隠れ(かくれ)脳梗塞とは? 無症候性の脳梗塞が持つリスクや、日常生活でできる予防をご紹介!
脳梗塞の中には、症状が体に出ない「隠れ脳梗塞」(無症候性脳梗塞)と呼ばれるものがあります。この無症候性の脳梗塞は、果たしてリスクがまったくないものなのでしょうか? この隠れ脳梗塞が持つ、危険性などについて解説いたします。夏に注意! ラクナ梗塞とは? 初期症状、診断に必要な検査、治療法などについて
ラクナ梗塞とは?

ラクナ梗塞は、脳の太い血管から分岐している直径0.2~0.3mmほどの細い血管が詰まることで発生します。
血管が詰まると血流が流れなくなり、その先にある脳の組織(神経細胞)が死んでしまうため、機能が低下することになります。
ところが、梗塞の範囲が小さかったり、脳の高次機能がないところが詰まったりした場合は症状が出ないこともあり、これを無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)と呼びます。
とはいえ、血管が詰まるということは、血管に何らかの損傷があるということ。
無症状であったとしても安心はできません。
実際、ラクナ梗塞が初めて発症した際に速やかに治療すれば予後は良好であることが一般的ですが、本人が発症に気づかないことや、予防が不十分であることも多いため、再発しやすいことが知られています。
また、ラクナ梗塞は再発するたびに血管や組織が弱くなってしまうため、再発を繰り返すうちに身体に障害が生じたり、認知機能が低下したりし、麻痺、嚥下(えんげ)障害、言語障害などがあらわれる恐れがあります。
無症状の脳梗塞については、こちらの記事もご覧ください。
ラクナ梗塞の症状と早期発見の可能性
ラクナ梗塞は、梗塞が生じる部位によって症状が異なってきます。
梗塞が起こりやすい部位は明らかになっているので、代表的な症状をご紹介します。
- 脳梗塞を起こした側と反対側の顔を含めた半身の麻痺(運動障害、感覚障害)
- 話しにくくなる
- しびれが出る
- 手の細かい動作が難しくなる
などが、よく見られる症状です。
ちなみにラクナ梗塞では、「意識」を司っている脳の表面に巡る血管ではなく、脳の深部の血管が詰まるため、意識障害に至ることは稀です。
もし、上記のような症状が24時間以内に自然に消失した場合には、「一過性脳虚血発作(TIA)」の可能性があります。実際の診断は、画像検査なども含めて医師が総合的に判断します。
一時的でも血管の詰まりがあったということは、どこかが損傷している可能性があり、放置すると悪化する可能性もあるので、症状があった場合はすぐに医師の診断を受けましょう。
また、無症候性のラクナ梗塞を持っている場合も考えられるため、定期的な血液検査や脳ドックを受けることが、早期発見に役立つ場合があります。検査の内容や頻度については、医師と相談しながら決めましょう。
その他の脳梗塞
他にも、脳梗塞には「アテローム血栓性脳梗塞」や「心原性脳塞栓症」というものもあります。
アテローム血栓性脳梗塞とは? 原因や検査方法、治療方法についても解説!
アテローム血栓性脳梗塞は太い血管に血栓ができて詰まるもの、心原性脳塞栓症は心臓でできた血栓が詰まるものです。どちらも似たようなメカニズムで起こりますが、アテローム血栓性脳梗塞は動脈硬化、心原性脳塞栓症は心房細動や心筋症などが原因になります。今回は原因や治療方法、必要な検査や予防方法などを詳しく紹介いたします。
ラクナ梗塞発症の原因

ラクナ梗塞は、血管が損傷することで起こる動脈硬化が原因ですが、動脈硬化には三大危険因子と呼ばれるものがあります。
- 高血圧
- 脂質異常症(高脂血症)
- 糖尿病
さらにこれらを悪化させる生活習慣として「喫煙」「過剰な飲酒」「運動不足」「肥満」などがあります。
これらの習慣は心臓の血管に負担をかけるため、心疾患を引き起こす可能性もあります。
上記の三大危険因子の中でも、とりわけ原因になっているのは「高血圧」です。
普段から血圧管理を行うことは、ラクナ梗塞だけでなく他の脳卒中の予防にもなります。
血管の損傷は、若い方でも、多少なりとも起こっていますが、修復が効くため、症状にあらわれにくいとされています。
それが悪化し表面化してくるのが中年期から高齢期にかけての頃で、発病率が高くなっているのです。
「若いから安心」とは思わず、早めに注意をしていきましょう。
高血圧や、脂質異常症については、こちらの記事もご覧ください。
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生活習慣病とラクナ梗塞のリスク関係
ラクナ梗塞は、脳内の細い血管が詰まることで起こる脳梗塞です。
高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は、脳の細い血管を傷つけ、動脈硬化につながる恐れがあります。
血管が狭くなったり血管壁がもろくなったりすることで、ラクナ梗塞のリスクが高まります。
血管の健康を維持するためには、バランスのとれた食事、定期的な運動、禁煙などが重要です。
定期的な健康診断で血圧や血糖値、コレステロールを管理し、医師の指導のもとで適切な治療や予防策を行いましょう。
血管の健康維持については、以下の記事をご覧ください。
内部リンク:内臓脂肪を落とすにはどうする?超悪玉コレステロールが動脈硬化を起こす仕組みも解説
ラクナ梗塞の診断に必要な検査
ほとんどのラクナ梗塞はMRI画像の検査結果で診断できます。
発症を早期に発見したい場合は、脳MRI検査で「拡散強調画像」という特殊な撮影方法を用います(MRIには、撮像条件ごとにADC、FLAIR、FISPなど様々な設定があります)。CT画像や他の条件で撮像されたMRI画像では、発症6時間以内の脳梗塞を見つけることが難しいためです。
拡散強調画像とFLAIR画像というものを組み合わせて、ラクナ梗塞の中から比較的最近発症したものを区別することも可能です。
近年では、ラクナ梗塞があると、脳内で微小出血が起きている頻度も高いとわかっています。微小出血を見つけるのが得意な「T2*(読み:ティーツースター)強調画像」も使われます。
また、他の脳卒中と区別をするためにCTやMRAで脳血管の検査を行ったり、脳梗塞の種類を決定するために頸動脈エコー、経胸壁心臓超音波、心電図などを行ったりすることもあります。
▽以下の記事の中でも撮像条件などについて説明しています
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ラクナ梗塞の治療方法
ラクナ梗塞を治療し、再発を予防する方法として最も効果的なのは、高血圧の状態を改善することです。
血液の固まりができるのを抑える薬(抗血小板薬や抗凝固薬)の内服や点滴を行うこともあります。
また、脳細胞が傷つくのを抑えることを目的とした薬、いわゆる脳保護薬が投与されることもあります。
血管が損傷した場合、「血小板」や「凝固因子」などが集まり修復されていきます。
損傷が大きい場合には大きな血栓となり、それ自体が血管を塞いでしまう脳血栓塞栓症が発症することがあります。その働きを抑制することで血栓ができにくくなるようにする目的で用いられるのが、抗血小板薬です。
また、梗塞を起こした部分の細胞は数時間で壊死してしまいます。
周辺の細胞は浮腫(むくみ)を起こして脳を圧排するため、麻痺などの症状が出ることがありますが、浮腫が引くと回復する可能性があるため、その細胞を守るために「脳保護療法」を行うことがあります。
他にも、条件付きで可能な治療法があります。
それは血栓溶解療法(t-PA)というものです。できた血栓を溶かす治療法で、発症してから規定の時間(4.5時間)以内であれば、この治療が可能になります。軽症のラクナ梗塞に対して行うかどうかは担当の医師の判断になります。
内科的治療を行った後でも、後遺症が残る場合はリハビリを行うことがあります。
ラクナ梗塞は治る? 予後と認知症リスク
ラクナ梗塞は治るのでしょうか。予後や認知症のリスクについて見ていきましょう。
ラクナ梗塞は治るのか? 予後について
一度、壊死してしまった脳細胞は再生しないと言われています。大切なのは、早期に治療を開始して、脳細胞が壊死する前に脳の血流を改善することです。
その点、ラクナ梗塞は壊死する範囲が狭く、症状がない、あっても軽い場合があります。予後についても、一般的には良好と言われており、リハビリテーションの後に自立した生活を送れることもあります。
ただし、再発を繰り返すと認知機能の低下や言語障害、運動麻痺などの症状が出る恐れがあるため油断はできません。

脳梗塞による認知症のリスク
ラクナ梗塞は、再発を繰り返すことで認知機能が低下し、認知症のリスクが高まる可能性があるため注意が必要です。
これらの認知症は、脳梗塞を繰り返すうちに症状が段階的に進むと言われています。
また、「理解力はあるが記憶力が著しく低い」「同じことができる時とできない時がある」といった状況から「まだら認知症」と呼ばれることがあります。
このような認知症のリスクを減らすためには、脳梗塞の発症を予防することが重要です。
医師の指導のもとで血圧や血糖値などの管理を行い、生活習慣の改善を心がけましょう。
なお、生活習慣の注意点については、以下の記事をご覧ください。
内部リンク:生活習慣病の原因は?すぐに実践できる5つの改善方法を紹介いたします!
夏の脳梗塞にも注意
「脳梗塞は冬に発症しやすい」というイメージを持っている方も多くいると思いますが、夏にも多くなることがわかっています。
特に日本人に多いとされるラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞は、夏にも起こりやすいとされています。理由としては、脱水による体内の水分不足です。
気温の上昇により、汗をたくさんかくと、それに見合った量の水分を補給していなければ、身体が脱水症状に陥って、血流が悪くなったり、血栓ができやすくなったりします。
暑い夏は就寝中も脱水が起こりやすいとされ、夜間に血圧が下がり、血流が滞って血管が詰まりやすくなります。飲酒に関しても尿量を増加させ、脱水の原因になってしまうので、飲み過ぎには注意が必要です。
これらが重なってしまうと、夜間に脳梗塞が発症するリスクが高くなってしまいます。
対策として、熱中症の予防と同様に、こまめに水分を十分にとり、無理をせず休みながら活動することです。特に高齢者はのどの渇きを感じにくくなっているので、定期的に水分補給をしてください。
また、夏かぜなどの感染症を起こすと、血液が固まりやすくなり、脳梗塞が起こりやすくなります。夏かぜを防ぐことも脳梗塞の予防対策として重要です。
夏の体調不良については、こちらの記事もご覧ください。
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季節ごとの注意点と日常生活の工夫
脳梗塞は季節ごとにリスクとなる要因があり、その対策が重要です。
冬は寒い室外から暖かい室内に急に移動すると血圧が急上昇し、血管に負担がかかります。
暖房器具を適切に使用し、部屋の温度を一定に保つことが大切です。厚着をすることで体温を維持し、急激な温度変化を避けましょう。
春や秋は気温の変動が大きく、血圧の管理が難しくなります。また、季節の変わり目には体調を崩しやすく、間接的に健康リスクを高める恐れがあります。
対策として、防寒や衣服でこまめに体温調節し、生活リズムを整えて体調管理しましょう。
定期的な検査でラクナ梗塞を予防しよう
ラクナ梗塞は、ごく軽度で済む場合があります。油断をしてしまい、自己診断で病院に行かない人も少なくありません。
しかし、放置すると悪化する可能性もあるため、気になる症状がある場合には、早めに医師の診察を受けることが大切です。
そして何より怖いのは、発症して治癒したと思っても再発する可能性が高く、無症状の場合もあることです。異常を感じる方や危険因子に当てはまる方は特に、定期健診を欠かさずに受けるようにしましょう。
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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・日本内科学会認定内科医
・日本脳卒中学会専門医
・日本神経学会専門医・指導医
・日本脳神経血管内治療学会専門医
・臨床研修指導医
2012年熊本大学医学部医学科卒業
おもに経皮的血栓回収療法を中心とした脳卒中診療を主軸に、神経救急疾患からパーキンソン病関連疾患や認知症性疾患など幅広く診療を行っています。臨床教育にも興味があり、わかりやすい解説と指導を心がけています。