インフルエンザ検査のすべて|「いつ受ける?」「費用は?」自宅キットとオンライン診療の活用法

2025/11/10
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毎年冬になるとインフルエンザが流行します。突然の高熱、関節痛、全身のだるさ。かかった本人はもちろん、家族や職場にとっても油断できない存在です。

インフルエンザにかかると高熱や咳、喉の痛みといった症状もあらわれますが、これは風邪でも見られます。「どうせ風邪だろう」などと自己判断はせず、症状があれば医療機関に相談することが大切です。

一方で、インフルエンザは「十分な知識」に基づいて「早めの行動」をとれば、それほど心配する必要はありません。

・検査を受けるべきタイミング
・自宅で簡単にチェックできる方法
・つらい時に、病院に行かず受診する方法

こうしたポイントを押さえるだけで、インフルエンザシーズンも安心して過ごせます。 本記事では、インフルエンザの検査を受けるべきタイミングから、検査方法の種類や費用、受診の目安、最新の家庭用キット、オンライン診療の活用法まで徹底解説します。
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目次

1. こういう時はすぐに医療機関へ

 

インフルエンザは重症化することもあります。特に以下のような症状が見られる場合は、オンライン診療やセルフチェックに頼らず、速やかに医療機関を受診してください。

  • 大人の場合: 呼吸困難、息切れ、胸の痛み、意識がもうろうとする、けいれん
  • 子どもの場合: 呼吸が速くて苦しそう、顔色が悪い(青白い)、嘔吐や下痢が続く、呼びかけに反応しない

2. 検査の最適なタイミングは「発症後12~48時間」

 

インフルエンザは、検査するタイミングが非常に重要です。早すぎても遅すぎても、正確な結果が得られない可能性があります。

一般的に、発熱などの症状があらわれてから12時間から48時間以内に受けるのが最適とされています。

インフルエンザウイルスは、感染後に身体の中で増殖するのに一定の時間がかかります。そのため、症状が出てすぐの段階ではウイルスの量が少なく、検査でウイルスを検出できずに「偽陰性(ぎいんせい)」(感染しているのに陰性と判定されること)となる可能性が高いです。

一方で、発症から48時間以上が経過すると、ウイルスの量がピークを過ぎて減少し始めるため、この場合も正確な診断が難しくなることがあります。

ただし、48時間を過ぎてしまった場合でも、医師の判断で検査や治療が行われることがあります。つらい症状があれば、まずは医療機関に相談しましょう。

3. インフルエンザ検査の種類と特徴

 

インフルエンザの診断は、症状だけでは確定できないことが多いため、検査で正確に確認することが重要です。代表的な検査の種類と特徴を解説しますa

3.1 迅速抗原検査(医療機関)

クリニックや病院で最も一般的に行われている検査です。

  • 概要: 鼻や喉の奥を綿棒でこすって粘液を採取し、その検体に含まれるウイルス(抗原)を調べます。
  • メリット: 15~30分程度で結果が判明するため、診断が早く、すぐに治療を開始できます。
  • デメリット: 発症初期(12時間以内)のウイルス量が少ない時期には偽陰性となることがあります。

3.2 PCR検査(医療機関)

  • 概要: ウイルスのRNA(遺伝子)を増幅して検出する高精度の検査です。
  • メリット: 精度が高く、偽陰性や「偽陽性(ぎようせい)」(感染していないのに陽性と判定されること)となる可能性が低いです。迅速抗原検査で陰性だったが症状がある場合や、集団感染のリスクがある施設で検査を行う場合に適しています。
  • デメリット: 結果が出るまで数時間から1日程度かかります。検査機関が限られ、

3.3 抗体検査(医療機関)

  • 概要:採血で、過去の感染による抗体の有無を調べる検査です。
  • 特徴:現在感染しているかどうかを調べるものではなく、過去の感染歴を確認する目的で使用されます。

3.4 家庭用検査キット(市販品)

  • 概要:自宅で簡単に検査できる「抗原検査」キットです。
  • メリット:病院に行く前に感染の有無をセルフチェックできます。子どもや高齢者がいる家庭でも安心です。
  • デメリット:医療機関での正式な診断とは異なります。発症直後はウイルス量が少なく、偽陰性となる可能性があります。症状が強い場合は、キットの検査結果に関わらず受診が必要です。

3.5 検査を選ぶ際のポイント

症状の強さや発症時間を考慮

  • 発症から24〜48時間以内なら迅速抗原検査
  • 発症後48時間以上経過している場合や重症化リスクがある場合はPCR検査

感染拡大のリスク

  • 家庭や学校、職場などで感染が広がる可能性がある場合はPCR検査を検討

受診のしやすさ

  • 軽症で外出が難しい場合は家庭用検査キットとオンライン診療の併用が便利

検査種類と特徴比較

検査種類 検体 判定時間 精度 メリット デメリット 検査タイミング
迅速抗原検査 鼻・咽頭粘膜 15〜30分 中〜高 手軽で病院や薬局で実施 発症直後は偽陰性あり 発症24〜48時間以内が推奨
PCR検査 鼻・咽頭粘膜 半日〜1日 偽陰性が少ない
型の判別可
結果まで時間がかかる
医療機関で実施
重症・発症後48時間以上
集団感染リスク時
抗体検査 血液 数日 過去感染の把握に有用 現在感染中かは判定不可 流行状況把握
疫学調査
家庭用検査キット 鼻・咽頭粘膜 10〜30分 自宅で簡単チェック
スマホ連動可
偽陰性の可能性
医療機関診断とは異なる
軽症の早期確認
外出困難時

4. 医療機関を受診する場合の費用と注意点

 

4.1 検査にかかる費用

インフルエンザの検査費用は、公的医療保険が適用されるかどうかや、受診する医療機関によって変動します。

保険適用(3割負担)の場合、診察料なども含めて合計で3,000円〜5,000円程度が一般的ですが、あくまで目安です。正確な費用は、受診前に医療機関に直接お問い合わせください。

4.2 受診する診療科

まずはかかりつけ医に相談しましょう。大人は内科、子どもは小児科が適切です。

4.3 検査を受ける際の注意点

  • 検査の精度を高めるため、検査直前に鼻を強くかむのは避けましょう。
  • 鼻の奥に綿棒を入れるため、少し痛みや違和感を伴うことがあります。医師や看護師の指示に従い、リラックスして検査を受けてください。

5. 自宅で対応する場合

 

高熱や倦怠感で外出が難しい場合、自宅でのセルフチェックやオンライン診療が有効な選択肢となります。

5.1 家庭用検査キットの活用

近年では、自宅で手軽にインフルエンザの感染の有無を確認できる家庭用検査キット(抗原検査)が登場していますb

  • 【検査の基本】
    鼻やのどの粘膜を専用のスワブ(綿棒)で少量採取するだけで検査可能です。検査開始から10〜30分で結果が出ます。
  • 【メリット】
    家庭で陽性かbrどうかを確認できることで、症状が軽くても外出を控える判断が可能になり、感染拡大防止に役立ちます。また、陽性ならオンライン診療や医療機関での正式診断を早めに受ける判断材料になります。
  • 【使用上の注意点】
    発症直後(特に12時間以内)はウイルスが増える前なので少なく、検出できずに偽陰性となる可能性があります。症状があるのに陰性だった場合は、数時間後や翌日に再検査するか、医療機関に相談しましょう。
    家庭用キットは簡易的なチェックツールにすぎず、医療機関での診断とは異なります。症状が強い場合や、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方などの高リスク者は、必ず医師の診断を受けてください。

 

5.2 オンライン診療の活用

インフルエンザにかかると、熱や咳により医療機関への通院が負担になることがあります。そんな時に活用できるのがオンライン診療ですc

  • 【仕組み】
    スマートフォンやパソコンを使い、医師とビデオ通話やチャットでやり取りします。医師は症状や既往歴をもとに感染の可能性を評価し、必要に応じて処方箋を発行します。
  • 【メリット】
    ・感染リスクの低減:外出せずに医師の診断を受けられるため、外来での二次感染や感染拡大を防止できます。
    ・迅速な対応:家庭用検査キットで陽性を確認した後すぐに受診でき、必要に応じて抗ウイルス薬の処方もスムーズです。
    ・利便性の高さ:小さな子どもや高齢者がいる家庭でも、自宅で安全に受診できます。
  • 【注意点】
    ・「1. こういう時はすぐに医療機関へ」に記載したような重症症状(呼吸困難、意識障害など)がある場合は、必ず対面診療を優先してください。
    ・高齢者、妊婦、免疫力が低下している方は、症状の変化を見極めながら慎重に利用してください。
    ・家庭用検査キットで陰性でも症状が悪化した場合は、医療機関での確認が必要です。

 

6. まとめ

 

インフルエンザの検査は、正確な診断と適切な治療のために重要です。冬を安心して過ごすために、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 呼吸困難、意識障害などの重症化のサインを見逃さず、該当する場合はすぐに医療機関を受診する。
  • 検査は、症状が出始めてから「12~48時間」が最適。
  • 医療機関での「迅速抗原検査」が主流だが、偽陰性の可能性も念頭に置く。
  • 外出が難しい場合は、家庭用検査キットとオンライン診療を賢く活用する。

 

つらい症状が続く場合は、自己判断せずに必ず医師に相談してください。正しい知識と早めの行動で、冬を乗り切りましょう。

【参考文献】

a:日本感染症学会「インフルエンザ診療ガイドライン 2020」
b:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A(一般の方向け)」
c:厚生労働省「オンライン診療の実施に関する指針」

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監修 萩原 大樹 (はぎわら・だいき)
株式会社メディバリー 取締役、福岡大学医学部 客員講師
薬剤師、薬学博士

在宅医療からオンラインまで、あらゆるチャネルで「薬を届ける」ことに挑戦しています。常に新しい仕組みを模索し、患者さんがどこにいても安全に医療サービスを受けられる未来を創ります。