インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の主な違いとは? 症状・検査・治療法を解説
どちらも発熱や喉の痛み、倦怠感など似たような症状を引き起こすため、 発熱すると「インフルかな?それともコロナ?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
実はこの2つ、原因となるウイルスが異なることはもちろん、多くの違いがあります。 感染するスピードから症状の出方、重症化リスク、治療法、そして後遺症――。 違いを知っておくことで、もしもの時に落ち着いて行動できます。
今回は、インフルエンザとCOVID-19の主な違いを、わかりやすく解説します。
1.ウイルスの違い|インフルエンザウイルスと新型コロナウイルス
まず、原因となるウイルスがまったく別の種類です。
| 項目 | インフルエンザ | 新型コロナウイルス(COVID-19) |
| 原因ウイルス | インフルエンザ(A型・B型) | SARS-CoV-2(コロナウイルス属) |
| 主な流行時期 | 冬(11月~3月) | 通年(波状的に流行) |
| 潜伏期間 | 約1~3日 | 約2~7日(長い場合は10日以上) |
| ウイルスの特徴 | 毎年変異し、ワクチンが更新される | 高い変異力。株によって感染力・症状が変動 |
インフルエンザウイルスは、毎年「型」が少しずつ変わるため、その都度新しいワクチンが作られます。一方、新型コロナウイルスは変異の幅が非常に大きく、オミクロン株のように感染力が強いタイプが出ると、短期間で世界的な流行となることもあります。
2.症状の違い|熱の出方・咳・倦怠感・嗅覚障害をチェック
どちらも「発熱」「喉の痛み」「咳」などの共通点がありますが、症状の出方や続く期間に差があります。
| 症状 | インフルエンザ | 新型コロナウイルス(COVID-19) |
| 発熱 | 急に38度以上の高熱 | 微熱~高熱まで幅広い |
| 倦怠感 | 強い、全身が重い | 長く続く傾向あり |
| 筋肉痛・関節痛 | 強い、全身が重い | 比較的軽い |
| 咳・喉の痛み | あり(乾いた咳) | あり(長引く咳も) |
| 味覚・味覚障害 | まれ | 特徴的(初期症状の場合も) |
| 消化器症状 | まれ | 下痢・吐き気を伴う場合あり |
| 症状の持続 | 3~5日で改善傾向 | 1週間以上続くこともある |
インフルエンザは「急激な発熱」と「全身の痛み」が特徴であり、COVID-19は「症状がゆるやかに始まり、長引く」ことが多いとされます。
ただし個人差が大きく、症状だけでは絶対に区別できないため、自己判断はせず医療機関で検査を受けることが不可欠です。
3.感染スピードと広がり方の違い
インフルエンザは感染してから発症するまでの潜伏期間が平均1〜2日と短いのが特徴です(出典:厚生労働省ホームページ「インフルエンザ(総合ページ)」)。
一方COVID-19の潜伏期間は4〜5日程度と長く、しかも症状が出る前から他人に感染させる可能性があります。
つまり、COVID-19「自分ではまだ気づかないうちに感染を広げてしまう」リスクがあるのです。
この違いが、COVID-19が爆発的に広がった理由の1つです。
4.【緊急】すぐに受診すべき危険なサイン(レッドフラグ)
インフルエンザ、COVID-19のいずれの場合でも、以下の症状が見られる場合は緊急性が高い状態と考えられます。ためらわずに救急要請や医療機関の受診をしてください。
- 呼吸が苦しい、息切れが続く
- 胸の痛みが続いている
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい
- 唇や顔色が悪く、紫色になっている(チアノーゼ)
- けいれんを起こしている
特に高齢者や基礎疾患のある方、お子さんの場合は症状の変化に注意し、早めに対応することが重要です。
5.検査方法の違い|抗原検査・PCR・同時検査の使い分け
インフルエンザとCOVID-19は症状だけで見分けられないため、検査が重要です。
| 症状 | インフルエンザ | 新型コロナウイルス (COVID-19) |
| 抗原検査 | 迅速 (15分程度で判明) | 定性・定量ともにあり |
| PCR検査 | あまり行われない | 主流 (高精度) |
| 同時検査キット | 利用可能 (同時判定) | 利用可能 (同時判定) |
最近では、インフルエンザとCODVID-19を同時に検出できる検査キットも普及しています。
発熱外来や薬局で受けられる場合もあり、体調が悪いときは早めに検査することが、適切な治療への第一歩となります。
6.治療法の違い|抗ウイルス薬の特徴
インフルエンザには、オセルタミビルなどの抗ウイルス薬があり、発症後48時間以内に服用すると症状を短縮できると報告されています。
一方、COVID-19にはモルヌピラビル、パクスロビドなどの抗ウイルス薬が使われますが、対象は重症化リスクのある方に限られるなど、医師による慎重な判断のもとで使用されます。
| 治療 | インフルエンザ | 新型コロナウイルス (COVID-19) |
| 主な治療薬 | オセルタミビル、パロキサビルなど | モルヌピラビル、パクスロビドなど |
| 投与のタイミング | 発症から48時間以内 | 発症から5日以内 |
| 主な目的 | ウイルス増殖の抑制 | 重症化の防止 |
両方とも「早期対応がカギ」です。発症してから時間が経つと、抗ウイルス薬の効果が弱くなるため注意が必要です。
7.ワクチンの違いと免疫の仕組み
インフルエンザワクチンは、その年に流行しそうな型を予測して作られます。接種後2週間ほどで効果があらわれ、5〜6か月の間持続します(出典:厚生労働省)。
一方、COVID-19のワクチンはmRNA技術を用いた新しいタイプのため重症化予防効果が高く、変異株に対応する「オミクロン株対応型」なども登場しています。
なお、インフルエンザとCOVID-19のワクチンを同時期に接種することは可能です。医師や薬剤師に相談し、体調に合わせて接種スケジュールを調整しましょう
8.重症化と後遺症の違い|Long COVIDにも注意
インフルエンザとCODVID-19はどちらも軽症で済む人が多いですが、高齢者や持病を持つ方は重症化や合併症が問題になります。
| 比較項目 | インフルエンザ | 新型コロナウイルス (COVID-19) |
| 主な重症合併症 | 肺炎、脳症、心筋炎 | 肺炎、血栓症、呼吸不全 |
| 致死率 | 約0.1%以下 | 約0.3~1% (変異株により変動) |
| 後遺症 | まれ | 倦怠感、息切れ、集中力低下 (Long COVID) |
COVID-19の特徴的な点は、回復後も疲れやすい、息切れ、集中力低下などが長く残ることがあり、これがいわゆる「Long COVID(後遺症)」です。
9.感染したときの対応|家庭・職場での正しい行動
【インフルエンザの場合】
- 高熱が出たら無理をせず休む
- 早めに医療機関を受診
- 医師の指示に従い、処方された薬を服用し、水分・栄養をとる
発症から5日間の経過、かつ解熱した後2日を経過するまでは自宅で養生する。
【コロナの場合】
- 医療機関・発熱外来で検査を受ける
- 陽性時は医師の指示に従って自宅療養する(通常5〜7日)
- 家族と部屋を分け、換気・消毒を徹底する
家族が感染した場合も、同じ部屋で長時間過ごさないなど、家庭内での感染対策が重要です。
10.予防が最も重要|日常生活でできる5つの対策
インフルエンザとCOVID-19のどちらにも共通する、最も確実な対策は予防です。
- 手洗い・マスク・換気を「習慣」にする
- 規則正しい生活で免疫機能を維持する
- 予防接種を毎年・定期的に受ける
- 少しでも体調に異変を感じたら早めに休む
感染を「広げない」ことが、家族や職場、地域を守ることにつながります。
11.まとめ|正しい知識と早めの行動で、安心して冬を迎えましょう
インフルエンザとCOVID-19は症状が似ている感染症ですが、異なる特徴を持ちます。
- インフルエンザ:急な高熱、短期集中型
- COVID-19:比較的ゆっくり発症、発症前から感染力あり
症状だけで自己判断することは非常に危険です。発熱や体調不良がある場合は必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。正しい知識と早めの行動で、あなたと家族の健康を守りましょう。
参考文献
厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
国立感染症研究所「インフルエンザとは」
編集部までご連絡いただけますと幸いです。
ご意見はこちら
スマホでかんたんスマートに。
脳の健康状態を調べてみませんか?
薬剤師、薬学博士
在宅医療からオンラインまで、あらゆるチャネルで「薬を届ける」ことに挑戦しています。常に新しい仕組みを模索し、患者さんがどこにいても安全に医療サービスを受けられる未来を創ります。