2023/02/28 ( 公開日 : 2022/10/18 )

水頭症とは? 脳脊髄液の役割、原因、種類と症状などについて解説

症状
くも膜下出血 脳疾患
この記事は約6分で読めます
「脳脊髄液(以下、髄液)」の循環障害によって、さまざまな障害を引き起こす一連の病態を水頭症と呼びます。水頭症が発生する原因はいくつかあり、幅広い年代の人がこの病気にかかる可能性があります。この記事では水頭症がどんな病気で、どんな治療方法があるのか解説していきます。
目次

水頭症とは?

水頭症は、頭蓋骨内を満たしている髄液の循環障害によって起きる病気です。
髄液の流れがうまくいかないために脳が圧迫され、さまざまな脳や脊髄の異常をきたします。
突然悪化し脳の機能を障害することもあるため、発症すると日常生活が困難になる場合もあります

脳脊髄液とは?

髄液は脳室にある「脈絡叢(みゃくらくそう)」という場所で作られます。
脳室とは脳の内部にある空間のことです。
作られた髄液は脳室や脊髄を循環し、くも膜(頭蓋骨と脳のあいだにある膜)顆粒や毛細血管から吸収されます。

頭蓋骨の中には一般的に大人で約140mL、小児で100mLの髄液があります。
大人は1日に約500mLが産生され、産生から吸収までをつねに行っています。

髄液の役割

  • 脳を外部の衝撃から守る
  • 脳のかたちを保つ
  • 頭蓋内圧をコントロールする
  • 脳の老廃物を排泄する
  • 栄養やホルモンを運ぶ

水頭症の原因は?

何らかの理由で髄液が脳室内に溜まってしまい、脳室が次第に拡張していきます。
その理由として、髄液がスムーズに流れなくなる場合、髄液が過剰に産生される場合、髄液の吸収障害が生じた場合です。
拡大した脳室は脳実質を頭蓋骨に押しつけてしまい、これが原因となってさまざまな障害が現れます。

水頭症の種類と症状

頭蓋骨と脳のあいだは硬膜、くも膜、軟膜という膜で順に覆われています。
髄液は脳室で作られ、くも膜の下(くも膜下腔)まで循環し、くも膜下腔にあるくも膜下顆粒で吸収されます。

髄液が貯留したことで起きた水頭症は、非交通性水頭症と交通性水頭症にわけられます。

非交通性水頭症

髄液の循環をふさいでいる部分が、脳室の中にある場合の水頭症を「非交通性水頭症」と呼びます。
循環経路をふさいでしまう原因としては頭蓋内出血、脳腫瘍、中枢神経の先天的な異常などがあります。

交通性水頭症

髄液が産生過多あるいは吸収障害があり、貯留している水頭症を「交通性水頭症」と呼びます。
髄液が貯留することで脳室が拡大してしまい、脳を圧迫し、あらゆる症状を引き起こしてしまいます。

交通性水頭症の中でも、頭蓋骨内部の圧力(脳圧)が正常範囲にあるものを正常圧水頭症(NPH)といいます。
症状では歩行障害、認知症、尿失禁が特に有名で、老化による症状と鑑別しづらいという難点があります。

正常圧水頭症は原因がはっきりとしているものを「続発性正常圧水頭症」、原因不明なものを「特発性正常圧水頭症」といいます。
続発性正常圧水頭症の原因としては脳腫瘍(腫瘍による閉塞、髄液産生過多)、くも膜下出血後・脳炎後(髄液の吸収障害)などがあります。
特にくも膜下出血では出血から1~2カ月後に約2割程度の確率で水頭症を起こすというデータもあり、経過観察が重要といわれています。

表1 .時期ごとの起こりやすい症状
時期 起こりやすい症状
新生児や乳児 頭囲の拡大
前頭部の突出
嘔吐 など
幼児や児童 頭痛
嘔吐
視神経乳頭のむくみ
眼球を外側に動かす神経のまひ
筋肉や腱の意図しない周期的な収縮・弛緩 など
成人 頭痛
嘔吐
意識障害 など

水頭症の検査方法

症状を観察した上でCTやMRIを用いた検査を行い、脳室の拡大がみられれば水頭症の可能性が高いです。
脳室が拡大しているのが、単に脳萎縮による場合もあるので注意が必要です。
また、どこの脳室が拡大しているかで、閉塞している場所の検討がつけられることが多いです。

正常圧水頭症の場合には、髄液タップテスト(髄液排除試験)を行うこともあります。
髄液タップテストとは、腰椎(腰の骨)のあいだから過剰に溜まっている脳脊髄液を少量排除してみて、症状の改善度合いをみて診断する方法です。

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監修医 鳴海 治 (なるみ・おさむ)
元メディカルチェックスタジオ医師・医学博士

28年間の脳神経外科の手術と救急の経験から、再生しない脳という臓器の特性、知らないうちに進行し突然発症して障害を残す脳卒中疾患の特性に対しては「発症させない」ことが最も有効な対策だと考えています。 なるべく多くの方が健康なうちに脳ドックを受診し、問題解決できる環境を提供してゆきたいと思います。

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