膵臓(すい臓)がんは血液検査で見つけられる? 早期発見に役立つ検査項目と限界
膵臓(すい臓)(以下「膵臓」という)がんは、初期の自覚症状がほとんどなく、発見が難しいと言われています。気づいたときには手術が難しい段階になっているケースも少なくありません。
本記事では「膵臓がんと血液検査の基礎知識」「膵臓がんのリスクが高い人はどうすべきか」などを解説します。
膵臓がんの早期発見のための注意点が分かる内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。
膵臓(すい臓)がんと血液検査の基礎知識
膵臓がんとは、どのような病気なのでしょうか。膵臓がんの概要と、がんを見つけるための血液検査について見ていきましょう。
膵臓がんとはどんな病気か?
膵臓がんは、膵臓の細胞が異常に増えることで発生する悪性腫瘍です。なかでも「すい管がん(すい管腺がん)」と呼ばれるタイプが最も多く、膵臓がん全体の約90%を占めていると言われています。
膵臓がんの厄介な点は、発生初期にほとんど自覚症状がないことです。背中の痛みや、急激な体重減少など、症状が表れたときには他の部位までがんが広がっているケースが少なくありません。
膵臓は、胃の奥にある臓器で、通常の腹部エコー検査では見えにくい場所に位置しています。そのため、がんの早期発見が難しく、手術で治療できるのは全体の20%ほどだと言われています。
血液検査が膵臓がんの発見に果たす役割
血液検査で測定できる「腫瘍マーカー」は、膵臓がんのように初期に症状が出にくい病気を見つける手がかりになります。
腫瘍マーカーとは、がん細胞によって産生され、血液中や尿などから検出される物質のことです。一般的に、がんの量が増えると腫瘍マーカーも高くなると考えられており、がんの有無や進行度を予測するための指標となります。
膵臓がんの腫瘍マーカーには「CA19-9」や「CEA(がん胎児性抗原)」などが用いられます。これらの値が通常より高い場合、膵臓をはじめとした消化器系の器官にがん細胞があることが疑われます。
とはいえ、血液検査だけで確実に膵臓がんを見つけられるわけではありません。早い段階では腫瘍マーカーの数値が上がらないこともあります。あくまでも「気づきのきっかけ」や「補助的な手段」としての活用であることを心がけましょう。
膵臓がんの血液検査項目
膵臓がんを見つけるためには、血液検査においてどのような項目を確認すればよいのでしょうか。主な検査項目と、数値を確認するときのポイントを見ていきましょう。
主な腫瘍マーカー(CA19-9、CEA、Span-1、DUPAN-2)
膵臓がんの主な腫瘍マーカーとしては、「CA19−9」「CEA」「Span-1」「DUPAN-2」などが知られています。
CA19-9
CA19−9は、膵臓がんの診断や治療経過の確認に用いられる腫瘍マーカーです。
膵臓がん患者の約8〜9割は、CA19−9の数値が高くなると言われています。ただし、胆管炎や慢性すい炎、他の消化器系のがんでも上昇するため「膵臓がんだけに使われる」とは言いきれません。
CEA
CEAも膵臓がんの指標として用いられる腫瘍マーカーの1つです。
もともとは大腸がんの指標として用いられていましたが、膵臓がんでも上昇することがあります。喫煙や炎症性の病気でも数値が高くなる可能性があるため、これだけで膵臓がんであるとは判断できません。
Span-1
Span-1は比較的新しい腫瘍マーカーで、膵臓がんとの関わりが報告されています。
がん細胞に反応しやすく、治療効果の確認や再発の兆しを見つけるのに役立ちます。なお、正しい判断のためには、Span-1だけではなくほかの腫瘍マーカーとの併用が大切です。
DUPAN-2
DUPAN-2は、膵臓がんだけでなく、肝臓がんや胆道がんでも上昇する腫瘍マーカーです。
治療後の経過観察にも用いられ、CA19-9やCEAと併用することで、膵臓がんの進行度を把握しやすくなります。
血液中のすい酵素(アミラーゼ、リパーゼ)
膵臓から分泌される消化酵素のなかには、血液検査により膵臓の異常に気づけるものがあります。代表的なのが「アミラーゼ」と「リパーゼ」です。
もともと、アミラーゼとリパーゼは食べ物の消化を助ける酵素です。これらは、膵臓に炎症や障害が起きると血液中の値が高くなるケースがあります。特に、リパーゼは膵臓と深く関わっており、すい炎をはじめとした病気を見つけるために役立つとされています。
なお、こうした酵素の値が高いからといって、すぐに膵臓がんが疑われるわけではありません。膵臓に関連した他の病気でも上昇するため、腫瘍マーカーや画像検査などと組み合わせ、総合的に判断することが大切です。
血液検査の数値はどのように解釈する?
血液検査で得られる数値は、あくまで「身体の中で何か起きていないか」の指標であり、それだけで病気を断定できません。
例えば、CA19-9は一般に0〜37 U/mLが正常な範囲とされます。この基準値を超えていた場合でも、すぐにがんとは断定できません。慢性すい炎や胆管炎、喫煙、感染症など、がん以外の理由でも上昇することがあるのです。
一方で注意したいのは、初期の膵臓がんでは、CA19-9の値が正常範囲に収まっていることもあるという点でしょう。「正常値だから大丈夫」「腫瘍マーカーが低いから病気ではない」とは、言いきれないのです。
腫瘍マーカーに「できること」と「できないこと」
膵臓がんの検査では、血液中の腫瘍マーカーが手がかりになることがあります。なかでもCA19-9 はよく使われており、膵臓がんの指標として広く知られています。
では、そもそも腫瘍マーカーにはどのような役割があるのでしょうか。腫瘍マーカーに「できること」「できないこと」を見ていきましょう。
腫瘍マーカーに「できること」
腫瘍マーカーは、健康診断や人間ドックなどで用いられており、がんの可能性に気づくきっかけとなる検査です。
例えば、CA19-9の数値が基準値(0〜37 U/mL)を超えていた場合「何か身体の中で起きているかもしれない」というサインとして役立ちます。また、がんが見つかったあとには、治療効果や再発の確認に使われることもあります。
腫瘍マーカーに「できないこと」
一方で、腫瘍マーカーだけでがんの診断はできません。
というのも、慢性すい炎や胆管炎、糖尿病、喫煙などでもCA19-9が上昇することがあるためです。つまり「腫瘍マーカーが高値=がん」とは限らないのです。
また、膵臓がんの初期にはCA19-9の数値が正常範囲に収まっていることもあります。なかには体質的にCA19-9を産生しないケースもあり、数値が参考にならない場合もあるのです。
腫瘍マーカーは「がんを見つけるためのヒント」にはなっても、「がんであることの決定打」にはなりません。そのため、血液検査だけで判断せず、画像検査や診察と併せて総合的に評価する必要があります。
特に「家族に膵臓がんの人がいる」「糖尿病が悪化してきた」といったリスクがある方は、定期的な検査や専門医への相談をおすすめします。
血液検査以外の検査方法とその必要性
膵臓がんを早期に発見するためには、血液検査だけに頼るのではなく、画像検査や内視鏡検査を組み合わせて行うことが重要です。これらの検査によって、血液検査では見つけにくい小さな異常も調べられます。
画像検査には以下のような種類があります。
検査内容 | 特徴 |
CT(コンピュータ断層撮影) |
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MRI(磁気共鳴画像法) |
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超音波検査(エコー) |
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画像検査を用いることで、より正確に膵臓がんの有無を確認できるでしょう。
さらに詳しく調べるために使われるのが「内視鏡検査」です。特に超音波内視鏡検査(EUS)は、内視鏡に小型の超音波装置がついており、胃や腸の内側から膵臓を至近距離で観察できます。極めて小さい病変の発見も可能で、必要に応じて組織の一部を採取することも可能です。
このように、複数の検査を組み合わせることが、膵臓がんの早期発見のカギになります。「家族にがんの既往がある」「糖尿病が悪化している」など、膵臓がんのリスクが高い方は、症状がなくても定期的に精密検査を受けるとよいでしょう。
膵臓がんリスクが高い人はどうすべきか
膵臓がんは発見が難しく進行が早いため、リスクが高い方ほど「早めの対策」が重要です。膵臓がんのリスク要因は以下のとおりです。
- 肥満がある
- 糖尿病がある
- 喫煙習慣がある
- 過度な飲酒習慣がある
- 慢性すい炎を繰り返している
- 家族に膵臓がんの既往がある
特に、家族に膵臓がんの既往がある場合は注意しましょう。膵臓がんは遺伝的な影響が示唆されており、家族に膵臓がんの既往があるとき、リスクが1.5〜1.7倍になるという報告もあります。
これらのリスク要因に当てはまる方は、定期的な検査がすすめられます。まずは健康診断や人間ドックなどを通して、画像検査や腫瘍マーカーで異常がないか確認するとよいでしょう。
また、体調に少しでも異変を感じたときには、ためらわず専門医に相談しましょう。「いつもと違う」と感じる変化を見逃さず、日頃から自分の健康に目を向けることが、膵臓がんの予防、早期発見につながります。
まとめ:定期的な検査で膵臓がんの早期発見を目指そう
ここまで、膵臓がんの血液検査について解説してきました。
膵臓がんは初期にほとんど自覚症状がないため、発見が遅れやすい病気です。しかし、定期的な検査により早期に気づける可能性はあります。
特に、血液検査は手軽に受けられる方法として、健康診断などで積極的に取り入れたい検査です。腫瘍マーカーの1つであるCA19-9などを定期的にチェックすることで、身体の変化にいち早く気づけるでしょう。
「膵臓がんのリスクが気になる」「最近、体調が気になる」という方は、一度専門医に相談し、自分に合った検査スケジュールを立てましょう。不安を放っておかず、行動にうつすことが健康を守る第一歩になります。
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