2025/05/23 ( 公開日 : 2025/05/22 )

認知症を防ぐ、遅らせる! 年齢別&家族別にできる予防と“日常の困りごと”対策

生活習慣
認知症
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認知症を防ぐ、遅らせる! 年齢別&家族別にできる予防と“日常の困りごと”対策
認知症は年齢に関係なく誰にでも起こりえますが、日々の生活により予防したり、進行をゆるやかにできたりすることはご存知でしょうか。

この記事では、認知症を防ぐために心がけたい生活習慣や、日常で起こりやすい困りごとへの対処法をわかりやすく紹介しています。

日々の小さな積み重ねが、安心して自分らしく暮らし続ける力になります。生活のヒントがみつかるように、ぜひ最後までご覧ください。
目次

認知症対策が必要な理由と放置リスク


認知症のリスクは高齢になるとともに増加します。

厚生労働省が2023年に公表した推計によると、2025年時点で認知症高齢者は443万人、軽度認知障害高齢者は564万人にのぼります(「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」)。これは、65歳以上の方の5人に1人が認知機能低下を生じている計算です。

認知症の有病率はこれからも増えるといわれており、他人事ではない身近な問題となっているのです。

認知症は、生活習慣の見直しや生活環境の整備といった対策により、進行を遅らせることができるといわれています。一方で、何もせず放っておくと症状が進んでしまい、思いがけない行動やケガのきっかけになるケースもあります。どちらにせよ早い段階で気づいて対策を始めることが大切なのです。

認知症の進行を遅らせるための5つの生活習慣


認知症を遅らせるにはどのようなことに気をつければいいのでしょうか。ここからは、認知症の進行を遅らせるために大切な5つの生活習慣をご紹介します。

食事|脳の健康を守る栄養バランス

食事は、認知症対策の基本となります。食事により栄養をしっかりとることは、将来の認知症リスクを減らすことにつながります。例えば、青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に多くふくまれる「オメガ3脂肪酸」は、脳の炎症を抑えたり、神経の働きを活発化させたりすることに役立ちます。ナッツ類に含まれる「ビタミンE」や、ブルーベリーや緑黄色野菜に多い「抗酸化成分」も、脳の老化をゆるやかにする効果があるとされています。

一方で、砂糖を多く含んだもののとりすぎは、脳の血管に悪影響を与えることがあると報告されており、控えめにしたいところです。

おすすめは和食や、全粒穀物、野菜、果物、魚介類などを中心とした食生活です。野菜中心で、良質な脂質を取り入れることを意識するといいでしょう。料理を工夫して彩りや味のバリエーションを増やすことで、飽きずに続けられます。

運動|ウォーキング・水泳などの有酸素運動

運動は、脳の血流を改善し、記憶や注意力などの認知機能を維持するために重要です。

特にウォーキングや水泳といった「有酸素運動」は、脳の血流を改善して、記憶力や集中力を支える働きがあります。実際に、有酸素運動によって記憶に関わる脳の一部である「海馬(かいば)」の働きが改善することが報告されています。

運動するにも一定の量が必要だといわれており、例えばウォーキングでは1回30〜40分、週3日以上を半年継続するのが理想とされています。運動習慣がない方は、買い物や家事のなかで「よく歩く」ことを意識するのもよいでしょう。

水泳やサイクリング、ランニングなども効果があります。家族や友人と一緒にすることで、外に出るきっかけになり、楽しく続けられるでしょう。

睡眠・生活リズム|規則正しい生活と休息の質

しっかり眠ることは脳の疲労回復や、記憶の整理につながります。また、質のよい睡眠は認知症の進行をゆるやかにするといわれています。

よく眠るためには、同じ時間に起床、就寝することを心がけましょう。日中は太陽の光を浴びたり、身体を動かしたりすることも大切です。寝る前は、寝室の明るさや温度を整えて快適な環境づくりを意識して、テレビやスマートフォンなどのスクリーンの使用は控えましょう。昼寝は30分以内を目安にすると、夜の睡眠に影響しにくくなるといわれています。

社会参加と趣味|人との関わりを継続する

孤独は認知症のリスク要因の1つとされています。社会参加や人との関わりは認知症予防の観点から重要だといわれています。近所の友人とお茶をする、地域のボランティア活動に参加するといった外とのつながりを保つ機会は大切にしましょう。

趣味を楽しむ時間にも大きな意味があります。園芸や手芸、カラオケ、楽器など、夢中になれる趣味は脳へのいい刺激になります。「誰かと過ごす時間」だけでなく「自分の役割を持つこと」で、メリハリのある生活や心の健康につながるでしょう。

健康管理・転倒予防

高血圧や糖尿病など、いわゆる生活習慣病は認知症のリスクを高めるといわれています。そのため、生活習慣病の改善や、定期的な健康診断による健康管理は認知症予防のためにも大切です。また、転倒によって頭を打つことが認知症のきっかけになる可能性も指摘されています。特に高齢になるとバランス感覚や筋力が低下し、転倒しやすくなります。以下のように工夫することで転倒予防を意識しましょう。

  • ・室内の段差をなくす
  • ・すべりにくいクツを着用する
  • ・階段や浴室に手すりを設置する


筋力やバランス感覚を保つための体操を日々の生活に取り入れるのも効果的です。無理ない範囲で続けられる運動をみつけましょう。

認知症の進行を遅らせる5つの生活習慣

認知症による日常の困りごとと実践的対策


認知症と診断された方は日常生活でさまざまな困りごとを抱えているかと思います。ここからは、具体的な困りごとと対策について解説します。それぞれ、みていきましょう。

財布や鍵をなくす、忘れるときの対策

認知症の症状に「物の置き忘れ」があります。例えば、財布や鍵が見つからずに出かけられなかったり、外で不安になったりすることがあります。

こうしたトラブルを防ぐためには「いつも同じ場所に置く習慣」が大切です。玄関に鍵をかける専用のフックをつけたり、財布を置くトレーを決めたりしておくのです。

最近では、財布や鍵に小さな機器(Bluetoothタグなど)をつけて、スマートフォンで場所を探せる便利なグッズもあります。「財布を置いた場所を紙に書いておく」「出かける前に持ち物をチェックする」など、ちょっとしたルールを決めておくのもおすすめです。

本人が忘れてしまっても、周囲がサポートしやすい環境を整えておきましょう。

トイレの場所や使い方がわからなくなったときの工夫

認知症の症状が進むと「トイレの場所がわからなくなる」「トイレの使い方がわからなくなる」といったことも生じます。

対策として、トイレの場所がわかるようにドアに大きく「トイレ」と書いた紙を貼ったり、矢印で案内表示をつけたりすると効果的です。大切なのは、わかりやすく視覚化することです。目立つ色や大きな文字を使うことで、より理解しやすくなるでしょう。

トイレのなかに「どう使えばいいか」の案内を貼っておくのもおすすめです。トイレットペーパーの場所や流し方などをイラストで示すとわかりやすくなります。

夜中にトイレにいくときの安全対策も大切です。足元が見えるように小さな照明を置いたり、自動でつくライトを使ったりすることで転倒リスクを減らせるでしょう。

外出・徘徊・訪問販売への備え

認知症の方が1人で外出して帰れなくなる「徘徊」は、家族にとって心配な問題でしょう。こうしたリスクを減らすためには、事前の備えが大切です。

GPS付きのクツや衣類、見守りアプリを使うことで家族が居場所を把握でき、道に迷ったときも見つけやすくなるでしょう。お住まいの地域によっては「見守りシール」や「徘徊SOSネットワーク」といった支援制度を利用できる場合もあります。市区町村の窓口で相談してみるとよいでしょう。

さらに注意したいのが、訪問販売によるトラブルです。玄関に「訪問販売お断り」のステッカーを貼ったり、インターホンに録画機能をつけたりすることで、被害を防げる可能性があります。

日ごろから家族がこまめに様子をみたり、ご近所の方と連携して見守り体制をつくったりすることも、安心して暮らすための大切なポイントです。地域の力を借りながら、見守りの輪を広げていきましょう。

家族や介護者ができるサポート


認知症の方が元気で安心して生活するためには、家族や介護者の役割が大切です。適切なサポートを提供することで、認知症の進行を遅らせることができます。ここからは家族の方向けにサポートのコツを3つご紹介します。それぞれ、みていきましょう。

家族や介護者ができるサポート_認知症を防ぐ・遅らせる!年齢別&家族別にできる予防と“日常の困りごと”対策

本人の自尊心を保つ「声かけ」のコツ

認知症の方に接するうえで大切なのが「できないことを責めない」「できたことをきちんと認める」ことです。

「また忘れたの?」という代わりに「思い出せて良かったね」や「一緒に確認しようか」といった、前向きな声かけを意識してみましょう。ちょっとした言葉の選び方で、本人の気持ちは大きく変わります。

「昔よく〇〇していたよね」と、懐かしい思い出を話題にするのもよいでしょう。楽しい記憶を振り返ることで、自然と会話が広がり脳への刺激にもつながります。

話すときはゆっくり、相手のペースに合わせましょう。否定せず、共感することを心がけると安心して会話できるようになります。お互いに心が穏やかになるような関わり方を、少しずつ取り入れてみましょう。

ストレスを溜めないケアの考え方

介護は、身体だけでなく心にも負担がかかるものです。がんばりすぎると気づかないうちに疲れがたまることもあるでしょう。「1人でなんとかしよう」と考えず、周りの手を借りることも大切です。

例えば、デイサービスを利用したり、訪問介護のヘルパーさんと連携したりすることで、自分の時間をつくれます。ほんの少しでも気持ちをリセットできる時間があると、前向きに介護と向き合えるようになります。

日々のケアは「完璧じゃなくてもいい」と思っておくこともポイントです。思いどおりにいかない日があっても「そんな日もあるよね」と、自分にやさしく声をかけてあげましょう。

家族や友人に気持ちを話したり、同じような経験をしている人とつながったりすることも心の支えになります。ストレスを感じたら、紙に書き出してみるだけでも気持ちが軽くなるかもしれません。「自分の笑顔も大切にすること」も長く介護を続けていくための大切なポイントです。

地域の支援制度(地域包括支援センター等)の活用

地域の支援制度を活用するのもよいでしょう。

全国各地に設置されている「地域包括支援センター」は、認知症や高齢者の介護について幅広い相談ができる場所です。介護サービスの手配、認知症カフェの紹介、成年後見制度の案内など、状況に応じたサポートが受けられます。

自治体によっては高齢者のための補助制度(住宅改修助成、福祉用具レンタルなど)が利用できるケースもあります。困ったときは早めに地域の窓口にアクセスし、行政や専門機関のサポートを受けましょう。

一人暮らし・高齢者世帯の環境整備


一人暮らしの高齢者が安心して生活するためには、安全な生活環境を整えることが重要です。ここからは、一人暮らしの認知症高齢者に起こりやすい事故と対策をご紹介します。

ガス・水道の閉め忘れ対策

認知症の方の一人暮らしで心配なのがガスや水道の閉め忘れによる事故です。こうした事故を防ぐためには、日常でできる対策を取り入れましょう。

例えば、自動でガスを止めてくれる「自動消火機能付きのガスコンロ」や、一定時間で水を止めてくれる「自動止水装置」は、とても頼りになるアイテムです。最近は後付けできるタイプも増えてきているので、必要に応じて検討してみましょう。

「使ったあとは確認!」といったシールを貼っておくのも効果的です。大きな文字やイラスト、目立つ色を使うとより気づきやすくなるでしょう。

コンセント・電化製品の誤使用防止策

火災を防ぐためには電化製品の「つけっぱなし」や「使いすぎ」に注意することが大切です。

おすすめなのはスイッチ付きの電源タップで、使わないときはスイッチひとつで電源を切れます。電子レンジや電気ヒーターのような家電は「自動で電源が切れる機能」があるものを選ぶと、うっかり消し忘れるリスクが減るでしょう。

また、それぞれの家電に「使い方の手順」「終わったあとのチェックポイント」を紙に書いて貼っておくと、操作に迷うことが少なくなります。文字だけでなくイラストを使うと、さらにわかりやすくなるでしょう。

家の中の転倒・事故予防(家具配置・照明など)

転倒による骨折や頭のケガは、認知症の進行や寝たきりのきっかけとなります。転倒の予防で大切なのが、日々のなかでできる「ちょっとした工夫」です。

まず、家具の配置は通りやすさを優先しましょう。家具はできるだけ壁によせて通路を広げることを心がけてください。床には滑り止めのマットを敷き、つまずきやすい敷居やコード類は撤去しておくと安心です。

また、トイレや浴室、階段などよく使う場所には手すりをつけると立ち上がりや移動が楽になります。夜間の移動には、人が通ると自動で点灯する「人感センサー付きの照明」が役立ちます。足元をやさしく照らしてくれるので、転倒の予防になるでしょう。

段差をなくすリフォームやバリアフリーの改修も、安全な住まいをつくるうえで効果的です。できることから少しずつ取り入れて、安心して過ごせる環境を整えていきましょう。

まとめ|日々の対策が、将来の安心に


認知症への備えに特別なことは必要ありません。毎日の暮らしのなかでできる、ほんの少しの工夫や心がけが大きな安心につながります。

生活習慣を見直すことや、暮らしやすい環境を整えること、家族や地域とのつながりを保つことは本人の自立と、家族の心にゆとりをもたらしてくれます。

「何かが起きてから対応する」ではなく「何も起きないようにあらかじめ備える」ことが、認知症と向き合ううえでとても大切です。今日からできることにひとつずつ取り組み、安心できる未来を築いていきましょう。

記事についてお気づきの点がございましたら、
編集部までご連絡いただけますと幸いです。

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監修医 大竹 誠 (おおたけ・まこと)
横浜市立大学 脳神経外科 医局長、救急科 助教
・日本救急医学会専門医
・日本脳神経外科学会専門医・指導医
・日本脳神経外傷学会専門医・指導医
・日本脳卒中学会専門医・指導医
・日本認知症学会専門医・指導医
・日本脳ドック学会認定医
・日本がん治療認定医機構がん治療認定医
・日本医師会認定産業医
・臨床研修指導医
2007年 東北大学医学部医学科卒業
横浜市立大学大学院医学研究科で博士号取得
救急医療、脳神経外傷、認知症を専門とし、脳卒中・頭部外傷の急性期治療から慢性期の認知機能評価まで幅広く対応しています。ドイツ(チュービンゲン大学 統合神経科学センター)・米国(サウスカロライナ医科大学)での研究経験を活かし、臨床・教育・研究のバランスを重視した医療の実践に努めています。

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