インフルエンザと市販薬:市販薬だけで大丈夫? インフルエンザの症状と賢いセルフケア

2025/10/20
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毎年多くの人々を悩ませるのがインフルエンザです。「ただの風邪でしょ?」と思うかもしれません。しかし、突然の高熱、身体中の痛み、倦怠感に襲われると、ベッドから起き上がることさえ難しくなります。

厚生労働省の統計では、日本では毎年数百万人がインフルエンザにかかっており、その影響は医療費だけでなく、仕事や学校の欠席にも波及します。小さなお子さんや受験生を抱える家庭や、高齢の家族がいる方にとっては、家族全員の健康管理が急務となる季節でもあります。

幸い、市販薬をうまく使えば、つらい症状を和らげ、自宅で穏やかに過ごすことも可能です。今回は、薬剤師の目線から、インフルエンザの症状や経過、そして市販薬を使ったセルフケアのコツまで、わかりやすく解説します。
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目次

インフルエンザの症状~急にやってくる体のSOS~



インフルエンザの症状は風邪とはひと味違います。朝起きたら身体がだるく、熱が38℃以上に急上昇し、頭痛や関節の痛み、筋肉のだるさに全身が包まれるような感覚に襲われます。「これって風邪?」と思ったときには、すでにウイルスが体内で活動を始めています。

小さな子どもは、発熱に加えて嘔吐や下痢を伴うこともあります。高齢者の場合は微熱しか出ないこともありますが、体力が落ちているため症状が悪化しやすく、肺炎や心臓への負担に注意が必要です。

発症から回復までの期間には個人差がありますが、一般的には高熱は1〜2日でピークに達し、3〜5日で下がります。咳や倦怠感は1週間ほど続くことがあります。「熱は下がったのに、なぜか身体がだるい…」というのは、回復期にありがちな症状です。

1.インフルエンザの症状~急にやってくる体のSOS~

市販薬でできること~つらさを和らげる味方〜



「熱が出たら薬を飲めばいい」と思いがちですが、市販薬は症状を和らげるための味方であり、ウイルスを直接やっつけることはできません。上手に使うことで、つらい症状を緩和し、「眠れる」「水分をとれる」「安静にできる」環境を整えることができます。

解熱鎮痛薬

高熱、頭痛、関節痛に効果があります。アセトアミノフェンやイブプロフェンが代表的です。子どもがインフルエンザに感染した際にアスピリンを含んだ解熱剤を使用すると、インフルエンザ脳症※の発症や重症化を招く可能性があるため、安全に使用可能なアセトアミノフェンを使用しましょう。

※インフルエンザ脳症
インフルエンザ感染後に「けいれん」「意識障害」「異常行動」などが急速に進行する重篤な脳の疾患です。5歳以下の幼児に多く見られ、後遺症が残ったり、死に至ったりすることもあります。高熱や意識障害が見られる場合は速やかに医療機関を受診してください。

咳止め・痰切り薬

咳のタイプに応じて使い分けます。乾いた咳には鎮咳薬、痰を伴う咳には去痰薬が有効です。

鼻水・鼻づまり用薬

抗ヒスタミン薬や点鼻薬が一般的です。抗ヒスタミン薬は眠気を招くことがあるので、日中の服用には注意してください。

服薬のタイミング

症状が強くなった時に飲む「頓服」と、一定間隔で飲む「定期服用」があります。年齢や体調に合わせて選びましょう。
薬を飲むときのポイントは、「無理に飲ませない」「使いすぎない」「症状に合った薬を選ぶ」の3つです。

2.服薬のタイミング

薬剤師おすすめ〜自宅でできるセルフケア〜



3.薬剤師おすすめ〜自宅でできるセルフケア〜

インフルエンザでつらいときは、薬に頼るだけでなく、自宅での生活に工夫することも大切です。

水分補給と栄養

発熱時は汗や呼吸で水分が失われやすく、こまめに水分を摂ることが大切です。消化の良いスープやおかゆで栄養補給も忘れずに。

休養と睡眠

身体は寝ている間に回復します。高熱のときは無理に起き上がらず、ベッドでゆっくり休みましょう。

温湿布や衣服調整

寒気やだるさを和らげるには、温かいタオルや毛布で身体を包むのも効果的です。

薬剤師に相談

「薬の選び方」「併用の注意」「量の調整」など、迷ったときに相談できるのは大きな安心です。

受診すべきサイン~こんなときは迷わず病院へ〜



以下のような症状が出た場合は自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。

  • 38.5℃以上の高熱が3日以上続く
  • 息苦しさや胸の痛みがある
  • 意識がもうろうとしている
  • 基礎疾患が悪化している

小児・高齢者・妊婦は、症状が軽くても重症化する場合があります。

抗ウイルス薬と市販薬の違い~48時間の壁〜



インフルエンザの抗ウイルス薬は、発症後48時間以内に服用することで最も効果を発揮します。熱や全身症状を和らげるだけでなく、肺炎などの合併症を予防することも期待できます。一方、市販薬はあくまで症状を和らげるサポート役です。発症したら自己判断せず、早めに医師に相談しましょう。薬剤師と連携して正しく服薬することで、安全に自宅での療養が可能になります。

まとめ~薬剤師からのメッセージ〜



インフルエンザは毎年やってくる身近な感染症ですが、正しい知識とセルフケアで症状を和らげ、安全に乗り切ることができます。市販薬は、つらさを和らげる強い味方ですが、無理せず医療機関を受診することも忘れないでください。

薬剤師に相談することで、症状に合った薬の選び方から、服薬のコツ、回復を早める自宅ケアまでアドバイスをもらえます。今年の冬は、薬剤師の知恵と市販薬を味方に、元気に過ごしましょう。

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監修 萩原 大樹 (はぎわら・だいき)
株式会社メディバリー 取締役、福岡大学医学部 客員講師
薬剤師、薬学博士

在宅医療からオンラインまで、あらゆるチャネルで「薬を届ける」ことに挑戦しています。常に新しい仕組みを模索し、患者さんがどこにいても安全に医療サービスを受けられる未来を創ります。

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