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2022/04/19 ( 公開日 : 2022/02/10 )
軽症COVID-19感染後における頭部MRI所見の検討
重症COVID-19患者の約15%に頭部MRIで異常所見
2019年12月にCOVID-19感染症が中国で報告されて以降、世界的なパンデミックの状況が続き、2021年12月31日時点で日本でも173万人の感染者と1万8千人の死者が報告されています。
COVID-19感染症の主な症状は肺炎によるものですが、ウィルスの脳への浸潤も多数報告されており、特に嗅神経浸潤に伴う嗅覚障害や味覚障害は少なくない副作用として認識されています。
COVID-19重症例では、4人に1人はせん妄やめまい、痙攣などの精神神経症状を合併し、重症COVID-19患者の約15%に頭部MRIで異常所見が認められたと報告されています。
一方で、軽症COVID-19患者においては頭部MRIまで撮影することはほとんどなく、軽症COVID-19における頭部MRI所見の有無に関する報告は世界的にもまだありません。
2020年6月から2021年5月までに当院受診者の675人がスマート脳ドックとCOVID-19抗体検査(N抗体)を行いました。
そのうち、抗体検査陽性は25人(3.7%)であり、陽性者は全員入院治療が必要ない軽症か無症状の経過でした。
重症例では15%に頭部MRIで異常が認められる中で軽症COVID-19患者では脳所見に変化が生じるのかについて、陽性者(軽症)と陰性者の頭部MRI所見を比較することで違いの有無を解析し、学会で報告しました。
軽症COVID-19患者ではウィルスによる脳へのダメージが少ない可能性
抗体検査陽性者(25人)と陰性者(650人)の間で、高血圧や糖尿病などの既往歴で明らかな差は認めませんでした。陽性者の76%(19人)が感染後の後遺症を認めていませんでしたが、3人は頭痛、2人はめまい症状が残存していました。
頭部MRI所見について統計解析した結果、大脳白質病変、虚血性変化、脳微小出血、脳動脈瘤、動脈硬化性病変、その他の異常所見について、いずれの項目も抗体検査陽性者と陰性者の間で有意な差は認めませんでした(p>0.05)。
また、COVID-19感染前後の頭部MRIを追跡できた方は4人いましたが、いずれも感染前後でMRI所見の変化は認めませんでした。
本検討は抗体検査結果に基づくものでありPCRの結果を参考としたものではないため、発症時期や画像検査までの間隔について正確性に欠けることは否めません。
しかし、過去に報告のない軽症COVID-19感染後の頭部MRI所見について、陽性者と陰性者で明らかな違いがないことが分かったことは、コロナ禍において非常に重要な知見と考えます。
本検討結果より、軽症COVID-19感染では中枢神経系へのウィルスによるダメージが少ない可能性が示唆されました。
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高度救命救急センター/脳神経外科 助教・医学博士
日本脳神経外科学会 専門医/指導医、日本脳卒中学会 専門医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、日本医師会 認定産業医
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