子宮頸がんワクチンはどれを選ぶべき? 2価・4価・9価の違いと選び方を解説

2025/09/16
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子宮頸がんは、多くの女性が直面する重要な健康問題です。近年、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が子宮頸がんの主な原因であることが解明され、その予防策であるHPVワクチンの重要性が増しています。しかし、HPVワクチンには複数の種類が存在し、それぞれ効果や対象年齢、副反応、接種回数などが異なるため、どのワクチンを選ぶべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、現在一般的に使用されているHPVワクチン3種類(2価・4価・9価)の特徴や違い、最適な選び方を丁寧に解説します。また、副反応や推奨される接種スケジュール、助成制度の仕組みについても詳しく紹介します。
目次

 

HPVワクチンの種類と子宮頸がん予防の関係

子宮頸がんの最も大きな要因はHPV感染であり、特定のHPV型が子宮頸がんの発症に深く関係しています。そのため、HPVワクチンはこのウイルスへの感染を予防することが期待され、子宮頸がんのリスクを低減するとされています。

子宮頸がんの原因とHPVの役割

子宮頸がんの主な原因はHPV感染です。HPVは150種類以上存在(*1)し、特に16型と18型は、子宮頸がんの約50~70%に関与している(*2)ことが知られています。

*1) 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」

*2) 厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」

HPVは多くの場合、性的接触により体内に侵入します。非発がん性タイプ(6型、11型など)は、尖圭コンジローマといった良性病変の原因となりますが、がん化には関与しないとされています。発がん性タイプは子宮頸部に長期間とどまり続けて(持続感染)、細胞を変化させ、前がん病変を経て子宮頸がんへ進行します。

多くの場合、HPVは身体の免疫により自然に排除され、がん化には至りません。しかし、排除されずに持続感染した場合、徐々に細胞が変異してがんを発症します。このため、HPV感染自体を予防することが、子宮頸がんの発症リスクを低減しうる重要な方法の1つとされています。ワクチン接種は有効な予防手段の1つとされています。

HPVワクチンとは

HPVワクチンは、HPV感染を予防するために開発されたワクチンです。このワクチンはウイルス様粒子(VLP)と呼ばれる、ウイルスに似た構造のタンパク質で作られていますが、実際のウイルスの遺伝情報は含まれていません。そのため、接種によって実際に感染することはないとされており、身体の免疫システムを刺激してHPV感染を防ぐ抗体を作り出します。現在、日本ではHPVワクチンは「定期接種」の対象で、小学校6年生から高校1年生相当の女子を中心に公費で受けられます。早い段階で接種することで、感染前に十分な免疫が作られるため、将来的な子宮頸がんのリスクを低減するとされています。HPVに感染する前の若年層で接種を完了することが、高い予防効果を期待するうえで重要とされています。年齢が上がると既にHPVに感染している可能性が高まるため、できるだけ早めの接種が推奨されています。これらの理由から、定期接種制度による早期のワクチン接種が広く行われているのです。

HPVワクチンとは

HPVワクチン3種の特徴と効果の違い

現在、日本で使用できるHPVワクチンには2価(サーバリックス)、4価(ガーダシル)、9価(シルガード9)の3種類があります。それぞれカバーできるHPV型や、予防できる病気に違いがあります。ここからは3種類のワクチンの特徴を個別にご紹介し、その違いを比較表でわかりやすく整理します。自分に適したワクチン選びの参考にしてください。

  サーバリックス ガーダシル シルガード9
種類 2価ワクチン 4価ワクチン 9価ワクチン
国内発売開始時期 2009年12月 2011年8月 2021年2月
予防するHPVの型 16型・18型 6型・11型・16型・18型 6型・11型・16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型

2価ワクチン(サーバリックス)の特徴と効果

2価ワクチン(サーバリックス)は、HPVの中でも特に子宮頸がん発症と関わりの深い16型と18型を標的としています。サーバリックスが特徴的なのは、免疫の持続期間が長いことで、抗体価が8.4年間にわたって自然感染時に比べて少なくとも10倍に維持されたとの報告があります。また、10歳以上の女性を対象に承認されている点も特徴です。

4価ワクチン(ガーダシル)の特徴と効果

4価ワクチン(ガーダシル)は、2価ワクチンの標的であるHPV16型・18型に加え、6型と11型もカバーしています。HPV6型と11型は発がん性ではありませんが、尖圭コンジローマ(一種の良性いぼ)の原因となり、ガーダシルの接種でこの疾患も予防できる点が大きな特徴です。対象は小学校6年生から高校1年生相当の女子だけでなく、男子への接種も可能になっており、近年では男女ともに将来のリスク低減のため摂取が推奨されています。ガーダシルは複数の疾患予防ができる点と男女両方での利用ができる点が魅力です。免疫獲得後の有効性や安全性の面でも多くの実績があるワクチンです。

9価ワクチン(シルガード9)の特徴と効果

9価ワクチン(シルガード9)は、日本で使えるHPVワクチンの中で、最も幅広いウイルス型に対応しています。子宮頸がんの原因の80~90%を占める16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型の全7種類をカバー(*3)しており、子宮頸がんだけでなく、尖圭コンジローマや幅広い前がん病変に対する予防効果が報告されています。

シルガード9は、日本で認可されてからまだ年数が浅く、接種後の長期データはこれから蓄積される段階です。

*3) 厚生労働省「9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(シルガード9)について」

9価ワクチンは2023年4月から定期接種の対象として、公費で受けられるようになりました。現在ワクチン接種の選択肢が多様化しているため、医師や自治体の案内を確認のうえ、医療機関で相談して選択してください。

ワクチンの選び方と接種スケジュールの違い

HPVワクチンは種類ごと、また年齢や性別、接種時期によって推奨される回数やスケジュールが異なります。そのため、「何回打つ必要があるのか」「どれくらいの間隔で接種すべきか」は、自分に適したワクチン選びの重要なポイントとなります。ここからは、年齢とワクチンごとの違いや接種パターンについて詳しく紹介します。

種類によって異なる接種回数

HPVワクチンの接種回数やスケジュールは、ワクチンの種類や接種時の年齢によって異なります。2価ワクチン(サーバリックス)と4価ワクチン(ガーダシル)は、15歳未満で接種を開始した場合、2回の接種(1回目と2回目の間隔は5か月以上)で十分な免疫が得られるとされています。一方、15歳以上で接種を始めた場合は、2価も4価も3回接種(通常初回接種の2か月後に2回目、初回接種の6か月後に3回目)となります。9価ワクチン(シルガード9)も同様で、9歳~14歳なら2回(0か月と6か月後)、15歳以上は3回(0か月・2か月・6か月後)の摂取が推奨されます。このように、年齢やワクチンの種類により「必要な接種回数」や「接種の間隔」が異なります。自分が何回の接種で十分な免疫を得られるか、また、忙しい生活に合わせて接種計画が立てやすいかどうかも、ワクチン選びの検討材料になります。選択の際は、医師や自治体の案内も確認してください。

年齢別の接種パターンと注意点

HPVワクチンは、小学校6年生から高校1年生相当の女子の場合、定期接種として無料で受けられます。また、過去に接種機会を逃した方のためには「キャッチアップ接種」という制度があり、例えば1997年度から2008度の間に生まれた女性のうち、2022年4月から2025年3月末までにHPVワクチンを1回以上接種した方は、2026年3月末までキャッチアップ接種の対象となり、無料でワクチン接種が可能です。接種を受けていない人や、途中で接種を中断した人は、年齢やワクチンごとに異なるスケジュールで残りの回数を受ける必要があります。途中からワクチンの種類を切り替えることは原則推奨されていません。最初に選んだ種類で最後まで打ち切ることが安全性や有効性の観点から大切です。ただし、2価または4価HPVワクチンで規定の回数の一部を完了し、9価HPVワクチンで残りの回数の接種を行う交互接種は認められています。キャッチアップ対象者は自治体から案内があるため、医療機関への相談を活用し、残りの接種を進めていきましょう。自治体によって案内のタイミングや申し込み方法が異なるため、詳しい内容や手続きはお住まいの市町村のホームページや、問い合わせ窓口で事前に確認することをおすすめします。

HPVワクチンの副反応と安全性

HPVワクチン接種の主な副反応としては、接種部位の腫れや痛み、一時的な発熱などが挙げられますが、重い健康被害が生じるケースは非常にまれです。国内外の大規模な調査でも、ワクチンの安全性の高さが報告されています。心配な点があれば接種前に医師とよく相談し、ご自身やご家族にとって納得できる形で予防を行いましょう。

費用・助成制度の違いをチェック

HPVワクチンは、すべての種類が公費助成制度の対象となります。制度の違いを知り、自分や家族がどの枠組みで接種できるかをしっかり確認しましょう。

ワクチンごとの費用

HPVワクチンを自費(任意接種)で受ける場合、種類によって費用に大きな差があります。一般的な目安として、サーバリックス・ガーダシルは3回で総計約4〜5万円、シルガード9は3回で総計約8〜10万円、2回で総計約5〜7万円と案内されることがあります(医療機関により異なります)。自費診療の場合、ワクチンの費用は医療機関ごとに差があるため、事前にそれぞれのクリニックや病院で金額を確認することが大切です。また、基本的に「1回の費用×接種回数分」だけ支払いの対象となります。自治体によっては自費で支払ったワクチン代の費用を補助する制度、還付する制度があるため、自分の住んでいる地域の制度を必ず確認しましょう。経済面での負担もワクチン選びの重要なポイントの1つと言えます。

まとめ:自分に合ったHPVワクチンを選ぶためのポイント

HPVワクチンは、子宮頸がんの予防に重要な役割を果たします。ワクチンには2価、4価、9価の種類があり、カバーするウイルス型や予防できる範囲、接種回数や対象年齢も異なります。自分や家族に合ったワクチンを選ぶには、年齢や健康状態、費用、スケジュール、副反応の特徴などをしっかり比較することが大切です。また、公費助成や定期接種、キャッチアップ接種の制度を活用することで、経済的負担を減らし、安心して接種が可能になります。疑問がある場合は、必ず医師や自治体の窓口で相談し、信頼できる情報をもとにワクチン選びを進めてください。将来の健康のために、最適な選択を行いましょう。

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監修医 内田 里香子 (うちだ・りかこ)
日本産婦人科学会所属
北海道大学、大阪大学大学院卒業。市民病院、市中病院で産婦人科医師として経験を積む。
現在は医療法人霜星会りかこレディースクリニックの院長として産婦人科診療に携る。

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