2022/10/13 ( 公開日 : 2022/07/05 )
スポーツで起きる脳震盪の危険性について セカンドインパクト症候群とは?
アスリートの脳震盪はどのくらい起きてる?
法政大学が2019年に出した「大学生アスリートを対象とした脳震盪経験の実態調査」では大学生アスリートにどのくらい脳震盪が起きているのかが紹介されています。
調査では、148名(男性122名、女性26名)から回答を得ており、結果としては競技生活で脳震盪を経験したのは108名で全体の72%に上りました。
調査の中では、「硬式野球」「アメリカンフットボール」「アイスホッケー」「サッカー」などのコンタクトスポーツを行う学生アスリートは、全員(100%)が競技中に頭に衝撃を受けたことがある(*1)と回答しています。
(※1)調査では「脳震盪を起こしたことがあるか?」ではなく、「競技中に、ボールや相手、壁や障害物とぶつかって頭に衝撃を受けることがどれくらいありますか?」という問いかけがなされています。
この実態調査からもわかる通り、アスリートは多くの競技で日頃から頭に衝撃を受けており、本人も気づかないうちに脳震盪の症状が起きていると考えられます。
脳震盪の症状
脳震盪の代表的な症状としては、以下のようなものがあります。
◇代表的な症状
- 頭痛
- めまい
- 集中力の低下
- 光に過敏になる
- バランスがとれない、ふらつく
- 今がいつか、ここがどこかわからない(見当識障害) など
脳震盪は発症していても、ほぼ9割以上が意識自体は失っていません。
軽度であれば自分がそもそも脳震盪を起こしたことにも気づいておらず、そのまま競技を続けてしまうケースが多いです。
その結果として脳震盪がクセになると、重い障害が残ったり、頭蓋内の出血で死亡するケースもあるため注意が必要となります。
脳震盪をくりかえすと?
脳はどんな風にダメージを受ける?
脳は皮膚、頭蓋骨、髄膜(硬膜、くも膜、軟膜)に囲まれていて、くも膜と軟膜のあいだには脳脊髄液によって満たされています。
脳は通常この液体に満たされた状態で浮かんでいますが、スポーツで衝撃を受けると頭蓋骨にぶつかったり、脳の内部で歪みが生まれて脳組織や血管が傷ついてしまいます。
スポーツでは体をぶつけ合うことがよくありますが、このときに強く吹き飛ばされたりすると、頭は直接的に接触していなくても、頭部が激しく揺れることで脳組織は傷ついている場合があります。
セカンドインパクト症候群
脳震盪、あるいは同じような頭部外傷を受け、数日から数週間のうちに2回目の頭部外傷を受けると、致命的な脳腫脹(※脳実質組織に液体成分が異常に増加して、脳の容積が増大した状態)をきたすことがあります。
死亡率は30〜50%と非常に高く、18歳未満のスポーツを行う若年者に多いです。
1回目に受傷してから充分な期間を経ずに競技に復帰した場合に多くみられ、2回目の受傷時にはほとんどの症例で急性硬膜下血腫を伴うとされています。
急性硬膜下血腫について
スポーツでの重症頭部外傷では、硬膜の下に急速に血腫ができる「急性硬膜下血腫」という病態が多いです。
これは硬膜とくも膜のあいだに血腫ができ、脳を圧迫するというもので、脳の血流障害や強いむくみ(脳浮腫・脳腫脹)を引き起こします。
死亡事故や重篤な後遺症として、急性硬膜下血腫はもっとも頻度が多いので、ぜひ知っておきましょう。
慢性外傷性脳症
頭部への衝撃から生じる脳震盪などの脳への反復する傷害が原因となり、脳変性による認知症に似た症状を持つ進行性の脳症をきたす神経変性疾患があります。
脳震盪(一見軽いものも含む)を複数回起こしたアスリートの約3%が、慢性外傷性脳症を発症していると言われています。
頭痛、いらいらなどの気分の乱れ、突発的な異常行動、認知機能低下、運動障害、疲労感等を呈します。
治療法は対処療法しかなく、予防としては脳震盪後の十分な安静しかありません。
脳震盪を起こしたアスリートにどう対処する?
試合では勝利を目指して競技が行われていますので、選手としては頭を強く打っても競技を続けたいと思うものです。
しかし前述しましたが、脳震盪は9割以上が意識を失うまでにはいたりません。
こうした時に、選手自身が正しい判断をするのは極めて難しいため、監督者や顧問は大事を取るように選手を説得する必要があります。
大きな大会では医師が会場内にいるため、医師の助言をしっかりと聞く必要があるでしょう。
スポーツ関連脳震盪研究会によって、「脳震盪10の兆候」がまとめられています。
ぜひ、こちらも参考にしてみてください。
- ①意識消失(一瞬でも)
- ②倒れて動かない/立ち上がるのが遅い
- ③ぼーっとしている、うつろな表情
- ④フラフラしている
- ⑤動きが遅い/ぎこちない
- ⑥受け答えが適切でない/遅い
- ⑦人格の変化
- ⑧混乱している
- ⑨対戦相手がわからない
- ⑩衝撃を受けた前/後のことが思い出せない
こちらの兆候がひとつでもみられたら、選手はプレーからすぐに外して、その日はもうプレーさせてはいけません。
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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28年間の脳神経外科の手術と救急の経験から、再生しない脳という臓器の特性、知らないうちに進行し突然発症して障害を残す脳卒中疾患の特性に対しては「発症させない」ことが最も有効な対策だと考えています。 なるべく多くの方が健康なうちに脳ドックを受診し、問題解決できる環境を提供してゆきたいと思います。
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