“沈黙のがん”卵巣がん | 症状と治療法について

2025/07/01
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卵巣がんは、早期に症状がほとんど現れないため、“沈黙のがん”と呼ばれることがあり、進行するまで発見が難しい厄介な病気です。

そのため、特に異変を感じにくい初期段階でどのような兆候が見られるかを知り、自分自身の健康管理に努め、適切な医療機関を早めに受診することが大切です。

この記事では、卵巣がんで生じやすい症状を詳しく解説します。また、卵巣がんの進行スピードや検査方法、受診すべき診療科、診断から治療までの流れもあわせて紹介します。卵巣がんの症状にいち早く気付き、正しい対処を行うための参考にしてください。
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目次

卵巣がんとは


卵巣がんは、女性の卵巣に発生する腫瘍です。卵巣は女性の生殖器の1つで、ホルモンの分泌や排卵といった重要な役割を担っています。卵巣がんは初期症状がほとんどなく、進行するまで気づかないことが多いため、“沈黙のがん”と呼ばれることもあります。

卵巣がんは、原因が明らかになっていないものの、遺伝的要因が関係していると言われています。特にBRCA1やBRCA2という遺伝子に変異があると、卵巣がんのリスクが高まることが知られており、若い女性でも発症する可能性があります。

また、卵巣がんではお腹の張りや痛み、食欲不振、頻尿などの症状がありますが、症状が現れたときにはすでに進行していることがほとんどです。そして、これらの症状は他の病気でも見られるため、卵巣がんの早期発見をより困難にしています。

卵巣がんの診断や治療の流れは後述しますが、まずは早期診断と治療のために健康診断を定期的に受け、異常を感じた場合は早めに医療機関を受診することが大切です。

卵巣がんの初期症状を早く察知するためには


卵巣がんは初期段階での発見が難しい病気ですが、以下に解説する腹痛や腰痛などの症状に早めに気づくことで早期発見につながる可能性があります。いずれの症状も卵巣がんだけで起きる症状ではなく、他の病気の症状とも共通するため、少しでも異変を感じたら早めに医療機関を受診することが重要です。

腹痛・腰痛

卵巣がんが進行すると、がんが大きくなり腹痛や腰痛が現れることがあります。これらの症状は卵巣がんと気づかず、放置されることが多いですが、腹痛や腰痛、骨盤付近の痛みが長期間続く場合は、婦人科を受診しましょう。

腹水が溜まり急激にお腹が出る

腹水が貯まるとお腹が膨らみ、張りを感じることがあります。この症状は比較的進行した状態でみられることが多いですが、腹部の張りや重さを感じる場合、放置すると他の臓器への影響が出る可能性もあるため、早期に医師の診断を受けましょう。

頻尿・便秘

卵巣がんの症状として、頻尿や便秘などの排泄に異常を感じることがあります。これは、腫瘍が膀胱や直腸を圧迫するためです。頻尿や便秘は日常的な症状として見過ごされがちですが、症状が続く場合は専門医に相談しましょう。

食欲低下と体重減少

卵巣がんの症状として、食欲不振や体重減少が現れることもあります。これは、先述した通り、腹水が貯まることなどにより食欲が低下し、その結果体重が減少するからです。急な体重変化や食欲低下は、他の病気の可能性もあるため、専門医の診断を受けて早期発見につなげましょう。

疲れやすい

卵巣がんだけでなく、がんになった場合には疲れやすくなる可能性もあります。これは、腹水が貯まったり食欲低下が起きたりした結果として生じる症状であると言われています。慢性的な疲労感は、多くの病気で起きる症状でもあるため、定期的な健康診断や適切な医師の診断を受けることが大切です。

卵巣がんの初期症状を早く察知する方法

卵巣がんの進行スピードと進行期の症状


卵巣がんは進行スピードが個人によって異なります。しかし、早期に症状が現れにくく、発見が遅れることがほとんどです。このため、病気が進行した段階で初めて腹痛や腰痛、腹部の張り、便秘、頻尿などの症状を感じることも少なくありません。

また、進行期の卵巣がんは食欲不振や消化器系の症状が原因で、栄養を十分に摂取できなくなるため、体重の急激な変化を伴うことが多いです。さらに、腹痛や腰痛、腹水による腹部の張りや重だるさなども進行期の特徴的な症状として現れることがあります。

このように、症状に気づいた段階ではいくつかの症状が出現している可能性が高くなります。場合によっては他の臓器への転移の可能性もあり、転移があると進行速度も速くなります。

よって、これらの症状が見られた場合、早急に医療機関を受診することが重要です。早期発見と適切な治療が進行を抑える鍵となりますので、少しでも異常を感じた場合は専門医の診察を受けましょう。

卵巣がんの検査方法と受診科


卵巣がんが疑われる場合、最初に受診する科は婦人科です。検査は超音波(エコー)検査やCT・MRI検査、腫瘍マーカー検査、病理検査などが行われます。これらの検査を通じて、卵巣や周囲の臓器の異常が詳しく分かります。

超音波検査

超音波(エコー)検査は、卵巣がんの早期発見に重要な役割を果たします。この検査では、超音波を用いて体内の臓器の様子をリアルタイムで映し出します。卵巣の形状や大きさ、内部の異常を確認する際には非常に有効です。また、エコー検査は身体にリスクが少なく、痛みも伴わないため、初期の診断方法として広く利用されています。具体例として、卵巣に嚢胞が存在するならば、エコー検査でその形態や特徴が明らかになります。一般的に嚢胞は良性ですが、持続する場合はより詳細な検査が必要となることがあります。

CT・MRI検査

MRI検査は、磁力を用いて体内の臓器の詳細な画像を取得する検査方法です。特に卵巣や周辺組織を詳しく確認でき、卵巣のサイズやがんの性状、卵巣周囲の臓器の変化がわかります。MRI検査は放射線を使用しないため、安全性が高いとされています。検査の際に、MRI装置に入るため、少し圧迫感を感じることがありますが、痛みはありません。

CT検査は、身体を輪切り状態にした画像を撮影できる検査です。全身の精査が可能で、卵巣とその周囲だけでなく、全身の転移の有無なども確認できます。MRI検査は磁力を用いて画像を撮影するのに対して、CTはエックス線を用いて画像を撮影します。

気になる症状はないものの、自身の卵巣や子宮の状態が気になる方は、骨盤内ドックを検討してはいかがでしょうか。スマートドックの骨盤内ドック(子宮・卵巣がん検査)では、内診はなく、身体に侵襲が少ないMRIを用いて画像を撮影します。がんだけでなく、女性にとって気になる子宮筋腫や子宮内膜症の有無もチェックできます。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカー検査は、血液検査でがんの有無や種類、進行具合、治療効果を判断できます。卵巣がんの一般的な腫瘍マーカーは、CA125やCA19-9、CEAです。

この検査は、がん細胞が産生する特定のタンパク質の量を測定し、その量が増加しているかを確認するものです。例えば、CA-125の値が高い場合、卵巣がんが疑われることが多いですが、値が高くてもがんではない場合や他臓器のがんである可能性もあるため、他の検査と併用して診断します。治療中は定期的な測定により、治療の効果やがんの再発リスクを評価することが可能です。

病理検査

病理検査は、組織の一部を採取して顕微鏡で観察し、がん細胞の有無やその他の疾病の診断や病態評価を行うための精密検査です。特に卵巣がんの場合、卵巣の組織を手術前に採取することは難しく、手術で採取した組織を分析します。手術中に行う迅速診断では、卵巣だけでなく他の臓器を切除するかの判断に役立ちます。そして、手術で採取した組織を詳しく調べるとがんの種類や進行具合、治療法の選択肢が明確になります。病理検査は腫瘍の性質を詳細に調査するために欠かせない検査であり、身体の負担の軽減やQOLの向上も期待できます。

卵巣がんの検査方法

卵巣がんであることがわかったらまずするべきこと


卵巣がんと診断された場合、まずは冷静になることが重要です。信頼できる医師と相談し、治療計画を立てましょう。

診断後のステップと治療選択

卵巣がんの診断を受けた後の最初のステップは、詳細な情報収集です。医師から治療内容とそのリスク、予後についてしっかり話を聞きましょう。

卵巣がんの治療では、手術前や手術後に、抗がん剤などを用いる化学療法を行うのが一般的です。手術ではがんの進行具合によって子宮や卵巣、卵管、リンパ節を取り除きます。そして、手術後には残存した病変を消滅させたり再発を予防したりするために化学療法を行います。がんが進行している場合は手術前に化学療法を行うこともあります。化学療法は全身に作用してがん細胞の消滅を助けますが、正常な細胞にも影響を与えるなどの副作用もあるため、納得してから治療を始めることが大切です。

また、有効な抗がん剤治療がない場合には、放射線治療を行うこともあります。放射線療法は局所的にがん細胞を消滅させるため、周囲の正常な細胞への影響を最小限に抑えることができますが、副作用として疲労感や倦怠感、皮膚の変化、食欲不振などが見られることがあります。

さらに、新しい治療法の研究である治験に参加することで、最新の治療を受ける機会が得られるかもしれません。この選択肢については、医師とよく話し合い、自分に最適な治療法を見つけることが重要です。

最後に、心理的支援も欠かせません。がんの診断は気分の落ち込みや衝撃などの感情的な負担を伴います。専門のカウンセラーや支援グループを活用し、心の健康を保ちながら治療に臨むことが大切です。

まとめ:卵巣がんの早期発見とその重要性


卵巣がんは“沈黙のがん”と呼ばれ、初期症状が目立たないため早期発見が難しい病気です。しかし、早期発見により治療の選択肢が広がり、生存率が高まることが期待できます。卵巣がんの症状としては腹痛や腰痛、腹水によるお腹の張り、頻尿、便秘などがあります。これらの症状に気付いた場合は、迷わず医療機関を受診することが重要です。特に健康診断を受ける際に、卵巣がんの検査も含めることで早期発見につながる可能性が高まります。

卵巣がんの進行スピードには個人差があり、また早期発見が困難なため、発見時には進行していることが多いです。進行期の症状は一層目立ち、治療が難しくなるため、初期段階での対応が求められます。超音波検査やCT検査、MRI検査、腫瘍マーカー検査などを活用することで、卵巣がんの診断につなげますが、最終的な診断には病理診断が必要です。まずは、症状に気付いたら後回しにせず、定期的な健康診断や自己チェックを励行し、異常を感じた際には医療機関を受診する勇気を持ちましょう。

卵巣がんの早期発見は心の不安を減らし、健康管理の意識を高めます。早期に対応することで治療の可能性が広がり、生活の質も向上します。これらのポイントを押さえて日常生活に取り入れ、卵巣がんの早期発見に努めましょう。

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監修医 内田 里香子 (うちだ・りかこ)
日本産婦人科学会所属
北海道大学、大阪大学大学院卒業。市民病院、市中病院で産婦人科医師として経験を積む。
現在は医療法人霜星会りかこレディースクリニックの院長として産婦人科診療に携る。

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