インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の主な違いとは? 症状・検査・治療法を解説

2025/11/25
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冬が近づくと、毎年話題に上る「インフルエンザ」。 そしてここ数年、私たちの生活に大きな影響を与えた「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」。

どちらも発熱や喉の痛み、倦怠感など似たような症状を引き起こすため、 発熱すると「インフルかな?それともコロナ?」と迷う方も多いのではないでしょうか。

実はこの2つ、原因となるウイルスが異なることはもちろん、多くの違いがあります。 感染するスピードから症状の出方、重症化リスク、治療法、そして後遺症――。 違いを知っておくことで、もしもの時に落ち着いて行動できます。

今回は、インフルエンザとCOVID-19の主な違いを、わかりやすく解説します。
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目次

1.ウイルスの違い|インフルエンザウイルスと新型コロナウイルス



まず、原因となるウイルスがまったく別の種類です。

項目 インフルエンザ 新型コロナウイルス(COVID-19)
原因ウイルス インフルエンザ(A型・B型) SARS-CoV-2(コロナウイルス属)
主な流行時期 冬(11月~3月) 通年(波状的に流行)
潜伏期間 約1~3日 約2~7日(長い場合は10日以上)
ウイルスの特徴 毎年変異し、ワクチンが更新される 高い変異力。株によって感染力・症状が変動

インフルエンザウイルスは、毎年「型」が少しずつ変わるため、その都度新しいワクチンが作られます。一方、新型コロナウイルスは変異の幅が非常に大きく、オミクロン株のように感染力が強いタイプが出ると、短期間で世界的な流行となることもあります。


2.症状の違い|熱の出方・咳・倦怠感・嗅覚障害をチェック



どちらも「発熱」「喉の痛み」「咳」などの共通点がありますが、症状の出方や続く期間に差があります。


症状 インフルエンザ 新型コロナウイルス(COVID-19)
発熱 急に38度以上の高熱 微熱~高熱まで幅広い
倦怠感 強い、全身が重い 長く続く傾向あり
筋肉痛・関節痛 強い、全身が重い 比較的軽い
咳・喉の痛み あり(乾いた咳) あり(長引く咳も)
味覚・味覚障害 まれ 特徴的(初期症状の場合も)
消化器症状 まれ 下痢・吐き気を伴う場合あり
症状の持続 3~5日で改善傾向 1週間以上続くこともある

インフルエンザは「急激な発熱」と「全身の痛み」が特徴であり、COVID-19は「症状がゆるやかに始まり、長引く」ことが多いとされます。
ただし個人差が大きく、症状だけでは絶対に区別できないため、自己判断はせず医療機関で検査を受けることが不可欠です。


3.感染スピードと広がり方の違い



インフルエンザは感染してから発症するまでの潜伏期間が平均1〜2日と短いのが特徴です(出典:厚生労働省ホームページ「インフルエンザ(総合ページ)」)。

一方COVID-19の潜伏期間は4〜5日程度と長く、しかも症状が出る前から他人に感染させる可能性があります。
つまり、COVID-19「自分ではまだ気づかないうちに感染を広げてしまう」リスクがあるのです。
この違いが、COVID-19が爆発的に広がった理由の1つです。


4.【緊急】すぐに受診すべき危険なサイン(レッドフラグ)



インフルエンザ、COVID-19のいずれの場合でも、以下の症状が見られる場合は緊急性が高い状態と考えられます。ためらわずに救急要請や医療機関の受診をしてください。


  • 呼吸が苦しい、息切れが続く
  • 胸の痛みが続いている
  • 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい
  • 唇や顔色が悪く、紫色になっている(チアノーゼ)
  • けいれんを起こしている

特に高齢者や基礎疾患のある方、お子さんの場合は症状の変化に注意し、早めに対応することが重要です。


5.検査方法の違い|抗原検査・PCR・同時検査の使い分け



インフルエンザとCOVID-19は症状だけで見分けられないため、検査が重要です。


症状 インフルエンザ 新型コロナウイルス (COVID-19)
抗原検査 迅速 (15分程度で判明) 定性・定量ともにあり
PCR検査 あまり行われない 主流 (高精度)
同時検査キット 利用可能 (同時判定) 利用可能 (同時判定)

最近では、インフルエンザとCODVID-19を同時に検出できる検査キットも普及しています。
発熱外来や薬局で受けられる場合もあり、体調が悪いときは早めに検査することが、適切な治療への第一歩となります。


6.治療法の違い|抗ウイルス薬の特徴



インフルエンザには、オセルタミビルなどの抗ウイルス薬があり、発症後48時間以内に服用すると症状を短縮できると報告されています。
一方、COVID-19にはモルヌピラビル、パクスロビドなどの抗ウイルス薬が使われますが、対象は重症化リスクのある方に限られるなど、医師による慎重な判断のもとで使用されます。


治療 インフルエンザ 新型コロナウイルス (COVID-19)
主な治療薬 オセルタミビル、パロキサビルなど モルヌピラビル、パクスロビドなど
投与のタイミング 発症から48時間以内 発症から5日以内
主な目的 ウイルス増殖の抑制 重症化の防止

両方とも「早期対応がカギ」です。発症してから時間が経つと、抗ウイルス薬の効果が弱くなるため注意が必要です。


7.ワクチンの違いと免疫の仕組み



インフルエンザワクチンは、その年に流行しそうな型を予測して作られます。接種後2週間ほどで効果があらわれ、5〜6か月の間持続します(出典:厚生労働省)。


一方、COVID-19のワクチンはmRNA技術を用いた新しいタイプのため重症化予防効果が高く、変異株に対応する「オミクロン株対応型」なども登場しています。

なお、インフルエンザとCOVID-19のワクチンを同時期に接種することは可能です。医師や薬剤師に相談し、体調に合わせて接種スケジュールを調整しましょう


8.重症化と後遺症の違い|Long COVIDにも注意



インフルエンザとCODVID-19はどちらも軽症で済む人が多いですが、高齢者や持病を持つ方は重症化や合併症が問題になります。


比較項目 インフルエンザ 新型コロナウイルス (COVID-19)
主な重症合併症 肺炎、脳症、心筋炎 肺炎、血栓症、呼吸不全
致死率 約0.1%以下 約0.3~1% (変異株により変動)
後遺症 まれ 倦怠感、息切れ、集中力低下 (Long COVID)

COVID-19の特徴的な点は、回復後も疲れやすい、息切れ、集中力低下などが長く残ることがあり、これがいわゆる「Long COVID(後遺症)」です。


9.感染したときの対応|家庭・職場での正しい行動



【インフルエンザの場合】

  • 高熱が出たら無理をせず休む
  • 早めに医療機関を受診
  • 医師の指示に従い、処方された薬を服用し、水分・栄養をとる

発症から5日間の経過、かつ解熱した後2日を経過するまでは自宅で養生する。 

【コロナの場合】

  • 医療機関・発熱外来で検査を受ける
  • 陽性時は医師の指示に従って自宅療養する(通常5〜7日)
  • 家族と部屋を分け、換気・消毒を徹底する

家族が感染した場合も、同じ部屋で長時間過ごさないなど、家庭内での感染対策が重要です。


10.予防が最も重要|日常生活でできる5つの対策



インフルエンザとCOVID-19のどちらにも共通する、最も確実な対策は予防です。


  • 手洗い・マスク・換気を「習慣」にする
  • 規則正しい生活で免疫機能を維持する
  • 予防接種を毎年・定期的に受ける
  • 少しでも体調に異変を感じたら早めに休む

感染を「広げない」ことが、家族や職場、地域を守ることにつながります。


11.まとめ|正しい知識と早めの行動で、安心して冬を迎えましょう



インフルエンザとCOVID-19は症状が似ている感染症ですが、異なる特徴を持ちます。


  • インフルエンザ:急な高熱、短期集中型
  • COVID-19:比較的ゆっくり発症、発症前から感染力あり

症状だけで自己判断することは非常に危険です。発熱や体調不良がある場合は必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。正しい知識と早めの行動で、あなたと家族の健康を守りましょう。


参考文献
厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
国立感染症研究所「インフルエンザとは」

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監修 萩原 大樹 (はぎわら・だいき)
株式会社メディバリー 取締役、福岡大学医学部 客員講師
薬剤師、薬学博士

在宅医療からオンラインまで、あらゆるチャネルで「薬を届ける」ことに挑戦しています。常に新しい仕組みを模索し、患者さんがどこにいても安全に医療サービスを受けられる未来を創ります。