首のしこりが気になる方へ|原因別の特徴と適切な受診・対処法のポイント

2025/08/27
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首にしこりができると、「もしかして病気かも…」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。 しこりの原因には良性のものと悪性のものがあり、正しく診断することが大切です。しこりに関する基本的な知識があれば、新しいしこりを発見した時の対処法や、病院を受診するタイミングがわかります。

この記事では、首のしこりの原因や特徴、良性と悪性の見分け方のポイント、自分で経過観察する方法、病院を受診すべきタイミングなどをわかりやすく解説します。 「しこりががんかどうか知りたい」「様子を見ていいのか判断できない」という方は、ぜひ参考にしてください。
目次

首のしこりとは? まずは基本を押さえよう


しこりとは、身体の表面または内部にできる異常なふくらみや塊のことです。首にできるしこりの多くは良性ですが、悪性の腫瘍である場合もあります。首にはリンパ節や唾液腺、甲状腺、神経、筋肉、血管などの重要な臓器が集まっており、しこりの原因として、様々なものが考えられます。例えば、感染によるリンパ節炎やのう胞、粉瘤(ふんりゅう)、ガマ腫などの良性疾患のほか、甲状腺がんや唾液腺がん、がんのリンパ節転移などの悪性疾患が考えられます。

首のしこりを原因別に分類


首のしこりの主な原因としては、リンパ節の腫れのほか、良性腫瘍、悪性腫瘍などが考えられます。ここでは、しこりの原因について見ていきます。主な症状や特徴についても解説しますので、当てはまる部分がないか、チェックしてみてください。

リンパ節の腫れ(炎症・がん)

首のしこりの主な要因の1つが、リンパ節の腫れです。リンパ節の腫れの原因には、炎症などの良性のものと、がんのリンパ節転移などの悪性のものがあります。

リンパ節は、炎症や感染症などの影響で一時的に腫れることがよくあります。風邪やインフルエンザ、急性扁桃炎(へんとうえん)などに感染すると、免疫反応によりリンパ節が腫れ、しこりを自覚するのです。炎症や感染症によるリンパ節の腫れは、抗菌薬や消炎鎮痛薬によって、約1〜2週間で改善される場合が多いとされています。ただし、2週間以上経ってもしこりの状態が変わらない場合や、痛みを伴う場合などは、がんのリンパ節転移である可能性も否定できませんので、早めに医療機関を受診しましょう。

良性腫瘍(脂肪腫、のう胞など)

首にできるしこりの中には、脂肪腫やのう胞などの良性腫瘍が原因となる場合もあります。脂肪腫は、やわらかく痛みを伴わないしこりであり、通常、1〜10cm程度のサイズと言われています。

のう胞は、内部に液体を含むしこりであり、触れるとよく動き、一般的には痛みを伴いません。ただし、頭頸部がんや悪性リンパ腫などと症状が似ているケースもあります。良性であれば基本的には命に関わることはありませんが、良性であるかどうかの判断は難しいため、気になるしこりを見つけた場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

悪性腫瘍(頭頸部がん、悪性リンパ腫など)

首のしこりの中には、悪性腫瘍が原因となるものもあります。首の外側にできる主な悪性腫瘍には、甲状腺がん、唾液腺がん、悪性リンパ腫などがあります。

悪性腫瘍の場合は、しこり以外にも身体に様々な症状がみられることがあります。甲状腺がんでは喉の違和感や鼻血、声のかすれや食べ物の飲み込みにくさ、悪性リンパ腫では、急激な体重減少や大量の寝汗、などを伴うことがあります。

悪性腫瘍は、早期発見、早期治療が重要です。疑われる症状がある場合には、できるだけ早めに医療機関を受診してください。

その他の原因(粉瘤、ガマ腫、シェーグレン症候群の皮下結節)

首のしこりの原因には、粉瘤やガマ腫、シェーグレン症候群の皮下結節など、比較的まれな疾患も含まれます。

粉瘤は皮膚の中に袋状の構造ができ、角質や皮脂が詰まることでしこりになります。細菌感染が起こると赤く腫れて痛みを伴うこともあります。ガマ腫は10代から30代くらいの若者にみられる良性腫瘍で、唾液腺から唾液の排出がうまくできなくなり、唾液腺が腫れることで起こります。シェーグレン症候群は免疫異常により発症する病気であり、耳の下やあごの下に皮下結節と呼ばれるしこりが生じる場合があります。ドライマウスやドライアイなどの症状を伴う場合はシェーグレン症候群が疑われます。このような病気の場合でも、正しい診断をするために耳鼻咽喉科を受診しましょう。

首のしこりの原因

首のしこりを見つけたらどうする? セルフチェックと受診のポイント


首のしこりは、何かの病気のサインである可能性があります。ここでは、セルフチェックの仕方や、医療機関を受診するタイミングについて解説します。

セルフチェックの方法

以下の点を注意して、しこりの状態を観察しましょう。

場所 どの部位にあるか
大きさ しこりのサイズがどのくらいか
可動性 しこりを動かせるか
硬さ 硬いかやわらかいか
痛み 触った時に痛みがあるか


日々のしこりの変化を記録しておくと、医師に伝える際にも役立つため、十分な観察を心がけてください。

受診すべきタイミングと急を要するサイン

以下に当てはまる場合は、重い病気のサインである可能性があるため、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

  • 1〜2週間程度経ってもしこりが小さくならない
  • 急激に大きくなった
  • 硬くて痛みを伴う
  • しこり以外にも原因不明の発熱や急激な体重低下など、普段と異なる変化がある


判断に迷う場合は、耳鼻咽喉科やかかりつけの医師に相談してみてください。

診断に使われる検査

しこりの診断では、必要に応じて以下に示す検査がおこなわれます。

  • 触診
  • 超音波(エコー)検査
  • 血液検査
  • CT検査
  • 病理検査


触診では、医師が直接しこりを触り、硬さや大きさを確認します。しこりの状態をくわしく調べるために超音波検査やCT検査などの画像検査が行われる場合があります。感染症や炎症が起きていないか調べるために血液検査が行われる場合もあります。悪性腫瘍が疑われる場合は、しこりの一部を採取し、顕微鏡で観察する病理検査が実施されることもあります。

首のしこりの治療法


首のしこりの治療は、病変の種類によってそれぞれ異なります。ここでは、治療法や治療期間の目安、副作用などを解説します。

リンパ節の腫れ(感染症を原因とするもの)の場合

リンパ節が腫れる一般的な原因は、ウイルスや細菌などによる感染症です。このため、ウイルスや細菌に適した抗生剤、炎症の緩和を目的とした消炎鎮痛薬の使用が検討されます。一般的には、1~2週間で回復するとされていますが、しこりが小さくならない場合や悪化した場合には、再度診察を受ける必要があります。

リンパ節が腫れる原因や治療薬の効き目によって、治療までの期間は大きく異なります。治療にかかる期間や薬の種類は、症状によって使い分けるため、気になる方はあらかじめ医師に確認しましょう。

良性腫瘍(脂肪腫、のう胞など)の場合

良性腫瘍は、命にかかわるものではない場合が多いため、経過観察となる場合もあります。ただし、サイズが大きかったり、痛みを伴ったりする場合では、手術による切除が検討されます。手術は局所麻酔で行われる場合がほとんどですが、病変の大きさや部位によっては全身麻酔が必要なケースもあります。手術後は、切除した部位に血液がたまらないように、ドレーンという管を数日間挿入する場合もあります。

悪性腫瘍(頭頸部がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫など)の場合

悪性腫瘍の治療法は、がんの種類によって異なります。頭頸部がんの治療法では、主に化学療法や放射線療法、手術などが選択され、進行度に応じて複数の治療法を組み合わせる場合もあります。甲状腺がんでは、手術が第一選択です。ただし、再発のリスクが高い場合にはヨード内用療法(放射性ヨウ素治療を内服する治療)や薬物療法を併用するケースもあります。悪性リンパ腫の治療は、主に化学療法と放射線療法が選択されます。

悪性腫瘍の治療では、病状により数か月以上の入院や通院治療が必要となるケースもあります。化学療法や放射線治療の副作用では、脱毛や嘔吐、感染症リスクの上昇などが起こる場合があるため、治療中に普段と異なる体調の変化があらわれた場合は早めにかかりつけの病院に相談してください。

その他の原因(粉瘤、ガマ腫、シェーグレン症候群の皮下結節)の場合

粉瘤は、自然に治りにくいため、基本的には手術による切除が必要です。局所麻酔で病変を取り除き、病変が良性か悪性のいずれであるか確認するために、病理検査が行われることもあります。細菌感染が起きている場合は、手術を延期して患部の洗浄を優先する場合もあります。ガマ腫は大きさが小さければ経過観察で自然に小さくなるのを待つ場合もありますが、大きさや発生部位によっては治療対象になることがあります。シェーグレン症候群は、現時点では完治が難しく、根本的な治療がありません。このため、症状を和らげる対症療法がおこなわれます。ドライアイには点眼薬、ドライマウスには人工唾液や漢方薬などが使用されます。臓器の機能障害が起きている場合は、ステロイド薬や免疫抑制剤などの使用を検討する場合もあります。

自宅でできるケアと生活上の注意


首のしこりに気づいても、すぐに病院へ行けない場合もあるでしょう。そのため、しこりの経過を観察しながら慎重に対応することが大切です。

経過観察のポイントとセルフ管理

経過観察中は、以下のような点をまとめておけば、受診時に医師へ伝えやすくなります。

  • しこりのサイズ
  • 硬さの変化
  • 動きやすさ
  • 痛みの有無、程度
  • 発熱や倦怠感などの体調変化


経過観察のポイント

1〜2週間が経過しても消えない、短期間でサイズが変化した、痛みや発熱などが出たといった変化があれば、経過を待たず、耳鼻咽喉科を受診してください。

対症療法

痛みや炎症などの症状に対して、市販の鎮痛薬を使用して、一時的に症状を和らげることは可能です。ただし、鎮痛薬の使用は根本的な治療にはならないため、注意が必要です。しこりに変化があったり、症状が悪化したりする場合は、自己判断せず、医療機関を受診してください。

首のしこりに関するQ&A


ここでは、首のしこりについてよくある質問に回答していきます。

  • 首のしこりが動くのは問題ないですか?
  • 子どもの首にしこりができたらどうすればいいですか?
  • しこりが必ずがんを意味するのですか?


1つずつ見ていきましょう。

首のしこりに関するQ&A

Q:首のしこりが動くのは問題ないですか?

A:動くしこりは良性である場合が多いとされていますが、がん病変やがんの転移したリンパ節である可能性も否定できません。しこりが動くかどうかで判断せず、痛みやサイズ変化などの他のサインも意識しましょう。痛みや発熱などの症状を伴っていたり、急速に大きくなったりする場合には治療が必要なケースも考えられるため、可能な限り早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

Q:子どもの首にしこりができたらどうすればいいですか?

A:子どもに首のしこりができることは珍しくありません。首のしこりの主な原因はリンパ節であり、細菌感染や風邪などのウイルス感染によって一時的に腫れる場合がしばしばみられます。また、比較的まれですがガマ腫という唾液腺に唾液がたまってできる良性の腫瘍などもあります。注意が必要なのは、風邪の症状がなくリンパ節が腫れている場合や、顎の下や足の付け根などの首以外のリンパ節も腫れている場合、大きなしこりがある場合です。白血病や悪性リンパ腫が見つかる場合もありますので、新たにしこりを見つけたらできるだけ早めに小児科を受診しましょう。

Q:しこりが必ずがんを意味するのですか?

A:しこりの主な原因はリンパ節であり、ほとんどは良性です。ただし、中には良性と類似したしこりができる悪性腫瘍もあります。約1~2週間経過してもしこりが小さくならない場合や、急なサイズの変化、発熱や体重減少などの体調不良などを伴う場合は、医師の診断を受けることをおすすめします。

まとめ:首のしこりが気になったら、そのままにせず早めに医師に相談しましょう


首のしこりは、多くの場合は良性の変化ですが、なかには悪性腫瘍や感染症などのサインであることもあります。そのため、新たにしこりに気づいた場合は、まずはしこりの変化を観察しましょう。2週間以上続く場合や症状が悪化する場合は、治療が必要な病気である可能性があるため、耳鼻咽喉科を受診しましょう。首のしこりに気づいたら、放置せずに、早めに病院を受診して早期発見・早期治療につなげることが重要です。
これからも健康に関する正しい知識を身につけて、自分や家族の健康を守りましょう。

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編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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監修医 近藤 直英 (こんどう・なおひで)
JPMDコンサルティング代表取締役
・日本医師会 認定産業医
・日本内科学会 認定内科医
・日本神経学会 神経内科専門医・指導医
2003年奈良県立医科大学卒
名古屋大学大学院で博士号取得
これまでトヨタ記念病院、名古屋大学病院などで臨床、教育、研究に従事。2年半のトロント小児病院でのポスドク後、現在は臨床医として内科診療に携わる一方で複数の企業で産業医として働き盛り世代の病気の予防に力を入れている。また2022年に独立し、創薬支援のための難病患者データベースの構築や若手医療従事者の教育を支援する活動を行っている。

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