2022/12/23 ( 公開日 : 2022/03/15 )
若年性脳卒中(脳梗塞)とは? 脳動脈解離・奇異性脳塞栓症などについても解説!
若年性脳卒中とは?
若年性脳卒中の定義に、世界共通のものはありません。しかし国立循環器病センターが行った「わが国における若年者の脳卒中に関する調査研究」では、50歳以下に発生する脳梗塞や脳出血などを若年性脳卒中と区分しています。
若年性脳卒中の原因はさまざまで、高齢者に発生する脳卒中と同じ場合もありますし、全く異なることもあります。ただし原因によって対処法が異なりますので、発生原因の理解は大切です。
なお原因は異なったとしても、手足が動かなくなる、感覚が麻痺するなど、脳卒中にみられる症状に違いはありません。
若年性脳卒中の原因
若年性脳卒中の原因は、高齢者に発生する脳卒中と同じで喫煙、多量の飲酒、糖尿病、高血圧、高コレステロールなどです。
遺伝性のものも含め、若くして脳卒中を起こす原因となるものはさまざまですが、残念ながら原因がよくわからないこともあります。
ここでは、若年性脳卒中に特有の原因を3つに絞ってご紹介いたします。
脳動脈解離
脳動脈解離は血管壁が剥がれて狭窄もしくは閉塞することで「脳梗塞」になる場合と、血管が外に膨れて破れることで起こる「くも膜下出血」とがあります。
血管が剥がれる原因ははっきりとはわかっていませんが、剥がれた際の痛みは頭痛として感じることができる場合が多いです。
当初は片頭痛だと思っていたものが、脳動脈解離だったというケースもあります。
奇異性脳塞栓症
足にできる深部静脈血栓症(DVT)、すなわち静脈内で発生した血栓が、健康な成人にも20%程度みられる心房壁の穴(※専門用語で「卵円孔開存(PFO:Patent Foramen Ovale)」と呼ぶ)を通り、脳内へ達することで起こる脳梗塞です。
◇補足
深部静脈血栓症は、エコノミークラス症候群で発生することがよく知られています。
長時間同じ姿勢でいるときに、静脈内の血流が低下して血が固まりやすくなり、血栓が生じることがあるのです。
通常左心房は右心房よりも圧が高いため、静脈にできた血栓は左心房へ流れませんが、重い荷物を持ち上げるなど負荷がかかると、一時的に右心房から左心房へ血液が流れ込みます。このときに血栓が左心房に入ると、左心室から脳へ血栓が飛んでしまうことがあります。
血液凝固異常症
血液凝固異常症は、若年性脳梗塞の原因として最もよくみられます。
血液凝固異常とは、血が固まるのに必要なタンパク質である凝固因子がなんらかの理由で著しく少なくなってしまうため、出血傾向が強くなったり、逆に凝固系が亢進して血栓を形成してしまう病気。
その原因のひとつとして、抗リン脂質抗体症候群(APS)があり、日本では1万人から2万人の患者がいるといわれます。
血管内の血栓形成を来たし、脳梗塞の原因になります。
血液凝固異常の原因は、「血液凝固系の病気」「血小板の病気」「血管の病気」など多岐にわたります。
女性の場合はピルが原因で凝固系が亢進して脳梗塞を起こすこともあります。
若年性脳卒中の特徴
若年性脳卒中はまれな病気です。したがって、発病直後で症状が軽いと、気づかれないこともあります。その結果診断が遅れ、最終的に重い後遺症を残してしまうことがあります。
また診断ができたとしても、その原因は遺伝性疾患や血管や心臓の構造異常など、多岐に渡ります。そのため、高齢者の脳卒中とは異なり、なかなか原因が見つからないことがあります。
診断が遅れるために重症化しやすい
脳卒中は高齢者の病気という固定観念がありますので、発症したときの症状が軽いと診断が遅れる可能性が高くなることが、若年性脳卒中の特徴のひとつです。
診断が遅れると、治療開始が遅れてしまいますので、後遺症を残すリスクが高まります。
ただし、若い方はリハビリテーションに取り組むことで、機能を回復する可能性が高い特徴もあります。
先天的な血液異常が原因となることも
先天的な血液異常が原因となることも、若年性脳卒中の特徴です。
突発性血栓症では、血液凝固制御因子である「プロテインC」「プロテインS」「アンチトロンビンⅢ」などの物質が生まれながらに欠乏し、血栓ができやすい体質です。
投薬治療などによって血栓の発生を抑制できますが、先天的な血液異常を持つ方は若年性脳梗塞発生のリスクが高いことは否めません。
最近は副作用の少ない治療薬もありますし、血栓を取り除く治療も進んでいますが、血栓ができやすい原因そのものは残りますので注意が必要です。
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病気になる前に治すという『未病』を理念に掲げていきます。循環器内科分野では心臓病だけでなく血管病まで診られる最新の医療機器を備えたバスキュラーラボで、『病気より患者さんを診る』を基本として診療しています。
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