不正出血とは? 原因や受診の目安、治療方法まで解説

2025/07/01
0
予期しない出血があると不安になるものです。特に生理周期以外での出血や、妊娠中、更年期に見られる異常な出血は心配になります。不正出血の原因はホルモンの乱れやストレス、深刻な病気など多岐にわたります。そのため、正確な知識を持って早めに対処できるようにしておくと安心です。

この記事では、不正出血の基礎知識や原因をセルフチェックする方法、病院受診のタイミング、そして適切な治療方法について詳しく解説します。ご自身の健康管理のための参考にしてください。
目次

不正出血とは


不正出血とは、正常な月経周期以外に生じる出血のことです。正しくは「不正性器出血」と言います。月経周期はおおよそ25日から38日の間で個人差があり、正常な月経で出血が続く期間は3日から7日間程度です。この周期や期間以外での出血は不正出血として扱われます。

不正出血の原因としては、子宮や卵巣に問題が生じている可能性もありますが、生理的な不正出血の場合もあり、すべての不正出血が異常とは限りません。まずは専門医に相談すると良いでしょう。

また、不正出血では出血の量や色が、状態を判断する大切なポイントとなります。通常の月経よりも量が多かったり、反対に少なかったり、色が鮮やかな赤から茶色や黒に変わるなど、異常を感じた場合には注意が必要です。

不正出血は場合によっては重大な病気の兆候である可能性もあります。自身の健康状態を正しく知り、異常を感じたら早めに受診することが大切です。

不正出血の病気以外の原因とは?


不正出血の原因は様々です。ホルモンバランスの乱れやストレス、妊娠や流産の影響、卵巣や子宮の病気などが考えられます。まずは、病気以外の原因を詳しく説明します。

ホルモンバランスの乱れ

女性の身体はエストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンが、お互いのバランスを保ちながら、排卵や月経を起こします。しかし、思春期や更年期のようなホルモンバランスが乱れやすい年代では、2つのホルモンのバランスがうまく保てず、不正出血が起きることがあります。排卵が正常に行われず月経が来ない、月経が長引く、または短くなるなどの症状が出ます。

ストレス

ストレスはホルモンバランスを乱すため、不正出血の原因になることがあります。ストレスを感じ続けると、自律神経が乱れ、女性ホルモンの分泌が不安定になるからです。

妊娠や流産の影響

妊娠初期はホルモンバランスの変化が起きやすい時期ですが、妊娠中に必ずしも不正出血が起きるわけではありません。しかし、不正出血が起きる場合もあることは知っておきましょう。

また、流産になりそうな状態を指す切迫流産も、症状として出血や下腹部痛があります。いずれの場合も、妊娠の可能性があるときはすぐに受診しましょう。

不正出血の病気以外の原因とは?

不正出血の原因となる病気


不正出血の原因には、前述した病気以外のものもありますが、子宮の病気や感染症も原因となることがあります。この項目では子宮の病気と感染症について詳しく解説します。

子宮の病気

不正出血の原因として、子宮の病気が挙げられます。子宮に関係する病気には、以下の表の通り様々な種類があります。いずれの場合も、子宮頸がん検診を定期的に受ける、症状が出たら早めに受診することで、予防や早期発見につながります。

病気の名前 症状 病気の特徴

子宮体がん

  • 不正出血
  • 腹痛
  • 膿性のおりもの
  • 子宮内膜から発生するがん
  • 閉経後の女性に多い

子宮頸がん

  • 不正出血
  • 下腹部の痛み
  • 性交時の出血
  • 子宮の入り口の子宮頸部に発生するがん
  • HPV(ヒトパピローマウイルス)感染が主な原因
  • 子宮頸がん検診で早期発見が可能

子宮筋腫

  • 不正出血
  • 長引く月経
  • 強い月経痛
  • 子宮の筋層にできる良性腫瘍
  • 発生する部位や大きさで症状が異なる
  • 一般的には閉経とともに筋腫も縮小する

子宮内膜ポリープ

  • 不正出血
  • 長引く月経
  • 不妊
  • 子宮内膜に発生する良性の腫瘤
  • 大きさは数㎜から数㎝まで多岐にわたる
  • 大きくなると出血しやすい

子宮頸管ポリープ

  • 運動や性交などの刺激による出血
  • 子宮頸部に発生する良性の腫瘤
  • 弱い刺激でも出血しやすい

子宮内膜増殖症

  • 不正出血
  • 子宮内膜が異常に厚くなる病気
  • 女性ホルモンのエストロゲンが多く分泌されると子宮内膜が厚くなる
  • 子宮体がんのリスクも高くなる

子宮腟部びらん

  • 腟部の違和感
  • 不正出血
  • おりものの増加
  • 子宮の腟側が赤く見え、ただれたようになる
  • 組織がもろくなり炎症を起こしやすい

感染症や炎症

感染症や炎症も不正出血の原因の1つです。クラミジアや淋菌、トリコモナスなどの性感染症、普段腟付近に常在している菌への感染が挙げられます。症状は不正出血や腟部付近の不快感などです。

いずれの場合も、不正出血を伴う場合は放置せず、医療機関を受診して適切な検査と治療を受けることが大切です。

不正出血の特徴と受診すべきタイミング


不正出血は、通常の月経とは異なる出血で、女性にとっては非常に気になる症状です。この項目では不正出血の観察のポイントと特徴を解説します。受診のタイミングの参考にしてください。

出血量や色

不正出血の量や色には個人差があります。少量の薄い色の出血から多量の鮮血まで、それぞれ考えられる原因が異なります。

しかし、出血の量や色だけで病気の判別はできません。専門医の診察を受けなければ緊急度もわからないため、不正出血に気づいたら、まずは早めに婦人科を受診しましょう。

出血のタイミングや頻度

不正出血の特徴を把握するために、まずは不正出血のタイミングが月経周期に合ったものか、月経周期とは無関係かを考えます。月経周期に出血があった場合は卵胞ホルモンの減少によるもの、排卵期に出血があった場合は中間出血の可能性があります。これらは正常な範囲とみなされることが多いですが、月経周期に関係なく出血を繰り返す場合は、子宮や卵巣などの病気や、ストレスによるホルモンバランスの乱れが原因の可能性もあります。自己判断が難しい場合には、放置せず早めに受診すると良いでしょう。

受診の際に伝える情報

医師に不正出血の症状をなるべく正確に伝えることで、適切な診断と治療につながります。そのため、受診の際には出血が始まった時期と出血の量、色、腹痛などその他の症状を詳しく伝えることが大切です。

月経周期や普段の月経の状態(量や月経痛の有無など)、妊娠の有無、内服薬も伝えると診療の参考になります。

不正出血の検査方法


不正出血の原因を特定するために、いくつかの検査が行われます。血液検査や妊娠反応検査、おりもの検査、超音波検査、子宮頸がん・子宮体がん検査などがありますが、これらをすべて行うのではなく、医師が必要と判断したものを必要に応じて検査します。

血液検査

血液検査は、血液を採取し、ホルモンバランスの異常や感染症の有無を調べる検査です。特に、女性ホルモン値の測定は、不正出血がホルモンバランスの乱れによるものかを判断できます。

また、出血が多い場合は貧血の有無も確認できます。血液検査は身体の状態を総合的に判断できる、患者への負担も少ない方法です。

妊娠反応検査

妊娠反応検査は、尿や血液を用いて、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が存在するかを確認します。hCGが陽性であれば妊娠しているため、必要に応じて超音波検査などを追加で実施します。hCGが陽性であっても、超音波検査で子宮内に赤ちゃんの袋である胎嚢が確認されない場合は、子宮外妊娠の可能性が高くなります。このように、妊娠反応検査はいくつかの検査を組み合わせて行うことで正確な診断につながります。

おりもの検査

おりもの検査は腟から分泌されるおりものを採取し、感染症や炎症の有無を確認します。内診でおりものの異常が見られた場合や、外陰部に痛みやかゆみがある場合に実施されます。

超音波検査

超音波(エコー)検査は、子宮や卵巣を画像で確認するための検査方法です。内診ではわからない子宮内膜の厚さや卵巣の大きさを調べ、不正出血の原因の特定につなげます。超音波検査は腹部から行う経腹超音波検査と、腟内にプローブを挿入する経腟超音波検査の2種類がありますが、不正出血の原因を特定するためには、子宮や卵巣付近をより詳しく観察できる経腟超音波検査が用いられることが多いです。

子宮頸がん・子宮体がん検査

子宮頸がん・子宮体がん検査は、不正出血の原因ががんであることを調べるために非常に重要です。子宮頸がん検査では、子宮頸部から細胞を採取し、異常な細胞の有無を確認します。また、子宮頸がんの原因になる、ヒトパピローマウイルス(HPV)の検査を併せて行うこともあります。

子宮体がん検査では、子宮内膜から細胞を採取して調べます。検査のための器具を子宮内まで挿入する必要があるため、子宮頸がんの検査に比べると痛みを伴います。

自治体の助成が受けられる検診は、子宮頸がんに対する検診です。一部の自治体では、症状がある方やリスクが高い方に対して、子宮体がん検査を実施している場合もあります。

不正出血の検査方法

不正出血の治療方法


不正出血の治療方法は、原因や重症度により異なります。一部のケースでは薬物療法や手術療法が必要となる場合もあります。適切な治療を受けるためには、医師の診断とアドバイスが不可欠です。

薬物療法

月経不順による不正出血がある場合には、経口避妊薬(低用量ピル)が用いられる場合もあります。低用量ピルには女性ホルモンが含まれているため、ホルモンの変動を安定させる効果があります。

薬物療法は専門医が効果や副作用を観察し、薬の内容や量を調整しながら行います。自己判断での使用は避け、専門医の診断と指示に従いましょう。

手術療法

不正出血の原因が子宮筋腫や子宮内膜・子宮頸管ポリープの場合には、手術療法で病変を取り除く治療が行われる場合があります。

子宮筋腫の手術は、筋腫の大きさや位置に応じて、筋腫だけを取り除く筋腫摘出術、あるいは子宮そのものを取り除く子宮全摘術が選択されます。最近では、腹部に傷が残りにくい腹腔鏡を用いた手術も可能です。

子宮内膜・子宮頸管ポリープの場合は、鉗子と呼ばれるはさみのような器具を用いてポリープのみを切除するポリープ摘出術が行われます。

また、子宮頸がんや子宮体がん、卵巣腫瘍でも手術療法を行う場合があります。がんの場合には様々な治療法を組み合わせて治療を行いますが、子宮頸がんにはがんの病変付近のみを取り除く手術、子宮だけを取り除く手術、子宮と卵巣を取り除く手術など、様々な種類の手術があります。子宮体がんでは、子宮と卵巣を取り除く手術が一般的です。卵巣腫瘍では、良性でも腫瘍が大きい場合、また悪性腫瘍の場合に手術療法を行います。良性腫瘍の場合は、卵巣を残して腫瘍のみを取り除くこともありますが、悪性腫瘍の場合は卵巣そのものを取り除きます。

手術療法では病変を取り除くため、不正出血などの症状の改善が見込める可能性が高いです。しかし、手術に伴うリスクや副作用も考慮する必要があるため、医師への十分な相談が欠かせません。また、手術後の経過観察や、追加治療が必要な場合もあります。

不正出血を予防するための日常的なケア


現段階では、不正出血そのものを予防する方法として確立されたものはありません。

しかし、ストレスによるホルモンバランスの乱れで起きる不正出血の場合には、ホルモンバランスを整える生活習慣を取り入れることが大切です。

ホルモンバランスを整える生活習慣としては、栄養バランスの整った食事や適度な運動、十分な睡眠の確保が挙げられます。運動はヨガやウォーキングのような軽めのものを、睡眠は6~8時間の睡眠を心がけましょう。十分な睡眠の確保は、その他の病気のリスクも下げると言われています。そして、病気の早期発見のために、定期検診を受けることも大切です。検診を受けると結果をもとに、生活習慣の改善にも取り組めます。

まとめ:不正出血が続く場合は迷わず受診を


不正出血は、女性が大きな不安を感じる症状です。しかし、その原因や対処法を知っておけば冷静に対応できます。

不正出血が続く場合は、深刻な病気が隠れている可能性もあるため、放置しないことが大切です。婦人科を受診して専門医による診断と治療を受けることが、早期発見と治療の鍵になります。

この記事で解説した内容を参考に病気の予防や早期発見につとめ、自身の健康を保ちましょう。

記事についてお気づきの点がございましたら、
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
この記事をシェアする

気になる方は、即日予約・受診可能です。
30分での脳ドック検査「スマート脳ドック」

まずは空き枠を確認してみる
監修医 叶谷 愛弓 (かなたに・あゆみ)
東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科
助教、産婦人科専門医、医学博士

東京女子医科大学を卒業後、東京大学医学部 産科婦人科学講座に入局。
その後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東大病院など複数の病院にてハイリスク妊娠・分娩の管理、不妊治療、がん治療などを担当。
2024年、女性に寄り添った医療を提供したいという思いから、東京都目黒区にて「レディースクリニックなみなみ」を開院。

こちらもおすすめ