下腹部の痛みの原因を徹底解説|症状別に考えられる病気と診療科の選び方
下腹部の痛みは、消化器系や婦人科系、泌尿器系など様々な原因が考えられるため、適切な医療機関を受診するためには、痛みの種類や部位、持続時間など正確な情報が必要です。
この記事では、下腹部痛の原因と特徴、診療科の選び方や受診の目安、医療機関で行われる検査について詳しく解説します。この記事を参考に、適切な医療機関での早めの受診につなげましょう。
下腹部の痛みとは? 知っておきたい基礎知識
下腹部の痛みは多くの人が経験し得る一般的な症状ですが、その原因や性質は多岐にわたり、症状の背後には様々な疾患が隠れているため、下腹部の痛みについての基礎知識を理解することが重要です。
下腹部の痛みは便秘や下痢、月経痛などの軽度なものから、消化器疾患や婦人科疾患、尿路疾患などの疾患によっても起きます。
痛みの部位や性質によって考えられる原因は異なり、例えば右下腹部の痛みは虫垂炎、左下腹部の痛みは大腸憩室炎(けいしつえん)などが考えられます。
痛みの性質も鋭いものや鈍いもの、持続性のあるものなど様々です。
また、痛みの持続時間や伴う症状(発熱、嘔吐、出血など)も、疾患の特定に役立つ手がかりとなります。
以下では痛みのある部位や、痛みの特徴を解説するので、参考にしてください。
早急に受診が必要な症状とそうでない症状を区別するための基礎知識を身につけておくと、あせらずに対応することができるでしょう。
痛みの部位や性質から考えられる原因
下腹部の痛みは部位や性質によって、その原因が大きく異なります。痛みの位置が腹部の右側か左側、または全体であるか、痛みの性質が鋭いか鈍いかによって、考えられる疾患が変わってきます。以下では痛みの部位と性質ごとに、考えられる原因を解説します。
右下腹部の痛み
右下腹部の痛みは以下の通り、虫垂炎や腸管の疾患が原因として考えられます。
疾患 |
原因 |
痛みの特徴 |
痛み以外の症状 |
虫垂炎 |
虫垂の細菌感染 |
心窩部(しんかぶ)から始まり徐々に増す持続的な痛み |
発熱や吐き気 |
大腸憩室炎 |
大腸にできた袋(憩室)の細菌感染 |
軽めの痛みが持続 |
発熱や血便 |
卵巣嚢腫 |
不明の場合が多い |
悪化すると強い |
ほとんど無症状 |
尿管結石 |
尿路の感染 |
鋭い痛み |
血尿や発熱 |
それぞれ痛みの特徴が異なり、尿路結石の疝痛発作(せんつうほっさ)のように突然激しい痛みに襲われる腹痛もありますが、軽めの痛みが持続するなど、わかりにくい症状の疾患も多々あります。そのため、症状が続く場合には、早めの医療機関での受診が推奨されます。
左下腹部の痛み
左下腹部の痛みは以下の通り、大腸や婦人科系に関連する疾患が原因であることが多いです。これらの疾患は「右下腹部の痛み」でも共通しているものもあるため、症状が持続する場合や強い痛みを感じる場合は、適切な診療科を受診することが重要です。
疾患 |
原因 |
痛みの特徴 |
痛み以外の症状 |
大腸憩室炎 |
大腸にできた袋(憩室)の細菌感染 |
徐々に増す持続的な痛み |
発熱や血便 |
腸閉塞 |
腹部の手術後の癒着が多い |
急激な痛み徐々に強くなる |
便秘、お腹の張り |
卵巣嚢腫 |
不明の場合が多い |
悪化すると強い下腹部痛 |
ほとんど無症状 |
子宮内膜症 |
明らかな原因は不明 |
強い月経痛 |
腰痛 |
尿管結石 |
尿路の感染 |
鋭い痛み |
血尿や発熱 |
下腹部全体やおへそ周辺の痛み
下腹部全体やおへそ周辺の痛みには多くの原因が考えられます。病気まではいかなくとも、消化不良でお腹にガスが溜まり、腹部全体やおへそ周辺に痛みを感じる場合もあります。
また、以下で解説する疾患は、下腹部全体やおへそ周囲で痛みが起きやすい疾患です。
疾患 |
原因 |
痛みの特徴 |
痛み以外の症状 |
過敏性腸症候群 |
腸の働きがうまくいかないことによる |
排便前の痛み |
便秘または下痢 |
子宮内膜症 |
明らかな原因は不明 |
強い月経痛 |
腰痛 |
子宮筋腫 |
明らかな原因は不明 |
月経時の腹痛 |
過多月経 |
腹膜炎 |
胃や腸の穿孔(せんこう) |
突然のがまんできない痛み |
発熱 |
膀胱炎 |
膀胱の細菌感染 |
違和感程度の痛み |
頻尿や残尿感 |
下腹部やおへそ周辺の痛みを感じる疾患をいくつか解説しましたが、痛みを感じる部位には個人差があり、腹膜炎で左下腹部を感じる人もいます。
また、膀胱炎のように、常時痛みを感じないものの、排尿時痛や残尿感などの不快な症状のみが出現する人もいます。
このように、下腹部全体やおへそ周辺の痛みの原因は多数存在します。症状が続く場合や強い痛みを感じる場合は、医師の診察を受けることが重要です。
代表的な原因疾患と特徴
ここからは、下腹部の痛みに関連する消化器系や婦人科系の疾患、およびその他の原因について詳しく見ていきましょう。
消化器系の疾患
消化器系の疾患は、下腹部の痛みの主要な原因の1つです。代表的な疾患を紹介します。
- 急性虫垂炎
- 大腸憩室炎
- 胃十二指腸潰瘍(かいよう)
急性虫垂炎は、右下腹部に鋭い痛みがあらわれ、手術となるケースもあります。
大腸憩室炎は大腸の内壁に小さな嚢(袋)が形成され、そこに炎症が生じる疾患で、ときに下腹部に激しい痛みを伴います。
胃十二指腸潰瘍は主にみぞおち付近の上腹部に強い痛みを感じやすい疾患ですが、ときに腹部全体の痛みとして感じることもあります。
婦人科系の疾患(女性の場合)
女性の場合、下腹部の痛みは以下の通り、婦人科系疾患が原因であることが多いです。
- 子宮内膜症
- 卵巣嚢胞(のうほう)
- 月経困難症
子宮内膜症はときに強い痛みを伴い、強い生理痛や慢性的な下腹部痛が特徴です。
卵巣嚢胞は卵巣にできる良性の腫瘍で、腫瘍が大きくなって破裂や卵管の捻じれを伴う場合に鋭い痛みを引き起こします。
また、月経困難症も無視できません。これは月経中の痛みが強く、日常生活に支障をきたす症状を伴います。
月経困難症は子宮内膜症や子宮筋腫が原因であることもあるため、早期の診察と治療が望ましいです。
その他の疾患
消化器系・婦人科系以外でも、下腹部に痛みがあらわれる疾患があります。
- 尿管結石
- 腎盂腎炎(じんうじんえん)
尿管結石は腎臓から膀胱につながる、尿が流れる尿管に結石ができ、強い痛みを伴う疾患です。尿管の位置関係から、痛みは背中付近で感じる場合が多いようですが、ときに下腹部痛も伴います。
また、腎盂腎炎は尿管結石がひどくなった場合などに、腎臓が細菌に感染する疾患です。尿管結石と同じく背中付近に痛みを感じることが多いですが、殴られたような強い痛みが特徴です。悪寒・発熱を伴う場合が多く、早期の診断・治療が重要です。
医療機関で行われる主な検査
下腹部の痛みの原因を特定し、適切な治療を行うため、医療機関での検査は非常に重要です。
ここからは、代表的な検査方法とそれぞれの特徴について詳しく説明します。どのような検査が行われるのかを事前に知ることで診察や検査に対する不安を軽減し、スムーズな受診が可能になります。正確な診断を受けるために重要な検査について理解を深めていきましょう。
実施される検査 |
検査の内容 |
問診・視診・触診 |
・問診:痛みの部位や性質を詳しく確認 |
血液検査・尿検査 |
・炎症反応(白血球数やCRP)の値を確認 |
超音波検査 |
・超音波を使って臓器の内部を確認 |
内視鏡検査 |
・上部消化管内視鏡検査:胃カメラ |
これらの検査を組み合わせることで、医師は下腹部の痛みの原因を特定し、最適な治療方針が検討されます。
どの診療科に行くべき? 受診先の目安
下腹部の痛みが続く際に、「どの診療科を受診すべきだろうか」と悩む方ことも多いのではないでしょうか。
嘔吐や下痢を伴う痛みの場合には、消化器系の疾患が考えられるため、消化器内科の専門医を受診しましょう。女性で月経に伴う痛みを感じる場合には、婦人科の専門医がよいでしょう。
一般的な内科のクリニックを受診する方法もあります。自分の症状に最も関連する診療科を見極めることで、早期に適切な診断と治療を受けることができます。
すぐに受診すべき危険なサイン
下腹部痛は一時的な不調ではなく、重大な疾患のサインとなることもあります。
以下の症状は、特に注意が必要な危険なサインで、すぐに受診すべきです。
- 急激な激しい痛み
- 血便や黒色便
- 血尿
- 同じ部位の持続する痛み
急激な激しい痛みに突然襲われた場合は、虫垂炎や腸閉塞など、緊急の治療が必要な状態が考えられます。
また、発熱や嘔吐を伴う場合は感染や炎症が進行している可能性があり、早急な医療機関の受診が必要です。
血便や黒色便、尿中の血液も危険なサインです。特定の位置の痛みが続く場合や増強する場合はさらに注意が必要です。特に右下腹部の痛みは虫垂炎の可能性がありますし、左下腹部の痛みは憩室炎などの疾患が考えられます。
早期の受診が患者の健康状態を大きく左右するため、これらのサインを見逃さないことが大切です。痛みが持続したり悪化したりする場合はためらわずに専門医を受診しましょう。
まとめ|下腹部痛の原因を理解して、適切に対処しよう
下腹部の痛みは多くの原因と関連しており、症状によっては早急な医師の診察が必要な場合もあります。下腹部の痛みの原因や診療科の選び方、そしてどのような症状が危険であるかについて詳しく説明しましたが、これらの情報を活用して、適切な受診や対処につなげましょう。
特に婦人科系や消化器系、泌尿器系の疾患については、専門家の診断が不可欠です。
日常生活においても健康維持や疾病の早期発見のために、痛みの種類や部位に注意を払うことが重要です。痛みが持続する場合や他の異常を感じた場合は、無理をせず適切な医療機関での診断を受けましょう。
この記事があなたの健康に役立ち、健康的な生活をサポートできることを願っています。
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科目 内科・皮膚科・アレルギー科
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