prp療法とは? 仕組みから効果、費用、注意点までわかりやすく解説

2025/12/03
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関節や腱の痛みがなかなか改善しなかったとしても、「できれば手術は避けたい」と考える方は多いと思います。そんな方に対して、自身の血液を用いて自然治癒力を高めるprp療法(多血小板血漿療法)が再生医療の1つとして紹介されています。

本記事では、prp療法について以下の点を中心に解説します。

●治療の仕組みと期待できる効果
●治療の流れと費用の目安
●治療後の注意点とリスク

prp療法について理解を深めたい方や、再生医療を検討している方にご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
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目次

prp療法とは

 

prp療法(多血小板血漿療法)は、自身の血液に含まれる再生力を活かして、損傷した組織の修復を促す再生医療の1つです。薬剤や人工物を使わずに身体の自然な治癒力を引き出します。

prp療法の仕組み

血液中に含まれる血小板(けっしょうばん)には、傷の修復を助ける成長因子が多く含まれており、血小板が損傷部位の再生を支えています。

治療では、患者さんの血液を少量採取し、遠心分離機を用いて血小板が多く含まれる血漿(けっしょう)(prp)を抽出します。このprpを患部に注入することで、血小板が放出する成長因子が細胞の再生や修復をサポートし、自然な回復過程を高めるとされています。

prp療法は自らの血液を利用するため、アレルギーや拒絶反応のリスクが少ない点が特徴です。国内外で研究が進められており、治療の選択肢の一つとして注目されています。身体が本来もつ自己治癒力を引き出す方法として認識されている治療法です。

prp療法の効果

prp療法は自身の血液を使用するため、免疫反応や感染のリスクが少ない点が特徴です。組織の回復が進むにつれて、徐々に痛みや違和感が和らぐことが期待され、関節疾患の治療など幅広い分野で導入が進んでいます。

ただし、効果のあらわれ方や持続期間は年齢や体調、治療部位によって異なります。多くの場合、一定期間をかけて自然に改善が進み、必要に応じて複数回の治療を行うことでより安定した結果を得られるとされています。

prp療法のメリットとデメリット

 

prp療法は、アレルギーや感染のリスクが少なく、身体への負担が軽い一方で、効果の感じ方や費用面には注意が必要です。

prp療法のメリット

prp療法の大きな特長は、自身の血液を利用するためアレルギーや感染のリスクが低く、身体への負担を抑えられる点にあります。外科的な手術を伴わず、注射による施術のみで行えます。通院で完結し、日常生活への制限もほとんどありません。

また、prpに含まれる成長因子が細胞の修復を促すことで、慢性的な関節痛や筋、腱の損傷に対して自然な回復をサポートします。傷跡が残りにくく、治療後も早期に通常の生活へ戻りやすい点もメリットです。

prp療法のデメリット

prp療法は身体への負担を抑えられる一方で、いくつかの注意が必要です。

効果のあらわれ方や持続期間には個人差があり、体質や患部の状態によって結果が異なります。症状によっては十分な改善を実感できない場合もあります。

また、治療直後には注射部位に痛みや腫れ、熱感、赤みなどが生じることがあります。これらは一時的な反応であり、数日から1週間程度で落ち着くとされています。治療後の症状には、冷却などのセルフケアがおすすめです。

さらに、prp療法は保険が適用されない自由診療であるため、費用は自己負担です。体調や持病によっては受けられない場合もあります。

prp療法の適応疾患と治療を受けられないケース

 

prp療法は、関節や筋、腱の炎症や損傷に対して、自己治癒力を引き出す再生医療です。幅広い症状に適応しますが、体調や疾患によっては実施が難しい場合もあります。

主な適応疾患

prp療法は、関節の内外で適応となる疾患が異なります。

【関節内の主な対象】

  • 変形性関節症
  • 半月板損傷
  • 靭帯(じんたい)損傷
  • 関節炎

 

【関節外(筋、腱など)の主な対象】

  • 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
  • 膝蓋腱炎(しつがいけんえん)(ジャンパー膝)
  • 足底腱膜炎(そくていけんまくえん)
  • アキレス腱炎
  • 肉離れ

 

prp療法は、関節内外の症状に対し、自然な回復を促すことが期待されていますが、効果の程度は個人差があり、医師の診断のもとで適応が判断されます。

prp療法が受けられない方

prp療法は体調や持病によっては実施が難しい場合があります。以下のような方は、医師の判断により治療が制限されることがあります。

  • がんの治療を受けている方
  • 生物学的製剤、免疫抑制剤、ステロイド剤を使用している方
  • 患部に細菌感染(ヘルペスなど)がある方
  • 心疾患、腎疾患、肝疾患、血液疾患、出血傾向のある方
  • コントロール不良の糖尿病、高血圧を有する方
  • 妊娠中の方、または薬剤過敏症の既往がある方

 

また、血液検査で血小板数に異常がある方や、短期間に複数回の治療を行っている方も避ける必要があります。安全性を確保するため、必ず事前の医師の診察と検査を受けましょう。

prp療法の進め方

 

prp療法は、自身の血液の採血から注入までいくつかの工程を経て進められます。各ステップは身体への負担を抑えるよう設計されており、基本的に日帰りでの実施が可能とされています。

血液の採取

prp療法では、まず治療に必要な血液を採取します。採取量は部位によって異なり、関節外(筋、腱、靱帯など)への投与では約25〜55ml、関節内への投与では55ml前後が目安です。採血量は献血とほぼ同程度であり、身体への負担は大きくありません。

採血は看護師が処置室で行い、通常は腕の静脈から採取します。採取した血液は、専用のキットを用いて血小板を多く含む成分を分離し、抽出する工程へと進みます。

このステップはprp療法の基礎となる重要な過程であり、採取時はリラックスした状態で臨むとよいでしょう。

分離・抽出

採取した血液は、遠心分離機を用いてprpを取り出す工程に進みます。専用の機器に血液をセットし、約20〜60分かけて高速回転させます。血液を血漿、白血球、血球の層に分け、成長因子を多く含む血小板濃縮成分のみを抽出します。

この操作により、自己修復を促す有効成分が高濃度に凝縮されたprpが得られます。抽出は院内で行われ、処理の精度や方法は使用する機器によって異なります。

また、prp-FD療法のように、抽出したprpを外部機関で加工し、凍結乾燥(フリーズドライ)させ、後日注入する方法もあります。どの方式を採用するかは、症状や治療方針によって医師が判断します。

注入

分離と抽出の過程によって得られたprpは、主治医によって治療部位に注入されます。施術は超音波で患部の状態を確認しながら行われ、損傷している組織に的確に注射されるよう慎重に実施されます。

注入は注射のみで行われるため、外科的な処置や入院は不要です。採血から注入まで全体の所要時間は1〜2時間程度で、日帰りでの受診が可能です。

施術後は軽い痛みや腫れを感じることがありますが、通常は数日以内に落ち着きます。治療後は無理のない範囲で過ごし、患部への強い刺激は避けましょう。

投与回数と間隔

prp療法は、一定の間隔をあけて複数回行うことで効果を上げることが期待できます。国内外の多くの医療機関では、3〜4週間ごとに1回の治療を行い、合計3回を1クールとする方法が採用されています。

治療の回数や間隔は、症状の程度や体調を踏まえて主治医と相談のうえで決定されます。1クール終了後はおおむね3か月後に経過を確認し、痛みや可動域の改善が見られた場合には、2クール目を検討することもあります。

このように段階的に治療を重ねることで、組織の修復を継続的に促し、より安定した改善を図ります。

prp療法の費用と注意点

 

prp療法は自由診療のため費用構成を事前に把握し、治療後の生活上の留意点や想定される副反応を理解しておくことも大切です。ここでは、費用の目安と日常生活での注意点、起こりうるリスクを整理します。

prp療法の費用

prp療法は自由診療に分類されます。保険診療や高額療養費制度の対象外であり、検査や投与時の処置費用も含めて自己負担です。

費用は医療機関や採取量によって異なりますが、目安として下記のような費用体系が挙げられます。

  • 初診料、検査(レントゲン、MRI、血液検査など):約20,000〜30,000円
  • 採血、prp精製、注射(1回あたり):約18万〜24万円
  • 再診、経過観察費(3回程度):約20,000円前後

 

全体ではおおよそ20〜30万円台が目安とされていますが、これはあくまで一例です。両膝など複数部位を治療する場合や、再生医療実施料が加算される場合もあります。治療前に必ず医療機関にて費用の詳細を確認しておくことが大切です。

日常生活での注意点

prp療法後は、患部の安定と感染予防のために一定期間の生活制限が必要です。入浴やシャワーについては治療当日を避け、翌日以降に注射部位のパッチを外してから行いましょう。

治療後2〜3日は、腫れや炎症を防ぐため、激しい運動を控えましょう。運動するとしても、痛みが悪化しない範囲で軽いウォーキング程度にとどめましょう。長時間の歩行や階段の昇り降りなど、関節に負担をかける動作は避けることが望ましいとされています。

また、治療後1〜2週間は活動を控えめにし、医師の指示にしたがって薬の再開や運動の再開時期を調整してください。身体を休めることでprpの作用をより効果的に発揮できます。

副反応とリスク

prp療法は自身の血液を利用するため、他人由来の成分を使用する治療と比べてアレルギー反応のリスクが低いとされています。

ただし、ほかの注射治療と同様に、施術部位に痛みや赤み、腫れ、熱感、皮下出血などの一時的な反応が起こることがあります。特に筋や腱、靱帯への注入後は、これらの症状が1週間ほど続くケースも見受けられます。

また、まれに感染を起こしたり、神経や血管への損傷が起こったりする可能性もあるため、異常を感じた際は早めに医療機関へ相談することが大切です。

まとめ

 

prp療法についてまとめると以下のとおりです。

  • prp療法は、自身の血液から抽出した成分を患部に注入し、血小板に含まれる成長因子によって損傷組織の修復を促す再生医療である
  • 治療は採血から注入まで日帰りで行われ、3〜4週間ごとに複数回実施するケースが多く、費用は自費診療で20〜30万円前後が目安
  • 治療後は入浴や運動を控え、軽度の腫れや痛みなどが出た際は経過を観察しながら医師の指示に従うことが大切

 

身体への負担を抑えつつ、自然な回復を目指す治療法として、prp療法は新たな選択肢となりつつあります。自身に合うかどうか、気になる方は整形外科などの専門医に相談してみてください。

【参考文献】
・順天堂大学医学部付属順天堂病院「多血小板血漿(PRP)による治療について」
・日本医科大学付属病院「変形性膝関節症に対するPRP療法」
・北里大学北里研究所病院「再生医療」
・慶應義塾大学病院スポーツ&メディカルフィットネスセンター「PRP外来」

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監修医 澤田 樹佳 (さわだ・きよし)
さわだクリニック院長
医学博士
金沢大学大学院卒業

自分が患者様ならどうして欲しいか、を考え日々の診療を行っています。
医療的な問題ならどんなことでもサポートしてまいります。