医・指導医
・日本脳ドック学会認定医
・日本がん治療認定医機構がん治療認定医
・日本医師会認定産業医
・臨床研修指導医
2007年 東北大学医学部医学科卒業
横浜市立大学大学院医学研究科で博士号取得
救急医療、脳神経外傷、認知症を専門とし、脳卒中・頭部外傷の急性期治療から慢性期の認知機能評価まで幅広く対応しています。ドイツ(チュービンゲン大学 統合神経科学センター)・米国(サウスカロライナ医科大学)での研究経験を活かし、臨床・教育・研究のバランスを重視した医療の実践に努めています。