卵巣がんはエコー検査で発見できる? 検査方法と有効性について
そのため「できるだけ早期に見つける方法を知りたい」「エコー(超音波)検査で病気が発見できるのか不安」という声も少なくありません。
卵巣がんの診断に用いられるエコー検査は、婦人科で広く行われている検査の1つですが、卵巣がんの早期発見にどの程度役立つのでしょうか。
また、エコー検査だけで卵巣がんと診断できるのか、それとも他の検査も必要なのか、気になる方も多いでしょう。
この記事では、卵巣がんの診断で用いられるエコー検査でわかることや、検査を受けるべきタイミング、検査費用の目安をわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
卵巣がんはエコー検査で発見できる?
卵巣がんは、エコー検査で異常所見が見つかることがあります。エコー検査では腫瘍の大きさや位置がよくわかるため、特に初期の段階でも異常が見つかりやすいとされています。ただし、エコー検査だけでは確定診断ができないため、診断は他の検査との併用が必要です。
エコー検査とは? 仕組みと流れ
エコー検査は、人の身体に影響のない超音波により、体内の臓器や組織の画像をリアルタイムで映し出します。検査のおおまかな流れは以下のとおりです。
- ① 患者が検査台に横たわり、検査部位の肌にゼリーを塗る
- ② 超音波プローブを肌に当て、内部の臓器や組織の状況をリアルタイムで確認する
- ③ 検査部位のゼリーをタオルで拭いて終了

超音波プローブを肌に当て、内部の状況を確認する様子
腹部など、飲食によって影響を受ける部位の検査は、検査前に飲食が制限される場合もあります。検査時間は病気の種類や患者の状態により異なりますが、約20分程度で痛みもなく終了します。
卵巣がんでは、特に経腟エコーが卵巣に近い位置から詳細な画像を得られるため、早期発見に有用とされています。
エコー検査で「わかること」と「わからないこと」
エコー検査では、卵巣の形やサイズの変化、腫瘍の存在と構造などがわかります。特に、経腟エコーでは卵巣内の状態が詳しくわかるため、異常の早期発見が可能です。また、腹水の有無や量も確認できます。
一方、エコー検査ではわからないこともあります。例えば、腫瘍が良性か悪性かを判断するためには、手術で腫瘍を取り除いて、その組織を調べるという追加の検査が必要です。また、エコー検査は脂肪の多さによっては臓器が見えにくいなどのデメリットもあります。よって、全ての腫瘍を見つけられない場合もあるため、MRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピュータ断層撮影)などの他の画像診断との併用が推奨されています。
さらに、エコー検査は検査時の一時的な画像しかわからないため、腫瘍の進行具合や変化を知りたい場合は定期的な検査が必要です。いくつかの検査を組み合わせて行うことで、卵巣がんの早期発見と適切な治療につながります。
エコー検査の有効性と限界
エコー検査は卵巣がんの早期発見に役立つ手段の1つですが、先述したように腫瘍が良性であるか、悪性であるかの判断はできません。腫瘍の形や大きさ、構造は画像から推測できますが、確定診断のためには細胞診や組織学的検査などの病理検査が必要です。
また、小さな腫瘍や骨盤内の奥深くに位置する腫瘍は、エコー検査では捉えきれないこともあります。そのため、エコー検査はあくまで第1段階のスクリーニングと位置づけ、必要に応じて他の検査を併用することが推奨されています。
なぜ卵巣がんは早期発見が重要なのか
卵巣がんは初期症状に乏しく、発見が遅れやすい病気です。そのため、病気が進行してから治療を始めるケースが多く、予後が悪化する可能性が高まります。初期段階で卵巣がんを発見できれば治療の選択肢が増え、成功率も高まるため、早期発見は非常に重要です。
初期症状が乏しい理由
卵巣がんの初期段階では、明らかな自覚症状がほとんどありません。卵巣は他の臓器と直接つながっていないため、自覚症状が現れにくく、気づかないまま病気が進行してしまうことがあります。
また、卵巣がんの症状として現れる可能性があるのは、お腹の膨満感や便秘、頻尿など日常的に起こり得る症状です。これらの症状は他の病気や体調不良でも起きる症状であるため、卵巣がんに気づきにくく、初期段階での発見には困難が伴います。
早期発見で変わる治療・予後
卵巣がんを早期発見できた場合、治療の選択肢は大きく広がります。がんが転移する前に手術で腫瘍を取り除く方法があり、この場合、手術後の薬物療法と組み合わせることで、治療効果はより良好になります。一方、進行して発見された場合は、他臓器やリンパ節への転移が見られ、手術に加えて化学療法を組み合わせて長期的に治療を行うのが一般的です。そのため、卵巣がんでは「症状が出る前に早期発見すること」が治療の成功率を高め、生活の質(QOL)を維持するうえで非常に重要です。
エコー検査だけで大丈夫? 他検査との併用について
エコー検査は卵巣がんの早期発見に役立ちますが、先述したように確定診断のためには手術で腫瘍を取り除き、組織検査を行う必要があります。また、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査、腫瘍マーカー検査などを組み合わせることでより正確な診断が可能となります。
エコー検査とCT検査、MRI検査との違い
エコー検査とCT検査、MRI検査はそれぞれ特徴と用途が異なります。エコー検査は超音波を利用して体内の画像を確認するもので、侵襲性が低く、すばやく結果が得られるという利点があります。この特徴を活かして、その場で骨盤内の臓器や卵巣の状態を確認するために、エコー検査がよく用いられます。
一方、CT検査はX線を使用することで詳細な断面画像を撮影し、腫瘍や臓器を確認できます。近年ではPET-CTと呼ばれる、より精度の高いCT検査も可能になっています。PET-CT検査は全身の画像撮影を行うため、小さな転移やがんの進行度をより詳細に把握することが可能です。MRI検査は強力な磁場と電波を利用して体内を詳細に確認できます。特に、MRI検査は軟部組織の評価に優れており、卵巣がんの進行状態や転移の有無を正確に把握するために重要な検査です。また、放射線を使用しないため、放射線被ばくの心配はありません。ただし、強力な磁場による吸引事故のリスクがあるため、検査時の安全管理が必要です。
それぞれの検査方法には独自の強みがありますが、卵巣がんの診断にはエコー検査だけでなく、CT検査やMRI検査の併用が重要です。しかし、卵巣がんはこれらの検査だけでは確定診断できないため、手術で腫瘍を取り除き、組織を検査して確定診断につなげる例も多くあります。
腫瘍マーカー検査とは
腫瘍マーカー検査は、血液や尿などから特定の蛋白質や酵素を測定し、がんの存在や種類、進行度を評価する検査です。卵巣がんに関連する腫瘍マーカーには、CA-125やCA19-9などがあります。
CA-125とCA19-9は卵巣がんの患者で数値が上昇することが多いため、診断や治療効果のモニタリングに使用されます。しかし、いずれも卵巣がん以外の月経周期や子宮内膜症、妊娠などでも上昇することがあるため、「CA-125とCA19-9が上昇したから卵巣がん」と断定はできません。
近年では悪性の卵巣がんの場合に検出されるHE4と呼ばれる腫瘍マーカーもあります。HE4はCA-125とCA19-9よりも悪性の卵巣がんの場合に数値が上昇しやすいため、卵巣がんの診断補助や子宮内膜症との鑑別に有効です。
しかし、腫瘍マーカー検査はあくまで補助的なツールであり、画像検査や組織検査と組み合わせることで、より正確な診断が可能となります。このように、腫瘍マーカー検査は卵巣がんの診断と治療計画の立案に大いに役立ちますが、単独では診断に不十分であることや、初期段階では検出されないことから、他の検査との併用が推奨されています。
検査を受けるべきタイミングと対象者
卵巣がん検査は、特に遺伝的リスクがある人や症状が現れたときに行うことが大切です。その他に、症状がなくても定期的に婦人科を受診して検査を行うことで、卵巣がんの早期発見につながります。
遺伝的リスクのある人
家族に卵巣がんや乳がんの患者がいて遺伝的リスクがある人や、BRCA1やBRCA2遺伝子に変異がある場合は卵巣がんの発症リスクが高くなるため、定期的な検査が推奨されます。遺伝子に変異があると、卵巣がんの発症リスクが通常よりも高くなるため、早期に発見できるよう、エコー検査や腫瘍マーカー検査を組み合わせた定期的なチェックが重要です。これにより、万が一がんが発見されても早期に治療を開始でき、治療の成功率が高まります。
また、遺伝カウンセリングもおすすめです。専門医と相談し、自分に合った検査スケジュールを立てることで、安心して日常生活を送ることができます。
症状が気になる人
卵巣がんの症状が気になる人は、すぐに医療機関で検査を受けましょう。
卵巣がんの初期段階では症状が少なく気づきにくい場合が多いですが、お腹の膨満感や下腹部の痛み、不正出血などの兆候が見られる場合は注意が必要です。これらの症状は他の病気の症状とも似ているため、自己判断せず医師の診察を受けましょう。
先述したように、エコー検査は比較的手軽に受けられるため、初めての方でも安心して受診できます。不安を感じた時点で早めに受診し、早期発見、早期治療を目指しましょう。
定期的な婦人科の受診・検診のすすめ
定期的な婦人科検診は、卵巣がんを早期に発見するためにとても重要です。
特に閉経後の女性は卵巣がんのリスクが高まるため、意識的に婦人科検診を受けることが推奨されます。自覚症状がない場合でも、定期的に検査を受けることで、早期発見が可能です。
また、企業や自治体が実施する健康診断では、自覚症状や他覚症状の有無、各種血液検査などを行います。これらの健康診断を活用することで自身の健康状態を定期的にチェックすることが可能です。
さらに、婦人科での診察では検診項目に加えて、エコー検査や内診が行われることも一般的です。特に40歳以上の女性や、閉経後の女性は卵巣がんの発症リスクが高まるため、定期的な婦人科検診を心がけましょう。1年に1回子宮がん検診を受け、その際にエコー検査で卵巣も確認してもらうなど方法を決めておくと、定期的な検診につながります。定期的な受診は、異常の早期発見、早期治療を可能にし、治療成功率を高めるため、積極的に検診を受けましょう。
卵巣がん検査の費用目安
卵巣がんを定期的に検査する仕組みは現段階では確立されておらず、どれくらいの期間ごとに検査すべきか、推奨されるものはありません。自身で婦人科を受診したり、職場の健康診断に追加して検査を行ったりすることになりますので、ここでは卵巣がん検査にかかる費用の目安をご紹介します。
自費検査の場合の相場
自費で卵巣がん検査を受ける場合の費用は、検査の種類や受診施設により異なります。エコー検査だけを受ける場合は、3,000円程度が一般的です。
これに対して、腫瘍マーカーの測定やCT検査、MRI検査などを追加すると、費用は高くなります。CT検査、MRI検査の場合、約2万円前後が目安です。自費検査を選ぶ際には、事前に複数の医療機関に問い合わせ、費用や検査内容を確認しましょう。費用は地域や施設の設備によっても変動するため、しっかりと情報収集したうえで検討することが大切です。
検診や人間ドックでの対応
検診や人間ドックで卵巣がん検査を受ける方法も普及しています。一般的な健康診断には含まれないことが多いため、希望する場合はオプションとして選択する必要があります。多くの医療機関では、エコー検査や腫瘍マーカー検査を組み合わせたプランを提供しており、その場合のオプション費用は5,000円程度です。
また、人間ドックでは、卵巣がん検診セットなどの検査を受けることで、費用が明確になります。定期的な検診で早期発見が期待できるため、特にリスクの高い人や症状が気になる人には、積極的に検診を受けましょう。
どのような検診や人間ドックを受けるか迷っている方は、スマートドックの子宮・卵巣がんの検査メニューがおすすめです。スマートドックの子宮・卵巣がん検査ではMRIを用いた検査を行うため、MRI検査時に横たわるのみで検査が終了し、多くの方にとって抵抗感のある内診は不要です。また、MRI検査では子宮・卵巣がんがわかるだけでなく、子宮筋腫や子宮内膜症の有無も確認できます。積極的に検診や人間ドックを受けて、病気の早期発見や健康維持に努めましょう。
まとめ|エコー検査を上手に活用して早期発見を
痛みを伴わず、身体への影響が少ないエコー検査は短時間で受診可能です。また、比較的費用も抑えられ、多くの病院で受けられるも、利用しやすい理由の1つです。
エコー検査を定期的に受ければ卵巣がんを早期発見できるとは言い切れませんが、定期的な受診の結果、病気が早期発見されれば治療の選択肢は広がり、治療効果も上がりやすくなります。特に、家族に卵巣がんの既往がある方や、何らかの症状に不安を感じている方は、婦人科を受診し、エコー検査を受けることをおすすめします。また、定期的に婦人科検診を受けることで、安心して日常生活を送ることができるでしょう。
一度エコー検査を受けると、その流れや方法が理解できるため、比較的受診しやすいことがわかり、安心感を得られます。まずは、婦人科専門医のいる近くの医療機関に相談しましょう。これが、あなたの健康を守る大きな一歩になるはずです。
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
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