2022/04/19 ( 公開日 : 2022/01/25 )

比較的若年者における大脳白質病変の危険因子に関する解析

ドクターコラム
研究
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第30回日本脳ドック学会(2021年6月) 、第5回脳神経外科認知症学会(2021年6月)、第40回日本認知症学会(2021年11月)にて、スマートスキャン株式会社と横浜市立大学の共同研究結果を報告いたしました。
目次

スマート脳ドックを受診した約4万人のデータを解析

脳の血流が悪くなることで生じる大脳白質病変は、脳梗塞や認知症の危険因子であるといわれており、脳ドックによる早期発見の重要性が報告されています。
大脳白質病変は年齢を重ねることでも現れる可能性がある一方で、無治療やコントロール不良の高血圧があると若年でも出現し増悪します。

2017年10月から2021年5月までにスマート脳ドックを受診した約4万人の脳ドックデータを解析することで、平均年齢49.2歳と比較的若年者における大脳白質病変発生の危険因子について検討を行い、結果を各学会で報告いたしました。

42歳以上で高血圧症のある人は大脳白質病変に注意

55歳未満の比較的若年者においても、42歳以上においては高血圧が大脳白質病変の危険因子であることが分かりました(p<0.001)。
56歳以上では脂質代謝異常の既往があると大脳白質病変が多く認められました(p=0.002)。

家庭血圧で140mmHg以上を認めたことがあれば大脳白質病変に注意

若年者においても高血圧が大脳白質病変の危険因子となることが分かったため、高血圧を以下の4項目の認識度別に分類し再検討を行いました。

①降圧剤治療中
②病院で指摘(無治療)
③健康診断で指摘(無治療)
④家庭血圧で高値を自認(無治療)

降圧剤を内服している人は大脳白質病変を有意に多く認めました(p<0.001)。
一方で、降圧剤を内服していない場合でも、病院で高血圧を指摘されたことがある場合(p<0.001)や、家庭での血圧測定で収縮期血圧140mmHg以上を認識したことがある場合(p=0.022)は、大脳白質病変が多い結果でした。

大脳白質病変は大半が無症状のまま進行するため、生活の中では認知しにくく、一度病変が出現すると改善することはないといわれています。
生活習慣の改善や高血圧の治療などを通して病変の進行を止めることが、将来的な脳梗塞や認知機能低下の予防に重要です。

今回私たちが報告したように、42歳以上で高血圧症のある方や、家庭血圧で140mmHg以上を認める方は、定期的に脳の状態を確認することをお勧めいたします。

記事についてお気づきの点がございましたら、
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
監修医 大竹 誠 (おおたけ・まこと)
横浜市立大学 脳神経外科 医局長、救急科 助教
・日本救急医学会専門医
・日本脳神経外科学会専門医・指導医
・日本脳神経外傷学会専門医・指導医
・日本脳卒中学会専門医・指導医
・日本認知症学会専門医・指導医
・日本脳ドック学会認定医
・日本がん治療認定医機構がん治療認定医
・日本医師会認定産業医
・臨床研修指導医
2007年 東北大学医学部医学科卒業
横浜市立大学大学院医学研究科で博士号取得
救急医療、脳神経外傷、認知症を専門とし、脳卒中・頭部外傷の急性期治療から慢性期の認知機能評価まで幅広く対応しています。ドイツ(チュービンゲン大学 統合神経科学センター)・米国(サウスカロライナ医科大学)での研究経験を活かし、臨床・教育・研究のバランスを重視した医療の実践に努めています。

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