卵巣がんとは? 初期症状を知って早期発見を目指そう
卵巣がんとは?
卵巣がんは、卵巣に発生する悪性腫瘍です。卵巣には、卵子の生成やホルモン分泌などの重要な役割があり、卵巣がんになるとこれらの役割に影響を与えます。しかし、卵巣は腹腔内にあるため、初期段階では異変に気づきにくく、多くが進行した状態で診断されます。そのため、一般的には予後が悪いといわれています。
卵巣がんのリスクを高める要因
卵巣がんは加齢や遺伝、生活習慣が影響するといわれています。卵巣がんのリスクが高い人に対しては、卵巣がん予防のための治療法もありますが、詳しくは後述します。
年齢とホルモン要因
卵巣がんは、年齢やホルモンの変化が大きな影響を与えます。特に閉経前後の50〜60歳の女性はリスクが高いといわれています。また、ホルモン補充療法(HRT)を受けている女性も注意が必要で、長期間の使用がリスクを高める可能性があるとする研究もあります。ただし、ホルモン補充療法(HRT)は更年期症状改善のための治療であるため、卵巣がんのリスクのために治療を中断することは望ましくありません。リスクと利点を考慮し、医師と相談してから使用を決定しましょう。
家族歴と遺伝的要因
卵巣がんは、母親や姉妹に卵巣がんの既往歴があると発症リスクが高くなる、遺伝性の高いがんです。
特に、BRCA1やBRCA2といわれる遺伝子変異がある女性は、卵巣がんや乳がんのリスクが大幅に増加します。がんのリスクが高い家系の人は、定期的ながん検診や遺伝カウンセリング、遺伝子検査を受けることをおすすめします。
また、卵巣がんになりやすい遺伝子を持っており、今後妊娠、出産の予定がない人は、予防策としてリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)が検討されることもあります。
生活習慣
睡眠不足などの生活習慣は卵巣がんのリスクを高めます。日々の睡眠時間が6時間以下の人と7時間以上の人を比べると、7時間以上睡眠をとっている人は卵巣がんのリスクが下がるという研究結果があります。また、一般的には出産数が多いほど、卵巣がんのリスクは低下します。
卵巣がんの初期症状
卵巣がんは「サイレントキラー」とも呼ばれ、初期段階では自覚症状がほとんど現れません。そのため、見過ごされる場合もあります。がんが進行した場合の症状には、腹部の膨満感や腹痛などがあります。いずれの症状も、病態が進行して出現する可能性が高いため、症状に気づいた時点で、早めに受診しましょう。
腹痛・腰痛
卵巣がんの症状として、生理痛のような腹痛や腰痛があります。特に排便や排尿時に強い痛みを感じる場合や、痛みが長引く場合は卵巣がんの可能性が高くなります。
頻尿・便秘
卵巣がんになると、大きくなった腫瘍が膀胱や直腸を圧迫し、頻尿や便秘が起きることもあります。初期症状として頻尿や便秘が起きることは少ないですが、卵巣がんの症状の1つと覚えておくと、早めに対処できます。また、進行して腹水がたまると、お腹の張りを感じる場合もあります。一見、卵巣がんと関連がなさそうな症状ですが、これらの症状が長引く場合は卵巣がんの可能性があるため、早めに医師に相談しましょう。
腹水と体重変化
卵巣がんが進行すると腹腔内に腹水が溜まり、腹部の張りを感じたり、急激に体重が増えたりします。なお、腹水が増えすぎると胸に水も溜まります。これを胸水と言いますが、胸水が溜まると呼吸が苦しくなるなどの症状も出現します。
疲労感と食欲不振
卵巣がんが進行すると、疲労感や倦怠感、急激な体重減少や食欲不振もよく見られます。初期症状としては現れにくく、過労や加齢によるものと誤解されがちですが、症状が出たら早めに受診することが大切です。
卵巣がんが進行するスピード
卵巣がんの進行速度には個人差がありますが、早い場合は1年以内に進行がんへと進行することがあります。一般的には、後述する進行度が進むほど、がんが進行するスピードも速くなります。
卵巣がんの進行度
卵巣がんの進行期は、世界産婦人科連合(FIGO)によってl期からlV期の4つの進行期に分類されています。
I期 | がんが卵巣だけに存在している状態 |
II期 | がんが骨盤内に進展している状態 |
III期 | がんが骨盤を超えて腹腔内にまで広がり、リンパ節にも転移している可能性がある状態 |
IV期 | がんが肝臓や肺などの遠隔臓器に転移している状態 |
大きく分けると上記の分類になりますが、がんの発生部位や転移部位などで、それぞれの進行期もさらに細分化されています。
卵巣がんの検査方法
卵巣がんを早期に発見するための、主な検査方法を以下に紹介します。
超音波検査
超音波(エコー)検査とは、卵巣がんのスクリーニング検査として一般的に使われており、身体に負担がかかりにくい検査です。
経腟での超音波検査では、比較的正確にがんの大きさや腹水の有無を調べることができます。
CT検査・MRI検査
CT(コンピュータ断層撮影)検査とMRI(磁気共鳴画像法)検査は、がんの大きさや性質、転移の有無を詳しく確認できるため、多くの医療機関で診断に使用されています。
CT検査は、がんの広がりや遠隔転移の有無を確認するために行います。
一方、MRIでは卵巣腫瘍自体の評価を行います。大きさや性状、周囲臓器との位置関係や癒着の有無などを評価します。
卵巣がんの予防と健康管理方法
卵巣がんのリスクを減らすための方法として、以下では低用量ピルの内服と健康的な体重の維持を挙げています。しかし、これらは確実にがんを予防できるものではありません。現時点では、卵巣がんを予防する方法として確立されたものはなく、発症リスクを抑えられる可能性がある方法として紹介します。
低用量ピル(経口避妊薬)の服用
低用量ピル(経口避妊薬)を使用すると、卵巣がんの発生率が減るといわれています。しかし、血栓症や乳がんなどのリスクもあるため、医師に相談したうえで使用方法を考えましょう。
健康的な体重の維持
肥満は卵巣がんと関係があると考えられています。肥満度を判定するBMIは、22が最もよい数値とされていますが、BMIが30を超えると卵巣がんのリスクが高まるといわれています。
適正体重を維持するためには、食事と運動の両方が大切です。栄養バランスの整った食事に加えて、日頃から運動する習慣を身につけましょう。
まとめ:卵巣がんの初期症状を知り、早期発見に努めよう
卵巣がんは初期症状がわかりにくいため、何かしらの症状が出現した時点での対策が必要です。腹痛や腰痛、頻尿、便秘など、気になる症状が続く場合は早めに受診しましょう。また、年齢や家族歴、生活習慣などのリスクにも注意しながら、予防策を取ることも大切です。
これからも健康に関する正しい知識を身につけて、自分や家族の健康を守りましょう。
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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助教、産婦人科専門医、医学博士
東京女子医科大学を卒業後、東京大学医学部 産科婦人科学講座に入局。
その後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東大病院など複数の病院にてハイリスク妊娠・分娩の管理、不妊治療、がん治療などを担当。
2024年、女性に寄り添った医療を提供したいという思いから、東京都目黒区にて「レディースクリニックなみなみ」を開院。