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2025/04/24 ( 公開日 : 2025/04/21 )
膵臓がんの初期症状は?検査の方法と早期発見のポイント

この記事では、膵臓がんの初期症状、検査、早期発見のポイントについて解説します。ぜひ参考にしてください。
膵臓がんとは
膵臓がんは、膵臓の細胞に発生するがんです。膵臓は胃の裏側付近にあり、食物の消化を助ける消化酵素や血糖値をコントロールするホルモンを作る役割があります。
膵臓がんの約90%は膵管上皮から発生し、そのほとんどが腺がんという種類のがんです。このがんは周囲の組織に浸潤したり、転移したりしやすい特徴があります。外科手術、化学療法、放射線療法などの治療法がありますが、いずれの治療も効果は十分とは言えません。
膵臓がんの初期症状はある?
膵臓がんは自覚症状が出にくく、初期段階では発見が難しいがんです。そのため症状が出るころにはがんが進行していたり転移していることが多いです。
自覚症状としては、食欲不振、体重減少、上腹部や背中の痛み、腹部膨満感(お腹のはり)、黄疸(皮膚や白目の黄変)などが一般的です。また、膵臓には血糖値をコントロールするインスリンを作る働きがあることから、糖尿病の発症や悪化も膵臓がんに気づかれるきっかけになることがあります。
早期発見の重要性
膵臓がんは進行が速いため、早期発見が大切です。初期の段階で発見できれば、治療法の選択肢が増え、生存率も向上します。たとえば早期に発見され手術を行うことができた膵臓がんの患者さんの5年生存率は約50%と比較的高いことが知られています。また、さらに早期に発見することができればより高い生存率が期待できます。
膵臓がんを早期発見するためには膵臓がんになるリスクの高い人を対象に、検出力の高い検査を定期的に行うことが必要です。検査としては、血液検査、腹部CT検査、腹部超音波検査、超音波内視鏡検査、MR胆管膵管撮影検査などがあります。
膵臓がんの検査
膵臓がんの検査について詳しく説明します。
腹部CT検査
X線を利用して体内の断面画像を見る検査です。CT検査により、各臓器の形態的な変化や腫瘍の検出が可能になります。膵臓がんに関しては、腫瘍の大きさや場所、転移の有無など、膵臓の詳細な情報がわかります。
腹部超音波検査
腹部超音波検査は、超音波を使って腹部の内部を観察する画像検査です。放射線を使わず、安全で負担が少ない検査ですが、超音波が膵臓に届きにくい場合があり、膵臓がんの検出力は十分とは言えません。そのため追加検査が必要になることがあります。
超音波内視鏡検査(EUS)
超音波内視鏡検査は、内視鏡の先端に超音波装置をつけて消化管内に挿入し、胃や十二指腸から膵臓を観察する検査です。腹部から超音波装置をあてるよりも近くから膵臓を観察できるため精度の高い検査です。必要に応じて細胞や組織の採取も行えます。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
ERCPは内視鏡を使い、十二指腸にある膵管と胆管の入口から造影剤を注入して膵管や胆管をX線で撮影する検査です。この検査中に膵管内の細胞を採取することもあります。より詳しい情報がわかる検査ですが、他の検査に比べると合併症のリスクがあり侵襲性の高い検査です。
MR胆管膵管撮影検査(MRCP)
MRI検査は、強い磁場を利用して体内の詳細な画像を得る検査です。
MRCPは、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)に比べて侵襲性が少なく、肝臓、胆嚢、胆管、膵臓、膵管を含む肝胆道系と膵臓系の詳細な画像をERCPと同じレベルで得ることができるためERCPの代わりに行われることが多くなっています。
膵臓がんの危険因子
膵臓がんのリスクファクターとして、家族歴、喫煙、飲酒、糖尿病、肥満、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵のう胞、膵管拡張などの膵臓疾患、胆石、胆のう摘出術、O型以外の血液型、ピロリ菌やB型C型肝炎ウイルス感染などがあります。(参考文献:膵癌診療ガイドライン2022)その中からいくつかの項目について解説します。
家族歴
膵臓がんの患者の5-10%に、膵臓がんの近親者がいることが知られています。特に両親や兄弟姉妹、子供が膵癌である場合、そうでない人に比べてリスクは4.5倍であるという統計があります。日本⼈における家族性膵臓がんの関連遺伝⼦は ATM、BRCA2、PALB2 など複数みつかっており、今後の膵臓がんの診断や治療に役立つことが期待されます。
糖尿病
国立がん研究センターの調査結果では、一般的に糖尿病の人はがんを発症しやすいといわれています。メカニズムとして、長期間にわたって高血糖状態が続くと、細胞の損傷や炎症が引き起こされ、がん発生のリスクが高まる可能性があると考えられています。血糖値が高いほど、膵臓がんの発症率が高いことを示した研究もあります。そのため、健康診断で血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を定期的に検査し、糖尿病になっていないか監視しておくことが重要です。
膵のう胞
膵のう胞とは、膵臓の中にできる袋状の膜に液体が溜まったものです。ほとんどは無症状で、腹部超音波検査やCT検査などの際に偶然発見されることが多いです。報告によって差はありますが、膵のう胞があると膵臓がんのリスクは約3倍から約20倍になるという統計があります。
膵炎後にできた炎症性ののう胞は一般的に良性ですが、膵炎の既往がない場合に膵臓にのう胞が見つかると、腫瘍の可能性が疑われます。腫瘍性ののう胞の中で最も多いのが、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)です。IPMNは、良性から悪性までさまざまな種類があり、膵管との位置や嚢胞の形状、大きさを総合的に判断し、悪性の可能性があれば治療を検討します。
膵臓がん検査を受けられる場所は?
膵臓がんの検査は、総合病院、がん専門病院、大学病院などの専門的な医療機関で受けられます。また、人間ドックを提供するクリニックや地域の健康診断センターでも初期スクリーニングが可能です。ただし、詳しい検査が必要な場合は、専門の施設に紹介されることが一般的です。
まとめ:膵臓がん検査と早期発見の大切さ
膵臓がんは自覚症状が少なく早期発見が難しいため、まずはご自身が膵臓がんのリスクファクターを持っているかどうかを確認し、そのうえで定期的な検査を受けることが大切です。身近なリスクファクターとしては、喫煙や糖尿病、肥満、慢性膵炎などがありましたね。最近では膵臓がんに特化した人間ドックを行っている医療機関もありますので、リスクファクターのある方は受診を検討してみてください。
これからも健康に関する正しい知識を身につけて、自分や家族の健康を守りましょう。
【豆知識】膵臓がんの検査前にはミルクティーを飲むって本当?
2021年に大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)がCancersというがん専門誌に発表した研究で用いられた膵精密超音波検査では「午後の紅茶のミルクティー」が使われているということでSNSでも話題になりました。(参考文献:Predictive Factors for Pancreatic Cancer and Its Early Detection Using Special Pancreatic Ultrasonography in High-Risk Individuals. Cancers 2021; 13: 502)
この研究は膵臓がんリスクの高い、膵のう胞や主膵管拡張のある約500人の患者を対象に膵精密超音波検査と呼ばれる検査を行い長期間経過をみたものです。膵精密超音波検査では、腹部超音波検査前に胃を充満させるために(超音波検査で膵臓を見えやすくするために)水分を飲むことがありますのですが、昔から超音波の大敵である気泡(気泡があると見えにくくなるため)をなくすために一度沸騰させた水を使う手法が用いられてきました。
しかし本研究施設の膵精密超音波検査では「午後の紅茶のミルクティー」を用いており、その結果として腹部超音波検査で膵臓の観察範囲が拡大し、平均5.9年の観察期間に11人の膵臓がんが発見され、そのうち8人が早期がん(ステージ0かI)であったと報告されています。
比較的小規模の研究ではあるものの、膵臓がんの早期発見につながる成果とあって実際に同じ手法で検査をしている病院やクリニックもあるようです。
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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・日本医師会 認定産業医
・日本内科学会 認定内科医
・日本神経学会 神経内科専門医・指導医
2003年奈良県立医科大学卒
名古屋大学大学院で博士号取得
これまでトヨタ記念病院、名古屋大学病院などで臨床、教育、研究に従事。2年半のトロント小児病院でのポスドク後、現在は臨床医として内科診療に携わる一方で複数の企業で産業医として働き盛り世代の病気の予防に力を入れている。また2022年に独立し、創薬支援のための難病患者データベースの構築や若手医療従事者の教育を支援する活動を行っている。
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