脳卒中で要介護になると時間・費用はどのくらいかかる? 逸失収入にも注意!

2022/05/11
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脳梗塞やくも膜下出血など、体に障害を残すことが多いとされる脳卒中を発症すると、どのくらいの費用がかかるのかご存知ですか? 脳卒中はがんなどよりも入院日数が増えることが多く、かかる費用も高額になりがちです。この記事の中では実際に介護を体験された方の統計から得られた情報をご紹介いたします。
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目次

脳卒中は発症させないことが重要

脳梗塞やくも膜下出血などの脳卒中が発症すると、介護が必要となる障害が残ってしまったり、最悪の場合には死亡に至ったりするケースもあります。
発症した方のうち、障害が残る方が3人に1人程度、死亡する方も3人に1人程度といわれています。つまり、脳卒中を発症した後に以前のように仕事やプライベートを過ごせる方は3人に1人程度に過ぎないということです。

脳卒中のリスクについては以下の記事をご覧ください。

日本における脳卒中の死亡者数・死亡率は? 40~64歳で介護が必要となる方の半数は脳卒中が原因

脳出血や脳梗塞のような脳血管疾患は、日本人の死因の上位にランクインしています。ところで、脳卒中で亡くなる方は年間でどれくらいいるのでしょうか。今回は脳卒中の患者数や死亡率、後遺症などを詳しく紹介します。脳卒中を予防するための方法もあわせて紹介しているので、こちらも参考にしてみてください。

介護にかかる期間はどのくらい?

では、実際に脳卒中の発症によって要介護になった方をサポートするために、介護者はどの程度の費用と時間をかけているのでしょうか?

実際に介護の経験のある190人の方にアンケートを取ったところ、介護が続いた期間については「1年以上5年未満(43.5%)」と回答した方が最多で、次点は「1年未満(20.9%)」でした。特筆すべきは、全体の3割以上が5年以上の介護を行っている点でしょう。


では次に、実際に介護をされていた方が、1日にどのくらいの時間を介護にあてていたかを見てみましょう。

結果としては、「3時間未満(44.0%)」「3時間以上6時間未満(25.7%)」が多い結果になりました。
こちらの結果では、6時間以上の介護を行っていた方が3割以上みられ、中には15時間以上と回答された方も全体の1割程度いました。

ニュースでも介護疲れがよく取り上げられています。
今回のアンケートでも、実際に長時間の介護を経験されている方が多くみられました。

介護にかかる費用はどのくらい?

では、次に介護にかかる費用面についてのアンケート結果を見ていきましょう。

かかる費用としては「100〜300万円未満(32.5%)」が最多でした。
続いて「100万円未満(25.7%)」となっています。
しかし無視できないのは、300万円以上の費用がかかっている方が全体の4割にのぼることです。

脳卒中の入院でかかる費用は?

脳卒中の初期には入院費がかかりますが、こちらは介護にかかる費用とは別に必要となります。脳卒中で入院する場合には、がんなどよりも入院日数が長期化することが多いため、入院費も高額になります。

表1 生活習慣病と合併症
疾患名 入院費用 推定自己負担額
(3割負担)
胃がん 916,914円 275,074円
気管支・肺がん 853,115円 255,934円
脳梗塞 1,738,537円 521,561円
脳出血 2,449,730円 734,919円

※ 公益社団法人全日本病院協会「医療費」重症度別2020年10-12月分をもとに作成

脳卒中の入院費ががんなどの疾患の入院費より高くなる理由には、脳卒中ではリハビリで身体の機能の回復を目指すプロセスが必要とされることが関係していると言われています。
リハビリ期間が長くなると入院日数が増え、結果として負担額が増える傾向があるとされています。

また退院してからも、障害が残った場合には引き続きのリハビリも必要となります。
なお、表1の金額には病院までの交通費、外食費、タオルや着替えなどの費用といった入院に伴う細かい費用や、退院後に自宅で必要となる設備費などは含まれていません。
これらを考慮すると、負担額がさらに増えることが予想できます。

2025年以降は医療費が上昇?

日本の医療費は国民皆保険制度に支えられており、治療や薬にかかる自己負担額は抑えやすくなっています。
しかしながら、2025年には団塊の世代(1947~49年生まれの方)が後期高齢者になるため、医療費が急激に上昇するのではと予想されています。

この場合、表1の自己負担額よりも、さらに支出額が増えることが懸念されているのです。

医療保険や会社の制度で備える方法

安心して病気やけがの治療を受けるためには、医療保険や会社の制度を活用することが大切です。

医療保険(民間)を活用する

医療保険は、病気やけがで治療が必要となった際に費用をカバーする保険です。

入院費や手術費などが補償されるため、脳梗塞やくも膜下出血などの重大な病気に対しても、安心して治療を受けられます。

また、がんや脳卒中、心疾患など、特定の疾患に特化した保険もあります。自分の健康状態やリスクに合った保険を選びましょう。

会社の制度を活用する

会社が福利厚生の一環として、病気を予防する制度や、仕事と治療の両立を支援する制度を設けている場合もあります。制度の例は以下の通りです。

脳卒中の発症と業務の関連が認められた場合、労働災害として保険給付が受けられるケースもあります。

  • 人間ドックを受けやすくするための費用補助制度
  • 出社時間をずらすための時差出勤制度
  • 治療を受けやすくするための在宅勤務制度

また、業務外の理由であっても、条件によっては傷病手当が支給されることがあります。詳細は、加入している保険団体によって異なるため、会社の担当者に確認しましょう。

労働災害に関する基準については以下の記事をご覧ください。

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入院する際に逸失収入がある場合も

家計は「収入」と「支出」からなりますが、大きな病気で入院してしまうと「収入」が途絶えてしまいます。
こうした逸してしまった収入のことを、「逸失収入」と呼びます。

会社の福利厚生がしっかりしている方や、保険に入ることでリスクに備えている方もいるかもしれませんが、脳卒中のように入院から退院まで日数がかかる病気には、立場によっては支出が大幅に増えて収入が大幅に減る(もしくは途絶える)リスクがあります。

とくにフリーランス・自営業の方は、保障の制度がまだ行き届いていないことが多いです。
公益財団法人生命保険文化センターが実施した「 生活保障に関する調査」においては「全体の約2割の方には逸失収入がある」という結果が出ています。

病気による収入の変化については以下の記事をご覧ください。

がんや脳卒中を発症したあと収入は変化した? 1000名以上にアンケートを実施

今回は三大疾患を発症された方にアンケートを行いました。心理的なショックや、費用面、また発症する前にしておきたかったことについても教えていただきました。

自分が介護者になることを想定していない方が3割

実際に介護を体験された方は、自分が介護者になる前にどの程度の費用と期間を想定していたのでしょうか?
実際に介護者としての経験がある1,024人にアンケートを取り、集計をまとめました。

結果としては「1年以上5年未満(31.3%)」が最も多くなりました。自身が介護者となることを「全く想定していなかった」と回答をした方も29.5%と多い結果になりました。

また費用面でも「全く想定していなかった(30.9%)」を選んだ方が多く、「100万円未満(19.0%)」と少額を見込んでいた方も多い結果になりました。

この結果から、自分が介護者になることを想定していない方が多いことがわかります。

「なんとなく不安」な人こそ医療費のシミュレーションを

脳卒中やくも膜下出血など重大な病気では、入院日数が長くなることが多く、予想以上に費用がかかることがあります。

このような病気に備えるためには日頃から医療費について調査し、シミュレーションしておくことが大切です。

例えば、インターネット上には無料で使用できる医療費シミュレーターがあります。これらを活用すると、入院費用、治療費用、リハビリ費用などを細かく試算でき、適切な対策を立てやすくなります。

金融機関や保険会社と連携し、想定される費用に対してどのように準備するかを計画しておくことで、万が一の時も安心して治療を受けられるでしょう。

アンケートのまとめ

今回のアンケート集計から、以下のことがわかりました。

脳卒中を避けるためにできることは?

脳卒中を避けるためには、定期的に自分の脳の状態をチェックすることが大切です。
脳ドックでは脳の状態を詳しく確認できるため、脳卒中の予防に役立てることができます。

「突然脳卒中になり、仕事やプライベートに支障が起きるのはいやだ」
「家族に脳卒中になってほしくない」

と考え、脳ドックの受診を検討される方も多いようです。
何も想定していないままでいるよりも、リスク管理を始めることが将来に役立つでしょう。

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今回は、メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニックの知久正明先生にお話を伺いました。
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