がんは遺伝する? 発生の原因と遺伝しやすいがんについて
がんの発生には遺伝的要因のほか、環境や生活習慣などの要因が関係しています。自分にがんが遺伝するかどうかは、多くの人々にとって関心の高い問題です。大半のがんは遺伝しませんが、がんの発生に関わる遺伝子異常は受け継がれるケースもあります。そのため、もしも家族にがん患者がいる場合は自分自身の遺伝的リスクを知ったうえで健康管理を行うことが重要です。この記事では、がんの発生原因や遺伝しやすいがんの種類について詳しく説明します。遺伝的リスクを把握し、適切な対策を講じることで、がんの早期発見が可能となり、心理的な安心感を得ることができるでしょう。脳腫瘍に初期症状はあるの? 頭痛、嘔吐、意識障害などには注意が必要です!
脳腫瘍とは?
脳腫瘍は人口10万人あたり10〜12人程度が発症するとされている、まれな病気です。
40代、50代で発症することが多いですが、子どもに多くみられるタイプの脳腫瘍もあります。
原発性と転移性
腫瘍(しゅよう)とは、組織、細胞が身体の制御に従わずに、過剰に増殖することでできる組織の塊のことです。
脳の中にできる腫瘍は、大きく「原発性」と「転移性」に分類できます。
原発性脳腫瘍
脳の細胞、脳を包む膜、脳神経など脳自体から発生した腫瘍。
転移性脳腫瘍
脳以外の場所でできたがん細胞(悪性腫瘍)が血管などを通り、脳に転移して腫瘍となるのが転移性脳腫瘍です。
肺がん、乳がん、大腸がんなどが脳に転移することが知られています。
脳実質内腫瘍と脳実質外腫瘍
原発性脳腫瘍は、「脳実質内腫瘍」と「脳実質外腫瘍」に分けられます。
「脳実質内腫瘍」というのは脳そのものから発生する腫瘍で、「脳実質外腫瘍」は脳を包んでいる膜や脳神経、下垂体などから発生して脳を圧迫する腫瘍です。
脳実質内腫瘍には、神経膠腫(グリオーマ)という腫瘍や、悪性リンパ腫などがあります。
脳実質外腫瘍には、脳を包んでいる髄膜にできる髄膜腫や、脳から出る細い神経にできる神経鞘腫、脳の下方にぶら下がっていて様々なホルモンを分泌している下垂体にできる下垂体腺腫などがあります。
脳腫瘍の大まかな分類についてお伝えしましたが、脳腫瘍は150種類以上の分類があり、それぞれに適した治療法が選択されます。
図 脳腫瘍の分類

脳腫瘍の主な原因
原発性の脳腫瘍の発生には、遺伝的要因、環境的要因、加齢などが関与していると言われています。
脳腫瘍は特定の遺伝子の異常によりリスクが高まると考えられています。家族に脳腫瘍の既往がある場合、遺伝的に受け継がれる可能性があるため、定期的に医療機関で相談し、検査を検討することが大切です。
また、環境的要因としては、放射線や化学物質への長期間の暴露がリスクを高めるとされています。特に、放射線治療を過去に受けたことがある方は、その影響により腫瘍が発生するリスクが高まる場合があります。
さらに、加齢もがんの発生に関与する要因の1つです。年齢が高くなるにつれて、細胞の構造が変化しやすくなり、腫瘍の発生につながる恐れがあるため注意しましょう。
がんと遺伝については以下の記事で詳しく解説しています。詳細はそちらをご覧ください。
頭痛、嘔吐など、部位によって異なる症状
脳腫瘍による症状は大きく以下の3つに分類され、脳腫瘍の発症した場所や状態によって内容が異なります。
・頭蓋内圧亢進症状
・局所症状
・痙攣発作
頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)症状
腫瘍の発生と増大によって、頭蓋骨内部の圧力が高まることを、頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)と呼びます。
主な症状としては、慢性的な頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害、視力低下などが挙げられます。

頭蓋内圧は睡眠時や横になっている時に上がりやすいため、明け方や起床してすぐの時間帯に出やすいとされています。
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局所症状
局所症状は、腫瘍が発生する脳の部位によって異なります。

| 腫瘍の発生部位 | 症状 |
| 大脳 | 手足の麻痺、歩行障害、しびれ、感覚障害、言語障害、視野の狭まり、ふらつきなど |
| 脳下垂体 | ホルモンの分泌異常、手足の先端近くの骨の肥大(末端肥大)、女性の生理不順など |
| 小脳・脳幹 | めまい、手足の不自由や震え、難聴や耳鳴り(内耳神経が圧迫されている場合) |
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痙攣発作
痙攣発作の頻度は、腫瘍の性質や発生部位によって様々です。
身体が硬直して意識を消失する「大発作」、意識はあるけれど身体の片側の手足が意思と関係なく動く「小発作」、一点を見つめた状態で反応がなくなる「精神運動発作」などに分けられます。

脳腫瘍が原因となって、上記のような身体の不調や異変が起きることがありますが、軽い症状であったり、ゆっくり症状が強くなったりする場合は、ついつい見逃してしまいがちになります。感じたことのない違和感や、自分の身体に初めて起こった現象に気付いたら、そのままにせずに病院へ行きましょう。
最も多い悪性腫瘍は神経膠腫(グリオーマ)
脳実質内腫瘍の中に、神経膠腫(グリオーマ)と呼ばれる腫瘍があります。
これはグリア細胞という、神経細胞以外で神経系を構成している(神経細胞の活動をサポートしている)細胞が増殖した腫瘍です。
悪性の原発性脳腫瘍の25-30%を占めるのが、この神経膠腫であるといわれています。
脳を包んでいる髄膜に発生する「髄膜腫」はほとんどが他の脳組織との境界が明らかなため、手術で摘出することで、良好な経過が得られることもあります。
悪性である場合は2〜10%に過ぎないことも覚えておきましょう。
また、脳神経を取り巻いている神経鞘に発生する神経鞘腫や、脳下垂体にできる下垂体腺腫はいずれも良性のため、小さなものや症状のないものは経過観察になるケースが多いです。
脳腫瘍の症状とその進行速度
脳腫瘍は症状は初期は軽く、進行すると重い症状となってあらわれることがあります。症状は腫瘍ができる部位によって異なります。
主な症状の例は以下の通りです。
・頭痛
・けいれん発作
・吐き気・嘔吐
・意識がもうろうとする
・視界がかすむ(視力障害)
は症状は初期は軽く、進行すると重い症状となってあらわれることがあります。症状は腫瘍ができる部位によって異なります。
一方、神経膠腫(しんけいこうしゅ)(※)のように成長速度が比較的遅い悪性腫瘍は、脳の機能を徐々に損なうことがあります。
また、良性腫瘍の場合は、症状がゆっくりと進行することが多く、脳ドックや健診などで症状がないまま偶然見つかることもあります。
脳腫瘍の症状と進行速度は異なるため、定期的に医療機関で検査を受けて早期発見と治療に努めることが大切です。症状があらわれた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
脳ドックについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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神経膠腫(※):脳の神経を支える「グリア細胞」から発生する腫瘍で、進行の速さや悪性度には幅がある。
診断・治療について
脳腫瘍はMRIやCT、PET検査などの画像診断とともに、診察や必要があれば他の検査も行い、総合的に腫瘍の種類や病期(ステージ)を判断します。
脳腫瘍には150種類以上の分類がありますが、実際に腫瘍を摘出して標本を作り、細胞を見てみないと診断が難しいこともあります。
それゆえに手術中の病理診断によって、手術のやり方が変わることもあります。
手術だけでなく、術後の補助療法も重要です。脳腫瘍を専門とする経験豊かな医師が在籍する医療機関を受診することをおすすめします。
脳を検査する脳ドックについては、こちらの記事もご覧ください。
「人間ドックと脳ドックの違いは? どんな人が両方合わせて受けるべきなの?」
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まとめ|脳ドックを一度は受けておきたい

脳自体に痛覚はないため、通常の生活を送る中で脳腫瘍を早期発見することは難しいです。
今までとは違う頭痛や手足の症状など、日々の身体変化に隠れて症状は進行しがちです。
脳ドックを受診すれば、症状が出る前に脳腫瘍を見つけることができる場合もあります。
健康診断ではわからない、脳の中で進行するリスクを摘み取るためにも、40歳以降は脳ドックの受診を検討するとよいとされています。
異常が見つからなかった場合も、その画像は将来の経過観察時の比較資料として役立つことがあります。
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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脳ドックによって脳血管疾患や脳腫瘍など様々な脳疾患を早期に発見し、早期に対応することを重視しています。生活習慣病を指摘された方や漠然と健康状態に不安を抱いている方だけでなく、健康診断で異常なく元気に日常生活を送っている方も、一度は当院の脳ドック受診をお勧めします。