痰が絡むのはどうして? 長期的な痰に悩まされる時は病院を受診しましょう
痰はなぜ出るの?
痰は口や鼻と肺をつなぐ気道から出る分泌物です。痰は気管にある細菌やウイルスなどの異物を排出するために分泌されます。
気管とはもっとも太い気道のことです。そして痰が分泌されているということは、身体の防御反応が細菌やウイルスに対して正常な働きをしているといえるでしょう。
細菌やウイルスを追い出すために重要になるのが、気道の表面にある繊毛です。繊毛は細かい毛のような形をしており、粘液がキャッチした異物を繊毛の働きによって押し出しています。
繊毛によって異物が押し出されることで痰が出るのです。
細菌やウイルスなどの異物がなくても、煙やほこりを吸い込めば咳や痰は出ます。
そのため、「痰が出る=風邪をひいている」というわけではありません。
ただし痰の量が多い場合は、身体が必死に細菌やウイルスを押し出そうとしていると考えられます。
痰が絡む理由
痰が絡むのは細菌やウイルスに感染していたり、汚れた空気やホコリを吸い込んだりしていることが原因です。
健康な状態でも痰は分泌されていますが、普段は粘性が少なくサラサラしています。
しかし身体に異物が侵入すると、それを押し出そうとするため粘り気が増して絡むようになるのです。繊毛の運動機能が低下して、痰を押し出しにくくなることも原因です。
痰の粘り気が強くなるほど排出できずに気道にたまってしまうと、のどにへばりついて絡む状態になってしまうこともあるでしょう。
また喫煙している方も痰が多くなる傾向にあります。タバコに含まれている有害物質を身体の外に出そうとするため、どうしても絡まりやすくなってしまうのです。
痰が絡む咳と乾いた咳はどう違う?
痰が絡む咳は、気道の粘膜表面に強い刺激や炎症が長く続いたことにより増えた痰を排出しようとするものです。このタイプの咳は、感染症、肺がん、喘息や鼻炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喫煙、肺がんなど、さまざまな原因によって引き起こされます。
一方で、乾いた咳は通常、気道の知覚神経が刺激される際に起こります。例えば、のどの炎症やアレルギー、咳喘息、ウイルス感染、特殊な状況下での物理的な刺激、精神的な要因などです。乾いた咳は気道を傷めることがあり、長期間続く場合は、医療機関への相談が推奨されます。
これらの違いを理解することで、正しい治療や緩和法を選ぶ手助けとなるでしょう。
痰はどんな病気のサイン?
痰が絡んでいるからといって、必ずしも何らかの病気を患っているというわけではありません。
多くは細菌やウイルスなどの感染症が原因です。しかし長期間にわたり症状が続く場合は、次のような病気の可能性も考えられます。
気管支喘息
気管や気管支に炎症が起こる疾患です。呼吸のしづらさや長引く痰がよく見られます。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
主に喫煙によって発症する疾患です。気管支に炎症が起き、数週間から数年以上続く咳が起こります。
気管支拡張症
気管支が拡張したまま戻らない病気です。拡張した部分に細菌やカビなどが繁殖して炎症を起こします。
肺結核
結核菌の感染により、痰や熱、咳などの症状が出る病気です。
肺がん
肺に発生するがんです。血が混ざった痰が出ることがあります。
誤嚥性肺炎
唾液や食べ物が食道ではなく気道に入ってしまうことで起こる肺炎です。
急性咽頭炎
細菌やウイルスに感染したり、声を使いすぎたりすることで発症します。
痰の色について
健康な方であれば、痰の色は無色透明でサラサラしています。しかし、細菌やウイルスに感染すると黄色や緑など色が変わることが特徴です。
濁った白・・・気管支炎、気管支喘息、ウイルス感染症
黄色・・・細菌やウイルスなどの感染症
緑、黄緑・・・緑膿菌による感染、蓄膿症
黒っぽい茶色、赤褐色・・・肺炎、肺結核、肺がん
鮮血が混ざった色・・・肺出血、強い炎症 など
緑色の痰が出るときは、細菌に感染している可能性が考えられます。
症状が長引く場合は抗生物質での治療が必要になるため、医療機関を受診しましょう。
また赤や茶色の痰が出るときも要注意です。
この場合は単なる風邪ではなく、何かしらの病気が潜んでいる可能性が高いと考えられます。
できるだけ早めに医療機関を受診して、治療を始めることが大切です。
痰が絡む咳を予防するには?
痰が絡む咳を防ぐためには、日常的な予防対策が大切です。まず、こまめな水分補給を心がけ、気道の粘膜を潤すことで痰が柔らかくなるため、排出しやすくなります。また、痰の予防に口腔内ケアも非常に重要な役割を果たします。口腔内の清潔さを保ち、唾液の分泌を促すことで、痰がこびりつくのを防ぎます。また、室内の湿度を適度に保つことも重要です。乾燥した空気は気道を刺激し、痰の絡みや咳の炎症を悪化させる原因となります。喫煙者は、禁煙をすることで気道の炎症リスクを減らせます。さらに、手洗いやうがいを習慣づけ、細菌やウイルスの感染を防ぐことも予防につながります。こうした基本的な生活習慣を見直すことが、痰や咳のトラブルを未然に防ぐポイントとなります。
痰が絡む時に緩和させる方法
どれだけ予防に努めていても、体調や環境によっては痰が絡む咳が出ることもあります。そんなときは、症状を悪化させないために、適切なケアを行うことが大切です。ここでは、痰が絡んだときに役立つ緩和方法をご紹介します。
痰が絡むとのどがイガイガしたり、違和感があったりしてつらいものです。
そのようなときは水分をたっぷり取って痰の粘度を低下させたり、部屋を加湿したりしてのどの乾燥を防ぎましょう。
それでも症状が改善しない場合は、医療機関を受診するようにしてください。
禁煙をすると一時的に痰がかえって増えることもありますが、これは禁煙によって肺の機能が向上したことが原因です。一時的なものなので心配はいりません。
痰が絡む時にしてはいけないこと
痰が絡むからといって、むりに痰切りをしたり咳を何度もしたりしていると、のどの粘膜を痛めてしまうことがあります。
無理やり痰を出そうとするのは控えるようにしましょう。
また、うがいのしすぎもよくありません。痰の絡まりが気になるときは水分を多めにとり、部屋を加湿したり去痰薬(痰を吐き出すのを容易にする薬剤)を服用したりしてみてください。
子どもや高齢者の痰が絡む咳への対応
子どもや高齢者が痰が絡む咳をするときには、特別な注意が必要です。それぞれの年齢層で対策や注意点が異なります。
まず、子どもの場合は、身体が未発達であるため、自身でしっかり痰を排出するのが難しいことがあります。そのため、排痰補助のためにこまめな水分補給が大切です。温かい飲み物やスープを摂取させると良いでしょう。また、部屋の湿度を適度に保つために加湿器を使用すると効果的です。さらに、蒸気吸入も有効な手段で、湯気を吸い込むことで痰の排出を促します。お湯を沸かして蒸気吸入を行う際は、必ず大人がそばについて見守りましょう。これらの対処法を行っても改善が見られない場合は、小児科医に相談することをおすすめします。
次に、高齢者の場合は、免疫力が低下していることが多く、痰が絡む咳が続く場合は、肺炎や肺がんなどの重篤な病気の可能性があります。高齢者も水分をこまめに補給することと、室内の湿度を保つことが、のどの乾燥を防ぐために有効です。それでも症状が改善しない場合や、発熱や呼吸困難などの他の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが必要です。高齢者の場合は痰の排出を促す目的で咳の回数を増やす薬が医療機関で処方されることもありますが、医師の指示に従い服用しましょう。
子どもや高齢者の痰が絡む咳へは、特定のケアが求められます。それぞれの年齢層に合わせた適切な対策をとることで、症状の改善を早められるでしょう。
長期的に痰が絡む場合は病院を受診しよう
痰は健康な方でも分泌されているものです。しかし、長く続く痰の場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。
一時的なものであれば、のどの炎症が取れるころには痰も落ち着いてくるので心配いりません。
しかし、痰が絡んで呼吸がしづらかったり、去痰薬を使っても症状が改善しなかったりする場合は医療機関を受診しましょう。また痰の色が緑や黄色、赤や茶色などの場合も治療が必要なことが多いです。
「たかが痰」と思わず、気になる症状があるときは早めに治療を始めるようにしてみてください。
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「胸部CT肺ドック」

科目 内科・皮膚科・アレルギー科
2023年に千代田区神田で「スキマ時間に通える」をコンセプトとして忙しい方のために空いたスキマ時間、昼休みや仕事終わり、休みの日にも通える内科・皮膚科・アレルギー科のクリニック「クリニックファーストエイド」を開設。